第012話(栄養摂取?!)
大きなガラス扉をくぐると、そこは大きな広場になっており、昔の商業施設だったのか、ガラス張りの店が円形にすらりと並んでいた。
しかし、店には何も並んでないというか、マネキンや調度品が薙ぎ倒されていて、誰かに荒らされたように見える。
「この時代の盗賊でも入ったのかな?」
「うーん。御主人様の貧弱な観察力ではそう見えるかもしれないですが、コレはこの拠点閉鎖に伴い慌てて持っていったか、ポメ達が起動する前に、誰かが起動して漁って行ったかのどちらかなのです」
「何で、そう断言できる?」
「昇降機や今まで歩いてきた道などで、セキュリティシステムが正常稼働している事と、店の扉や鍵が破壊された跡がない事から、侵入者が荒らしたという線は消えるです」
そう言いながら、ポメは一つの店の傍に行き、ガラスの扉の前に立つ。するとピッという音がして、ガラスの扉がスライドする。
「このように入口で認証されないとドアが開かないのです」
「なるほど」
「しかし、本当に何もないのです」
僕の方を振り向きながら説明し、店の中を見渡して、どういうする僕をヨソに、店内を見渡す。
「とりあえず、こっちなのです」
何もなくなった店に興味も持たず、ポメはスタスタと歩いていき、やがて広場の端の方のガラス扉ではなく金属製の扉の前に行き、扉を開ける。扉の先は広場に出る前に通ってきたような金属の壁の道で、道幅は広く、所々にカートや、運搬用のケースなどが放置されていた。
ポメは特に気にする様子もなく、スタスタと先に進む。そして、しばらく歩いた先の扉の前で止まる。扉の上のプレートには『Canteen』と記されている。
「施設で働く人用の食堂です。ここならば、自動で食事が出てくるはずなので、機能が生きていれば、食事を取れるです」
ピッと認証処理が済むとドアが開き、ポメと一緒に入っていく。食堂は広くて、200人位は同時に食事が取れそうなスペースが有る。そして、壁側にはおそらく食事が出てくるであろう開閉式の窓と、その横には操作盤が幾つも設置されている。
操作盤の前に立つと、操作盤に光が灯り、メニューが出てくる。幸い文字が読めるものの、固有の料理名となると、何が書いてあって、どういうものになるのかは理解できない。一応小さい写真がついていたので、鶏肉を焼いたような料理のボタンを押して見る。
すると、画面が数字表示に切り替わり、数字が減っていく。180と記された数字が1秒毎に減っていく。3分かかるという事らしい。カップラーメンみたいだな。
数字を見ながら待っていると、数字が0になり、操作盤の隣の窓が開き、トレイに載って美味しそうな匂いがする鳥のステーキが出てくる。初めて嗅ぐような匂いだが、美味しそうな匂いと見た目だ。
僕はトレイを持って、席につくと食事を始めようとする。
「あれ?ポメは食べないの?」
「あ、うん。ポメは大丈夫なのです」
斜め上を見ながら、僕の視線をそらしながらポメが答える。なにか後ろめたいことがありそうだ。
「だってお腹空いているだろ?」
「お子様の御主人様が気にすることはないのです!ポメは高性能アンドロイドなので平気なのです!」
ポメが強く否定する。まぁ、いらないと言っているものを無理に食べさせてもね。そう言って僕は鶏肉っぽいものをナイフとフォークで切り分けると口に運ぶ。初めて嗅ぐ匂いだが、食欲をそそられる匂いに期待した俺が口に入れる。
「うぐっ!」
俺はその食感と味に吐き出しそうになる。ナイフ切った時は、まるで野性味の強い鳥を切り分けるような強い弾力があったのだが、口に入れて噛んでみるとニチャァという食感になり、あれだけ良かった香りが、全く味に反映されておらず、味はただの小麦粉を固めたような味がベースで、さらに何の調和もなく甘み、酸味、苦味、辛味、塩味が無差別に混ざっている味だった。
まるで小麦粉を水で伸ばして中途半端に火を入れて、中身が半生の状態の塊に、サプリをカプセルに入れず直接振り掛けたものを食っているようだ。
「栄養価については問題ないです。消化にも良い食べ物ですので安心して完食するです!」
ポメが斜め上を見ながら、完食するように指示する。俺は何とも言えない苦虫を噛み潰したような顔でポメを見るが、ポメは一向に視線を合わせようとしない。コイツわかっててやってるという事が明確にわかる仕草だ。
「ポメに悪気はないです。確実に栄養になるものが出てくるのは、この施設の中でもココだけです。生きるためには栄養が必要なのです!」
「いや、それはそうなんだけどさ……この味と食感はやばいよ」
「栄養効率を突き詰めた結果の食べ物です。うだうだ言っていないで完食するです!」
確かに腹には貯まるし、半分液体のような状態なので喉の通りはそんなに悪くないけど、この味と食感は吐きそうで仕方ない。
せめてもと汁物に手をつけて流し込むが……
「プロテインかこれ?」
見た目は透き通ったすまし汁なんだが、口の中に入れると妙にドロドロした食感になる。以前罰ゲームで飲まされたお湯で溶いたプロテインのような食感と味だ。
「じゃぁコレも……」
箸休めになるであろう漬物らしきものも、口に入れるとニチャァという食感に早変わりする。
腹が空いていた俺は、他に食べ物はないと断言されたので、仕方無しに拷問のような食事を進める。確かになんとか食える味なのだが、進んで食べようとは全く思わない味だ。
時間を掛けて何とか食い切った俺は、トレイと皿を返却口に持っていく。返却口にトレイを置くと、置き場のコンベアのような物が動き、奥へ自動で吸い込まれていく。
「さて、食事も無事に終わりましたし、次は寝床の確保です!」
まだ口の中に気持ち悪さが残るが、元気よく拳を突き上げたポメに、やれやれと言った調子でついていくのだった。




