07
お待たせしました。
今回は、二日連続投稿となります。
「おはようございます。
ウィリアム様」
「やあ、早いですね、エルヴィス」
午前5時、ウィリアム大神官長と偶然出会い、挨拶をかわした。
昨日、エルヴィスは冒険者ギルドでお祝いをしてもらい、遅くに孤児院で個別にもらっている部屋に戻ったが、普段からの生活から、いつもの時間に目が覚め、朝のお勤めの前に、剣の素振りや体力作りをしようと、孤児院の広場に出て来たところだった。
孤児達は、6時になると起き出し、孤児院や、神殿の清掃を行い、7時半より朝食をとり、8時半に神官達からの神々の教えと、文字や算学、歴史等、一般の勉強を受け、昼食、その後は夕方、食事時間まで自由行動となる。
勿論、食事を作るのは職員による作業だが、当番制で孤児達も手伝う事になっている。
これは、12歳になり、スキル授与の儀式を終えた者が、様々な興味を持ち、職を得て、路頭に迷う事もない様にする神殿の孤児院による配慮だった。
その中でも、孤児からの希望があれば、そのまま神殿の神官となる事も多々ある。
これは国と、神殿の共同による制度であり、町や王都で住む者達には好評だった。
「エルヴィス、昨日のお祝いは楽しかったですか?」
「はい、ウィリアム様。
みな、優しい人達で楽しかったです。
勿論、その中に、ウィリアム様も入っています。
不安な僕に気をかけて、沢山の声をいただきました」
「ふふ、良かったですね。
それは貴方の、冒険者ギルドに通い続けた努力の結果ですよ。
それと、私は、貴方だけではありません。
神殿に訪れる者も、孤児達にも、神官職員にも別け隔てる事なく、平等に接しているつもりです。
勿論、悩める者には、出来るだけの対応しますがね」
「はい……ウィリアム様。
今日、早速なのですが、相談したい事がありまして……お時間、ございますでしょうか?」
「ええ……私からも、貴方に話たい事があります。
今日の貴方の予定は、いかがでしょうか?」
「僕は、朝はいつも通りに、昼過ぎから、アーノルドさんと簡単な依頼を受け、色々教えてもらう予定です」
「ふむ、では……朝食の後、私の部屋でどうでしょう?」
「でも、朝の講義が……」
「ふふ、何を言っているんです?
もう、貴方は本来、ここを卒業しているんですよ。
お勤めもしなくても、講義も受けなくてもいいのです。
まあ、部屋を出るまでは、今まで通り、お勤めはしていただきましょうか」
「あ……はは、そうでした。
では、そうさせていただきます。
後程、伺わせていただきます」
「はい、お待ちしておきます」
エルヴィスは、すっかりと忘れていた事に、気恥ずかしく顔を赤くし、頭を下げ、その場を去った。
朝食を終え、エルヴィスは約束通りに、ウィリアムの部屋に足を運び、対面していた。
「そうですね……まずは、貴方からのお話を聞かせていただきましょうか?」
エルヴィスの前のテーブルに、自らいれた紅茶を自分のぶんを含め置き、ソファーに座り、ウィリアムは話をきりだした。
早速、エルヴィスは紅茶を一口いただき、口を湿らせ、カップを置き話出した。
「そうですね……昨日、ウィリアム様との話を終え、ギルドに向かうと言い出ていきましたが、直接向かわず、町外れの高台に行ったんです」
エルヴィスは、気まずそうに話出し、ウィリアムはエルヴィスの心情に気づき、微笑み頷き、話を促した。
「まあ、やっぱりスキルの事や、これからの事が不安で」
「エルヴィス……貴方は12歳としてはしっかりしていますし、大人顔負けの考えを持っています。
いますが、私は勿論、神殿の神官達、他の方達に相談する事を進言します。
12歳となり、成人しましたが、まだまだ子供です。
いえ、子供であろうと、大人であろうと悩める内容は、話せるのなら誰かに相談しなさい。
1人で悩みこまない事です」
「はい……僕を探し見つけたアーノルドさんにも、言われました」
「ああ、彼ですか。
……ふふ、あの方も、相変わらずですね」
ウィリアムは、アーノルドの事を聞き、思う事があったのか笑っている。
「ウィリアム様?」
「ああ、すみません。
……そうですね。
貴方には辛い話になるでしょうが、話しておいた方がいいでしょう。
エルヴィス。
彼、アーノルド殿……それに、そのメンバーの方達は、貴方がここに来る前、貴方を盗賊から助けた冒険者は彼等です」
「……え?」
「彼等は当時、Cランク上がる前でしたか?
貴方を助け、ご両親の仇の盗賊を殲滅し、ここに連れてきた冒険者です。
何故、アーノルド殿が頭を剃っているか、知っていますか?」
「え?
……アーノルドさんは、髪の手入れがめんどくさいからだ、と聞いた事があります」
「ふふ……違いますよ。
貴方が、もし彼を覚えていて、恩を返そうとされる事を嫌ったのです。
その為、少しでも印象を変えようと髪を剃ったそうです。
はじめ、彼に剣を教えてもらおうとして、断られたでしょう?」
「……はい」
「あれは、はじめ貴方が恩返しする為に、冒険者になると思って断っていたそうです」
「ウィリアム様が、どうしてそこまで?」
「彼は、貴方を孤児院に連れて来てから、ちょくちょくと貴方を見に来ていましたから。
そして、貴方が冒険者になる為に、剣を教えてくれと困っていると相談を受けましたから」
「……そう、だったんですか」
「勿論、貴方が恩からではなく、自分を助けてくれた冒険者の様に、冒険者になって誰かを助けたいんだと、彼、アーノルド殿に伝えました」
「じゃあ……もしかして、アーノルドさんが剣を教えてくれる様になったのは?」
「そういう事ですね」
「ありがとうございます、ウィリアム様」
エルヴィスは、ソファーから立ち上がり、深く頭を下げた。
「頭をあげなさい、エルヴィス。
私は、そうさせる為に、話しているのではありません。
私は、アーノルド殿の様に、困る事があるなら相談して欲しいと思い、また、貴方に真実を告げる為に話しているのです。
それと、アーノルド殿に、エルヴィスが12歳になったら、この事は話してもいいと言われてましたので。
ああ……彼も、礼を言わなくてもいいとおっしゃっておられましたよ」
「……そうですか。
わかりました、話していただいてありがとうございました」
「いえ……話がだいぶずれ込みましたね。
よければ、続きをお願いしてもよろしいですか?」
「そう……ですね、ウィリアム様。
アーノルドさんにスキルの話を聞き、2人でギルドに向かったんですを
が、途中で、辻の占い師がいまして、アーノルドさんが占ってもらえと……その時」
「どうかしましたか?」
言い淀むエルヴィスを不信に思い、ウィリアムは声をかける。
「あ……いえ、実はその時スキルが発動したので」
「ほう?
貴方のスキル……カードが発動した、ですか?」
「はい」
エルヴィスは、その時の状況を詳しく話し、またギルドで冒険者登録の時に、ギルドカードを触ってスキルの発動した事。
祝いの宴の席で、冒険者のアローが手品を披露し、カードの手品の途中でカードを触り発動した事をつけ足し話した。
また、アーノルドからステータスに関する事を聞いた事も話した。
次回は、明日、0時となります。
よろしくお願いします。
補足。
アーノルド達は、エルヴィスを助け、盗賊を殲滅させた事により、Cランクに上がり、現在に至るまでにBランクとなった。
また、仕方がなかったとはいえ、エルヴィスの両親を助けられなかった事を悔やみ、ちょくちょくと孤児院に顔を出していた。