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第024話(両親別離?!)

「つまりは、強い魔獣を倒した時に出てくる経験珠を触って急激なレベルアップをしたせいで、身体が超強力に作り変えられたってこと?」

「そうです!このスットコドッコイなのです!ちょっと目を離した隙にレベル1で伝説級(レジェンダリィ・)魔蟲(インセクト)を倒すアホウがどの世界にいるですか!」

「どうやら、ココにいたらしいよ?」

「ココにいたらしいじゃないです!無事だったから良かったものの、一歩間違えればポメはいきなり未亡メイドになるところだったのです!」

「未亡メイドっていったい……?」

 僕をポカポカ叩きながら、目に涙をためてポメが怒りをぶつけてくる。


「ポメ涙が出てるよ」

「うるさいのです!ポメはアンドロイドだから泣いたりしないのです!コレは目から小水が漏れているだけなのです!!」

「目から小水って、それ絶対故障してるでしょ」

「小さい事にグチグチ言う御主人様(マスター)なのです!兎に角、御主人様(マスター)は無謀すぎなのです!!」

 なんか言っていることは無茶苦茶だけど、どうやら相当に心配したらしい。


「それで僕のレベルはどれくらいになったの?」

 心配そうに僕を見上げる小狼の首の後をカリカリと掻いてあげながら、僕はポメに聞く。


「アンポンタンな御主人様(マスター)には教えてあげないのです!知ったらついうっかり変なことを言い漏らしそうなので、知らないほうが身のためなのです!取り敢えずステータスは20倍以上になっていて、肉体系能力や精神系能力は5倍以上になっているので色々気をつけるのです!」

「なんかとんでもない値を聞いた気がするんだけど……20倍?」

「20倍なのです!」

「魔力も?」

「20倍なのです!」

「マジで?」

本気(マジ)です!」

「じゃぁ、魔法の威力も20倍になっちゃうって事?」

「魔法の威力は精神系能力なので5倍なのです!」

「5倍でもヤバくない?」

「だからヤバイと言っているのです!今の御主人様(マスター)が炎熱系初級魔法の炎の礫(ファイア・ボルト)を使った時の魔法出力は50,000。通常の5,000倍の威力になるです……」

「えぇー、ちょっと盛り過ぎじゃない?」

「はぁ……自覚がないのは性質(たち)が悪いのです。試しに探索(サーチ)の魔法を使ってみるです」

 ポメが僕との問答で溜息を付きながら探索(サーチ)の魔法を使うように促す。


「じゃぁ、全探索(フルサーチ)!」

 僕が魔法を発動すると、今までにないくらいの広範囲の情報が集まってくる。


「えーっと……?」

 しかも情報量も多く、今までは敵対/友好/中立と大体の強さ位しかわからなかったのに、種族と正確な強さや、属性もわかるようになっていた。


「あ、うん。はい。凄くなっていたです」

「とにかく、今のままだと大惨事を引き起こしそうなので、コレをつけるです」

 ポメはそう言うと、ドコからともなく、おどろおどろしい腕輪を取り出す。骸骨や骨をイメージした灰色と黒の腕輪だ。どことなく瘴気のようなものが漂っている気がする。


「なにこれ?凄く呪われていそうなアイテムなんだけど」

「そうですよ?能力減衰効果のある呪いの腕輪なのです」

「えー?呪われた装備?そんなの装備したくないよ」

 ドコの世界に進んで呪いの装備を装備する輩がいると言うんだか。でも呪われた装備を有効活用する職業っていうのも、なんかのゲームであった気がするけど。


「つべこべ言わずに装備するです」

 ポメが素早く僕に接近すると、カチリと趣味の悪い腕輪を装備させられてしまう。そして腕輪を装備した瞬間に凄まじい倦怠感が僕の全身を襲う。


「うわっ、コレは駄目!……じゃない?!」

 凄まじく重い倦怠感がしたのは一瞬だけで、その後には何かいつもより少々調子が良い感じの体調に戻っている。


「レベルを1/10にする呪いの腕輪なのです。ウッカリ御主人様(マスター)には、それくらいのレベルでも暴走ギリギリなのです。この状態なら魔法出力が1.6倍程度に抑えられるので、なんとかなると思うのです!」

