第018話(一面樹海?!)
「これが外……!」
ポメに連れられて、施設から出た僕の目に飛び込んできたのは、圧倒的な自然だった。見たこともない樹木や草木が一面に生い茂り、獣や鳥の鳴き声が響き渡る。そして出てきた施設を振り返ってみてみると、壁がわからないほどの蔦に覆われ、緑の山のようになっていた。
「かつて人口2千万人を誇った大都市アーグの成れの果て、星の力が暴走した後、自然が猛威をふるい大樹海と化した場所。それがここアーグ大樹海なのです」
「なるほど。というか前へと進む道が全く見当たらないね」
「もう何千年と人が踏み込んでいない場所になってるです。道なんかがある訳ないのです!」
「そりゃそうだろうねぇ」
後ろを振り向き施設が緑の山になっているのを見上げながら呟く。人が来て施設を利用していたら、こんな状態にはなっていないだろう。
「星の力が暴走している地域なので、生態系が乱れて、弱肉強食のサイクルが激しく周り、世界で有数の危険地帯になっているのです!」
「いやいや、そんな場所からスタートって、どんな無理ゲーだよっ!」
「ゴミカスな能力の御主人様なら5秒で死ねるのです!」
「本当だよ……魔法の使い方も知らなかったし、ポメがいなかったら本当に獣の餌になっていただろうなぁ。これからなるかもしれないけど」
「最低限の戦う力が身についているから大丈夫なのです!でもヘタレてたら死ぬので注意するのです!」
「まぁねぇ。でもココを出ないと、まともなご飯が食べられないからなぁ。頑張って人の生息圏に出よう」
「頑張るのです。ですが意気込みだけで突っ立ってても何も変わらないのですよ。人里はあっちになるのです」
そしてポメが指差した方向に向かうことを決める。どうせ道なんて無いんだし、無理矢理にかき分けて進むしか無いだろう。……5歳児の身体で。
そう決心して僕は樹海に足を踏み入れた。
……
「いや、無理だからコレ!!」
樹海に足を踏み入れて2時間。僕は絶叫を上げた。
「根性のない御主人様です!ポメは情けなさのあまり御主人様のチン○ンの皮を伸ばして蝶々結びしたくなってきたのです!」
僕の股間をじっと見るポメの視線が怖くて、思わず僕は両手で防御する。
「だってさ、蔦や蔓が酷いし、木の根や岩で地面がボコボコだし、その上、蛭や蜘蛛や百足などの毒虫やらがワラワラと。こんな中進めるわけないじゃないか!」
「そりゃ大樹海だから当然なのです!」
「しかもこの短い手足じゃ掻き分けて進もうにも、全く進めている気がしない!」
そうなのだ。目の前の草木が邪魔で、さらに蔦や蔓がそこら中を這っていて、除けてもすぐに戻ってくるし、力ずくで引き千切ろうにも、妙に頑丈な植物で簡単に引き千切れない。そんなのでマゴマゴしていると、上から蛭が落ちてきたり、足元から百足が登ってこようとしたり、散々な目にあっている。
そんなんだから、2時間も経っているのに100m進んだかどうかだ。
「もういいや、面倒だから魔法で伐採しよう」
僕はそう決めると、腕を前に向けて、魔素を引き出して魔力へと変換する。
「そんな事したら魔獣なんかが寄ってくると言っているのです!」
「そんなこと言っても、こんなんじゃ先に進めないよ!」
「もうちょっと行けば、少しは獣道みたいなのが見つかると思うです!」
「いやいや、その前に日が暮れちゃうよ!」
ポメの制止を振り切って、僕は魔法を完成させる。
「風の刃!」
初級風属性魔法。半月型の真空の刃を形成して前方に射出する魔法だ。幅を2倍に拡張し、威力を犠牲にして射程を16倍に拡張し射出する。
シュバッッッ!
魔法威力80,幅2m、射程1.6kmの風の刃が、車線上の草木、岩、獣、虫などの全てを切断していく。
切断しただけなので、倒木や草木の残骸は残っているけど、視界は開けたし、少しは歩きやすい道らしきものが出来たので、これで進むことができるだろう。
僕はホクホクした顔で、自分が切り開いた道に足を踏み入れる。僕の後ろからはジト目で僕を見続けているポメがついてくる。
ブブブブブゥゥゥゥゥンッッ!
開けた道をフンフンと歩いていると、大きな羽音が近づいてくるのが聞こえてきた。虫の羽音のようだが、僕の世界にいた虫で、こんな大きな羽音を立てる虫はいない。
立ち止まって警戒していると、森の中から僕の身体くらい大きな蜂がホバリングしながら出てくる。
「巨大ジカバチです!獲物を毒で麻痺させてから卵を産み付ける蜂です!あのサイズだと御主人様のサイズが捕獲にちょうどよいサイズになるのです!」
「え?何それ、怖い!」
巨大ジカバチは僕をロックオンしたようで、僕の隙を伺うように、ホバリングしながら様子を見ている。
僕は警戒しつつ魔法の準備に入る。相手は蟲種族、飛行しているから属性は風雷だろう。となると有効な属性は樹金属性。森の中だから樹属性の魔法が最適だ。
僕は魔素を魔力に返信し、樹金属性の魔導回路に魔力を流し込む。樹金属性の魔導回路を流れた魔力は樹金属性に最適化され、僕の右手に展開される。
「木の棘!」
ホバリングして様子見をしている巨大ジカバチに先制の一撃を解き放つ。木の根が僕の意思通りに地中から巨大ジカバチを突き刺そうと襲いかかる。
巨大ジカバチを中心に直径20mの地面から1,000本近くの鋭い木の根が、10m上空に向けて襲い来るのだから、避けられるようがない。
巨大ジカバチは身体中を木の根で突き刺されて、あっさりと絶命する。
「初戦の割には中々の制御だったのです!けど、これどうするのです?」
僕の目の前には高さ10m幅20mの木の壁がそそり立っていた。
僕は仕方なく再び風の刃で木の壁を切り倒す。
「さすが、御主人様。森林破壊の申し子なのです!」
「うぐっ!」
ポメの心無い言葉に胸を抉られながら、僕は先に進むのだった。




