第017話(準備万端?!)
「準備が整ったのです!」
僕が朝起きると、ドヤ顔をしながら腰に手を当てて、胸をそらしながら自慢気に僕に宣言してくるポメ。
「あぁ、そう」
寝ぼけた頭で、いつも唐突なポメの発言をスルーして、洗顔から歯磨きへの通常コンボをルーチン通りに実行する僕。
「おい、こら待てホー○イ野郎なのです!」
僕の華麗なスルーがお気に召さなかったようで、ポメがさっきの格好のまま、僕の進路を妨害する。
「準備が整ったって何の?」
面倒くさそうに僕が聞くと、ポメが目を見開いて肩を落とし愕然としたと思ったら、目を吊り上げながら僕の胸に飛び込んできてポカポカ叩いてくる。
「御主人様がココを出たいと言っていたので、必死に準備していたのに、この扱いは酷すぎるです!くたばれコンチクショウなのです!」
「あぁ、その準備か。ポメのことだからてっきり、僕への更なる特訓の準備をしていたのかと思ったよ」
「こ……こんなにも御主人様に尽くしているポメをそんな目で見ていたなんて……チクショウ!マスターなんかケツの穴にバナナでもぶっ刺して奥歯ガタガタ言わされれば良いのですよー!!」
ポメはそう暴言を吐くと走って部屋を出ていってしまった。
「しかしよくもまぁ、あんなに淀みなく暴言を吐けるものだなぁ」
僕はそう言うと、部屋の中を見渡して、ココから離れる時に何を持っていこうかと考えを巡らせるのだった。
しばらくすると、ポメがスッキリした顔で戻ってくる。
「準備はできやがりましたか?ノロ御主人様」
やけにニコニコしているので、不安になりながらも頷く。
「しばらくココには戻ってこないと思うので、忘れ物はしないようにするのです!」
「というか、僕が持っていかなきゃいけないものなんて無い気がするんだけど。衣服とかはポメが持っているんでしょ?」
衣服などはポメが用意してくれているし、道具の類も、武器の類も僕は何も持っていないので、はっきり言って持っていくものがない。
「当たり前なのです!御主人様の身の回りのものは、全て最高性能メイド型アンドロイドのポメが恙無く準備しているのです!御主人様のような役立たずは黙ってついてきてれば良いのです!」
「だったら忘れ物なんか聞かなきゃ良いのに……」
「ポメに黙って、夜な夜な穢していた使用済みティッシュなんかを持っていくかもしれないと思ったのです!」
「そんな事してないよっ!というか、してたとしても持っていかないよっ!」
「やはりしてたですか。超絶美少女のポメのあられもない姿を想像して青い性を発散してたのですね!やはり御主人様は穢らわしいケダモノなのです!!」
「2.5頭身のチンチクリンは、どうやってもそういう対象には出来ないと思うんだけど……」
やけに高い自己評価をPRと共に、胸を両手で隠しながら身体を後ろに向かせて、顔だけをこちらに向けて暴言を吐くポメに呆れて溜息を吐く。
「鞄とか持っているように見えないんだけど、どこかにあるの?」
「乙女メイドの秘密なのです!ケツと性の青い御主人様は知らなくてもよいのです!」
「あぁ、そう……」
「わかったのなら、さっさと準備するのです!」
僕が目をそらした瞬間、ドコからともなく巨大な背負い袋が目の前に現れていた。そしてポメがその中をゴソゴソと漁って、衣服を取り出す。
「外に出るのなら最低限の防具は必要なのです!とっとと着替えるのですノロ御主人様!」
ノロ御主人様という表現が気に入ったのかなと思いながら、僕はポメが差し出してきた服を受け取る。
「これ、下着も全て着替えるの?」
「この中と違って、外は危険だらけなのです!全ての衣服を利用して防御力は高めれば高めるほど良いのです!御主人様は貧弱すぎるので、下着から何から何まで使って安全を確保する必要があるのです!」
「まぁ、言っていることはわかるけど……このシャツは何とかならないの?」
ポメから渡された真っ白なインナーには、筆で書かれたような文字が並んでいた。
「先程、ポメが魔導刻印を特別付与しておいたのです!」
インナーの表には短小!包茎!早漏!と、裏には三重苦!!とやけに達筆で描かれていた。
「やけに笑顔で返ってきたと思ったんだけど、コレをやってたんでしょ?」
「ぴぴゅ~♪」
僕がツッコミを入れると、そっぽを向きながら下手くそな口笛で誤魔化す。
「コレはあまりに酷すぎるから、他のにしたいんだけど」
「全く、我儘な御主人様です!ポメが精魂込めた特別付与が気に入らないとか!」
そう言いながら、ゴソゴソと背負い袋を漁って、数枚のインナーを差し出してくる。
「あのさ……朝ごはん!+鮭!とか、土管+どっかーん!とか、そんな君は+俺の嫁!とか、碌なのがないんだけど。一体何を思って書いているのか意味不明なんだけど……」
「魔導刻印付与なんて、そんなものなのです!」
僕はがっくりと項垂れながら、比較的マシな表に朝ごはん!、背に鮭!と書かれたインナーに袖を通す。インナーだから、シャツを脱がなければ他人には見られないと自分を納得させながら。
シャツはベージュの開襟シャツで、ボトムはジーンズっぽい半ズボン。そして膝下まである長い蒼色の外套を羽織って、胸のところのボタンを紐で留めたら準備完了だ。
「馬子にも衣装です!やはりポメのセンスは光りまくっているのです!」
鏡で見た自分の服装は、銀髪蒼眼ともマッチして、それなりに見れる気がする。
「それでは出発するのですよ!」
「おーっ!」
僕とポメは片手を突き上げて、部屋を後にするのだった。