「それでも1.6倍はあるのね……」

伝説級(レジェンダリィ・)魔蟲(インセクト)を倒して、レベルが幾つになったと思っているのですか!全く、常識知らずはコレだから……ブツブツ」

「で、幾つになってたんだっけ?」

「レベルひゃ……ダメなのです!教えないと言ったのです!!ふぅ、危うく引っかかるところだったのです!」

「……」

 レベル1からいきなりレベル100になるって……この世界はどうなっているのだろうか……ポメが漏らしたレベルに愕然とする僕。そして確かに、この状況ならばレベルを1/10にする腕輪は有効なのかもしれないと思うのだった。


「さてと……この小狼の親が他の動物に食べられてしまうのは忍びないから、ドコかに埋めようか」

「食べられるのも食物連鎖の一つだと思うのです」

「いやぁ、確かにそうなんだけどね。助けてあげた小狼の親だから、何とかしたいんだよね」

御主人様(マスター)は常識が欠け過ぎて頭と精神を疑われるキチ○イにも関わらず、この点に限っては常識的なことを言うのです!」

「あのねキ○ガイって……いや、否定はできないかもしれないけど。で、どこがいいかな?」

「そうですね。バウッ!ガウッ!ガガゥッ!!」

 僕との会話中に急に野生の獣になったかのような吠え声を上げるポメ。


「ポ、ポメ?ど、どうしたの?」

 僕は目をまんまるにしながら、突然豹変したポメに戸惑う。


ガガゥッ!!


「この先の丘の上が良いそうです」

「……狼と話せたのか」

「超高性能メイドですから」

「いや、それでも獣とは話せないと思うよ……」

 ポメが小狼と話せるという衝撃の事実にショックを受けながら、死んでしまった1m近くある親狼を、ポメと二人で担いでえっちらおっちらと丘を登っていく。

 丘の上はあまり木々も生えておらず、結構な範囲の森が見渡せる。夜になれば星や月が良く見えるだろう。


土石(トランス・)転移(デブリス)!」

 僕は丁度良い場所の地面を四角く掘り起こして脇に転移させる。きっちりと1.5m四方の正方形に切り出しされた地面に、親狼の亡骸を横たえる。

 それをおとなしく見ている小狼。やはり悲しげな目をして親狼の亡骸を見つめている。


「そろそろいいかい?」

 しばらく様子を見ていた僕が、悲しげな表情をしている小狼にそう聞くと、小さく鳴き返してくる。


「良いって言っているです」

「うん。じゃぁ、土石(トランス・)転移(デブリス)!」

 先ほどと同じ魔法で、脇に転移させた土石を元に戻す。


「コレを使うです」

 ポメがドコからか取り出した大きな銀色の十字架を僕に手渡してくれる。僕は埋めた場所のすぐ側に移動すると、銀色の十字架を両手で地面に深く突き刺す。

 そして両膝をつくと、目を閉じながら手を合わせて、親狼の冥福を祈る。小狼が相変わらず悲しそうな目で十字架を見つめてクゥーンと悲しげに小さく鳴く。


 僕とポメが立ち上がった後も、小狼は一心に十字架を見つめていた。このまま立ち去ってあげるのが最も自然な行為だろう。だが、親の保護がない小さな狼では、この厳しい森で生きていくのは難しく、せっかく拾った命も長くは持たなそうだ。


「一緒に行くかい?」

 僕は小狼に声をかける。ポメは横目で僕を見るが何も言わない。僕に問われても小狼は十字架を見つめたまま一歩も動かない。


「それもまた一つの生き方かもしれないね」

 それを見た僕はそう言い、後ろを振り向き当初の目的通り、街に向かうため樹海の中に入っていこうとする。


ガゥーーーーーーーーーーーーンッッ!!


 僕が後ろを振り向くと、小狼が全てを振り切るように天に向かって、大きく遠吠えをする。そして、意を決したかのように僕の方を見ると、走り寄ってくる。

 僕を見上げたその瞳に、もう悲しみはなく、これから宜しくと告げているようだった。


 僕はそんな小狼を見て、再度十字架を視界に入れる。


「僕が守れる限り守っていきます。どうか見守っていて下さい」

 そういって十字架に向かって一礼をすると、新たな仲間と共に樹海へと足を向けるのだった。


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