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第003話(多獣撃滅?!)

 クレータの外周部は獣の群れで埋め尽くされており、クレータの中心でのんびりとお茶を飲んでいた僕達を、完全に餌としてターゲットしている。


 お茶が終わった僕が準備運動と言わんばかりに、その獣達の相手をしようとする。いきなり襲われて慌てたりしなければ、数を頼んで攻めてくる敵など、僕の相手にはならないんだよね。


 体の中心にある魔導回路に魔力を流し込み、魔力を変質させ左右に突き出した右手と左手に送っていく。すると右手と左手にそれぞれ、緑色の魔法陣と赤色の魔法陣が発生し、くるくる回り始める。また同時に魔力を両足へと流し込み、足元に緑色の魔法陣を発生させる。


 魔力を送り続けていると、魔法陣の大きさがより大きくなっていき、発光も強くなっていく。


「ポメ!お願い!!」

「全くメイド使いの荒い御主人様(マスター)です!」

 濃紫色の服を着て頭にはひらひらがついたカチューシャを付けたポメが呆れたように僕のことを軽く睨むと、両手の中指を立てて、獣たちを挑発する。


「そこの頭の弱そうな獣。どうせ突っ込むしか能がないんだから、さっさと突っ込んでくるですよ!」

 ポメが獣の群れを罵倒すると、身体が一瞬光る。そんなポメを見ていた獣達の目が真っ赤に光ると、クレータの縁からこっちに向かって駆け下り始める。100体くらいいる獣全てが我先へとクレーターを下ってくる。


「後は知りませんから、さっさと処理するです!」

「うん。一発で終わらせるよ」

 ポメの盾騎士(シールダー)スキル挑発(プロボック)で、怒りに我を忘れた獣達がどんどん僕達の方に集まってくる。クレーターはすり鉢状になっているので外周で構えていた獣の群れは、相当な速度で駆け下りてくる。


「まずは……風空歩法(ウィンド・ウォーク)!」

 足元に魔法陣を展開し風空歩法(ウィンド・ウォーク)の魔法を発動させ、足元に出来た風の層の階段を駆け上り10m程上空に移動し、獣の群れを見下ろす。


 そしてクレータの中心いるポメに殺到する獣に対し、両手に魔法陣を展開し魔法を発動させる。ポメの足元にいる碧玉珠(エメラルド)色をした小狼であるファング、ポメの肩に止まっている紅玉珠(ルビー)色をした燕のビークに不安そうな仕草はなく、僕の方を見上げている。


「それじゃ、行くよ!球形の(スフィア・)防護(プロテクション)!アーンド氷の(アイス・)(レイン)!」

 左手からは球形の防護膜を発生させる魔法、右手からは中級氷漣魔法の無数の氷の礫(コールド・ボルト)を雨霰のように打ち出す魔法を放つ。球形の(スフィア・)防護(プロテクション)はポメとファングとビークを守るように展開され、氷の(アイス・)(レイン)が容赦なく降り注ぎ、獣の群れの先端を飲み込んでいく。挑発(プロボック)されている獣の群れは、ソレくらいでは怯まずに、まだまだ一目散にポメに殺到する。


 僕はそんな獣の群れを巻き込むように内側から外側にと氷の礫(コールド・ボルト)の範囲を広めていく。

 本来は氷の礫(コールド・ボルト)の1/2位の氷の礫を30発程度連続で放つ魔法なのだが、僕の規格外の魔法適性により氷の礫(コールド・ボルト)の倍のサイズの氷の礫を960発程度放つ魔法になっている。


 そして僕は待機している氷の礫を範囲を拡大しながらどんどん打ち放っていく。僕の手から放たれる氷の礫は、本当に雨のように密度濃く降り注ぎ、獣を貫いていく。


 そして最終的にはクレータ全てを氷の礫が穿ち、全ての獣を貫き尽くすのだった。唯一無事なのは、球形の(スフィア・)防護(プロテクション)で守られた、ポメとファングとビークのいる場所だけである。


「これは、凄まじい威力だったなぁ。しかも制御が結構めんどくさい」

 ポメ達のいる無傷な地面に降り立ってボソッと呟く。


「いちいち手から魔法を出すから面倒なのです。直接空間に働きかけて凍らせるとかすればもっと楽出来たの思うのです。やはり御主人様(マスター)は脳筋なのです!」

「あぁ、そういえばそうだったなぁ」

 僕はポメの指摘になるほどと呟く。


「とりあえず採取できそうな部位が無いか見てくるです。御主人様(マスター)は少し休んで、待っているがいいのです!」

 ポメはファングとビークを引き連れて、獣の群れの残骸を見に行く。無数の氷の礫を打ち込んだので、毛皮は駄目になっているかもしれないが、他の部位などは回収できるかもしれない。


 しばらく地面に座ったまま待っていると、ポメがホクホクした顔で戻ってくる。


「今回は大漁です。頭の弱い御主人様(マスター)でもやっと倒し方が分かってきてくれたのです!」

 だけどポメは手ぶらで、ファングやビークが何かを引っ張っている様子はない。


「ん?で、採取したものはドコに?」

「乙女メイドの秘密なのです!」

「……」

 なんかいつもソレではぐらかされるんだよなぁ。そんなふうに思いながらも、いくら聞いても教えてくれないので、僕はさっさと諦める。


「それじゃぁ、進もうか。目的地はまだまだ先だよね」

「はい。御主人様(マスター)の短い足だと、あと一週間はかかるのです」

「いや、この5歳児くらいの身体じゃ、しょうが無くね?」

「あまりに遅すぎて、あそこに着く頃にはポメはおばあちゃんになってしまうかもしれないです。御主人様(マスター)は老女趣味なのです!」

「いや、それはないから……」

 バカ話をしながら僕達は先に進むのだった。


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