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第025話(小狼試練?!)

「ちなみにこの子は一体?」

「うーん。毛並みと魔素量からすると風狼(ウィンド・ウルフ)だと思うです。風雷属性と相性がいい狼で、魔法適性があるから、そのうち風魔法を習得するです。この子とかその子だと呼びにくいので、御主人様(マスター)が名前を付けてあげるといいです」

「あ、そうか。名前か……鋭い牙で噛み付いてきたからファングとかどうかな?」

 ポメから情報を仕入れつつ、小狼に名前を提案する。


ガウッ!


 小狼が嬉しそうに吠え声を上げた所を見ると、気に入ってくれたようだ。


「じゃぁ、これから君はファングだ。よろしくね」


ガウッ!ガウッ!


 こちらこそ宜しくという感じで吠え返してくるファング。ちなみに体調は50cm程度しかなく、チョコチョコと僕達についてくる姿が可愛らしい。


「ファングの自衛能力も確認したいから、弱そうな獣を倒しながら進むとしよう。ついでに食料をゲットできるとなおよし」

「トン御主人様(マスター)の考えなしの魔法だと黒焦げとか細切ればかりで食料にならないのです!」

「加減するよ。というか基本はファングの自衛能力確認なんだから、僕が魔法を使うことは少ないと思うんだけど」

「では、ファングがやられそうになったときはどうするです?」

「そりゃ、魔法一発で……あっ……」

「相変わらず、呆れた御主人様(マスター)なのです。これはファングに期待するしか無いのです」

「まぁ、弱い敵を探すつもりだから。っとちょうど良さそうな獣が前方にいるみたいだ」


 僕は探索(サーチ)魔法により、前方に中立の魔物の反応がしたのを確認する。今の探索(サーチ)魔法は1.6倍された魔法出力を利用して魔素量による強さが判定できるように拡張してある。


 反応があった場所に近くなると、僕は歩みを止めるように指示し、相手に気が付かれないように静かに移動する。

 そして灌木から頭を出して、少し開けた空き地を見てみると、体長1m程度の真っ白と茶色の体毛を持つ2体の耳の長い動物が周りを警戒するように、耳をピクピクさせながら立ち上がっていた。


 これって、前にポメが言っていた首をはねてくるウサギだよな。魔素量は大したこと無いから、負けないと思うんだけど。

 僕はそう思いながらチラリとポメを見ると、ポメが頷き返してくる。


 取り敢えず逃げられると面倒なので、僕は魔法で退路を塞ぐことにする。こうやって先手を打てる時には、僕は丁寧に魔法構築をする事ができる。


大地の隆壁(アース・ウォール)!」

 僕は初級樹金属性の魔法を発動させる。円形の土の壁が隆起し、空き地を全て取り囲んでウサギの退路を塞ぐ。土の壁が開いているのは僕達の目の前だけだ。


「よし!行け、ファング!」

 僕が掛け声を上げると、灌木の中からファングが飛び出して、茶色いウサギ目掛けて駆けていく。


「二体同時は危険だからね。誘眠の邪眼(スリーピング・ゲイズ)!」

 僕はさらに初級精神系魔法の誘眠(スリープ)を視線発動型にして発動させる。僕の視線の先にいる白いウサギは、僕の誘眠(スリープ)の魔法を抵抗(レジスト)する事ができずに、そのまま眠ってしまう。


「しまった!誘眠の邪眼(スリーピング・ゲイズ)だとファングの戦いが見れない!」

 そうなのだ視線発動型の魔法は、対象を視界に捉えていないと効果が切れてしまう。特に持続系の魔法なんかは、視線を外すと即座に解除されてしまう欠点がある。


「相変わらずのアンポンタンっぷりです。ちょっと行って、ポメが処理してくるのです」

 ポメがドコからともなく包丁を取り出すと、スタスタと眠っている白いウサギに向かって行き、一瞬でウサギの頸動脈を切断する。


 僕はそれを確認すると、ファングの方に視線を戻す。


 ウサギの前歯は異様に発達していて、まるで短剣のようだ。そして飛び掛かるための後ろ足も発達している。対して前脚はそれほど発達していない所を見ると、後ろ脚を活用して飛び掛かりながら、短剣のような前歯で急所を切り裂く戦い方なのだろう。


 そのウサギは近づいていったファングに狙いを定めて、四つん這いになり後ろ脚に力を溜めている用に見える。

 一方ファングは普通に四本脚で立ち、ウサギの一挙手一投足を見逃さないように注意を払っている。


 その張り詰めた緊張が極限まで来たのか、ウサギが後ろ脚に力を入れて跳ねる。発達した後ろ脚による瞬発力は相当で、一瞬で間合いを詰める。そして首を大きく振りながら、短剣のような前歯で正確にファングの首を狙う。


「危ないっ!」

 僕が咄嗟に防御魔法を展開し、ファングを支援しようとしたが、いつの間にか隣に戻っていたポメが僕の腕を握って、それを止める。


 ファングの首筋に、ウサギの前歯が触れようとする瞬間だった。ファングの身体が深く沈み込むとギリギリでその前歯をやり過ごす。そしてその沈み込んだ体勢から、後方に体を捻りながら跳ねる。

 まるでウサギに追従するように跳ねたファングは、首を振って無防備になったウサギの首筋に、その鋭い牙を立てる。そしてその勢いのまま、首をひねって、ウサギの頭部を地面に叩きつけながら、喉笛を噛みちぎる。


 喉笛を噛みちぎられたウサギから噴水のように血が吹き出し、ウサギが絶命したことを告げる。一瞬の攻防だったが、ファングのポテンシャルの高さを思い知った戦いだった。


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