06
冒険者ギルドは、一階に受付、持ち込み出来る待ち合い場や、ギルド職員達の休憩室に、更衣室、ギルド長室等があり、二階は24時間、開いている食堂と、場合によって借りる事の出来る休憩室が用意されている。
エルヴィスは受付の説明が終わり次第、冒険者達に速攻で二階に連れていかれ、今まで散々とたらい回しに、祝いの言葉を言われ、食べ物と飲み物を進められ続けた。
そして、今、やっと解放され、エルヴィスはテーブルで休んでいた。
「お疲れさん、やっと落ち着いたな?
早速で悪ぃが、エルヴィス……お前のスキル、どんなモンか教えてくれるか?」
ずっと見ていたアーノルドは、苦笑しながらやってきた。
「アーノルドさん……わかりました」
同じようにアーノルドは、エルヴィスのいるテーブルの椅子に座り、エルヴィスは姿勢をただし、向き合って話始めた。
「今日、占いの時も、受付でギルドカードを受け取った時も、頭の中で、声が聞こえたんです」
「ああ、そういや言っていたな?
何ていっていたのか、憶えてっか?」
「……はい。
えーと、確か、習得条件を得たのでスキルを覚えた、とかだったかな?」
「ああ、やっぱり、そのタイプか」
「そういえば、さっきも、そう言ってましたね?」
「まぁ~な……エルヴィス?」
「はい?」
「今日、高台で、俺が頑張ってスキルを身につけたって、言ったの憶えてっか?」
「はい」
「ん、スキルを覚える方法はな、少なくても3つはある。
1つ目、今日、お前が神殿で受け取った、儀式。
2つ目、何度も頑張り続けた結果、覚える方法。
3つ目、何らかの条件で、覚える事が出来る方法……だな。
俺が知っているのは。
んで、2つ目と3つ目の共通点は、覚えた時、何でか頭に声が聞こえる。
お前みたいに、な」
「なるほど?」
「俺も、剣術とかスキル覚えた時、頭の中で声が聞こえた。
スキル『剣術』を覚えました、てな。
……お前の場合の、条件はカードに触った時だろ?」
「そう……いえば?」
エルヴィスは思い出す。
確かに、占いにしろ、ギルドカードにしろ、思い返せばカードを触った時だ。
「だろ?
でだ……どんなスキルで、どんな能力だ?
っと、悪い、言いたくなけりゃ、言わなくて、いいぞ。
スキルは奥の手でもあるからな……」
アーノルドは腕をくみ、目を瞑り、うんうんと頷く。
「奥の手?」
「そうだ、例えば、だな?
盗賊が出たとする」
「はい」
「その盗賊達は、入念に下調べして、仕事をする奴らとする」
エルヴィスは頷く。
「で、当然、お前の事も調べている訳だ。
だから、お前の力は対処され通用しない。
そこでだ!
お前は今まで誰にも教えていない、もしくは見せた事のないスキルがあった。
盗賊は、そのスキルを対処出来なく、お前に討伐される、という訳だ。
勿論、経験の差で対処される場合もあるがな?
だから、教えてたくない場合は、言わなくていい」
「なるほど……だったら、大丈夫です。
奥の手にはならないでしょうし……ステータスオープン」
エルヴィスは、ステータスを開き、アーノルドに見せた。
名前:エルヴィス・カラード
職業:冒険者Eランク
レベル:3
体力:13/16
魔力:10/11
筋力:14
速力:8
知力:10
器用:15
運力:3
特殊能力:カード
能力:占い
能力:記録
「……へぇー、どれどれ?」
アーノルドは、エルヴィスのステータスを見る。
「なるほど、なー。
なあ、エルヴィス?
お前、このスキルがどういったモノか、わかるか?」
「それが、全然わからないんです。
カードだって、よくは……」
「そりゃそっか、じゃあ、カードって書かれている場所に指当ててみな」
「えっ?
こう……ですか?」
エルヴィスは、言われた通り、カードと書かれている場所を、恐る恐る押した。
すると。
特殊能力:カード
※まだ能力の解放をしていません
能力:占い
能力:記録
「何か、出ました?」
エルヴィスは驚き、アーノルドを見る。
「出たな……次、占いと記録、押してみろ」
「あ、はい」
エルヴィスは、慌てて2つを押した。
特殊能力:カード
※まだ能力の解放をしていません
能力:占い
※常時発現:占いカード(魔力2P消費)
スキル〈占い〉より、カード占いが出来る。
能力:記録
スキル〈記録〉より、情報(会話内容、閲覧内容、五感で感じたモノ等)を記憶に残しておく事が出来る。また、紙に写す事が出来る。
「ほう、便利だな」
「……これ、僕のスキルなんですか?」
「当たり前だろ?
お前のじゃなかったら、誰のだ?」
「……そう、ですよね」
エルヴィスは、まだ自分のステータスに書かれている事を受け入れられなかった。
「たぶん、これ、まだまだ増えるぞ?」
「えっ?」
「いや、カードの下の項目。
能力の解放って出てるだろ?
下のスキルに関わらず……て、事はだ。
何らかの条件か、お前のレベルが上がれば、解放出来るんじゃねえのか?」
「マジですか?」
「マジだな……内容によるがな?
それに」
「まだ、あるんですから?」
「いや、お前のスキルだからな?
……お前、何かのカード触れば、スキル増えるだろ」
「あ!」
「いやー、凄ぇな。
ま、色々、やって試してみな!」
「他人事だと思って」
「勿論、他人事だ。
自分のスキルは、自分で調べな」
「……はい」
エルヴィスは項垂れた。
「すみません、遅くなりました」
「おー、待ってたぜー!
よろしく、頼むぜ?
盛り上げてくれよなー!」
二階に上がってきた人物に、1人の冒険者リックが手を上げ、声をかけた。
「おーい、エルヴィスよ!
今から、コイツ、俺のダチの冒険者、アローっていうんだけどよ、コイツ、手品が得意で今から余興して貰おうと呼んだんだ!
みんなも、エルヴィスも驚き、楽しめってんだ!」
「マジかー?」
「リック、やるじゃん!」
「アロー、やったれーー!」
冒険者達の歓声が飛び、盛り上がる。
「はは、みんな、だいぶ酔ってるね?
……君がエルヴィスくん?
頑張ってやるから、楽しんでね?」
アローは、エルヴィスのいるテーブルにきて、手品を始める。
アローは、両腕を広げて、左右に体重移動しながら、リズムを取り、何も無かった両手から次々に色とりどりの花が飛び出る。
両腕を交差すると、いつの間にか両手に15センチの輪っかが2つ現れ、再び両腕を広げたら、体の前で、30センチの輪っか1つになり、床に落ち跳ね、首にとおり引っかかった。
その他にも、色々なアクションをし、みんなを魅了する。
アローは、いったん動きをとめ、ポケットからカードの束を取り出した。
カードは、よくある賭け事や、気楽に遊ぶ為カードで、薄く何枚か重ねた紙に数字と、反対の裏には同じ柄が写し書かれていた。
薄くても、特殊なコーチングされたカードは、そらしても真っ直ぐに戻り、弾力性がある。
それを利用し、アローは様々なカードテクニックを披露する。
また、カードを1枚、アーノルドに引かし、アロー以外が数字を確認した後、アローに見せない様に、カードの束に戻しシャッフルする。
アローは説明をしながら、カードを操る。
ひっくり返したカードはアーノルドが引いたカードだった。
また、そのカードを戻し、シャッフルする。
今度は全て数字の方を見せ、テーブルに置き、カードの束を押さえ、扇状に滑らし広げると、1枚だけ裏返ったカードがある。
それを取り出し、みんなに見せると、アーノルドが引いたカードだった。
何度も、何度も繰り返し、違う内容で行うカードマジックは、素早い動きに慣れている冒険者でも見極められず、騙され、驚かされる。
その中で見せたカードテクニックで、アローが用意していた丸太の棒に、指ではさんだカードを、手のスナップで飛ばして、次々とカードは全て隙間なく、離れた丸太の棒に突き刺した。
そして、手にしたカードが失くなり、困ったアローが、あっと、何かに気づき、エルヴィスのもとに近づく。
「失礼」と言って、エルヴィスの上着のポケットに指を入れ引き抜くと、アーノルドが引いたのカードが出てきた。
それを確認してもらう為、アローは、エルヴィスに渡し見てもらった。
この時、エルヴィスは頭の中でスキル〈手品〉と、手品カードを発現を会得したと聞こえた。
この事は、誰にも気づかれず、アローの手品は内容を変え続き、盛り上がり、全ての演目が終わった後、アローも宴に加わり、更に盛り上がった。
次の日、ほとんどの者が二日酔いになり、依頼に出られず怒られた。
今回の投稿は、これまで。
また、1作目の作業に入ります。
1作目、『闇属性の為、産まれてすぐに捨てられたらしい…』もよろしくお願いします。
また、お待たせする事になると思いますが、よろしくお願いします。