03
ウィリアムに挨拶して、神殿を出たエルヴィスだったが、冒険者ギルドに向かわず、町のはずれにある高台に来ていた。
高台から見える町の風景をぼんやりと座り眺めながら、ウィリアムに言われた事を考えていた。
ウィリアムから返してもらった、お金はしばらくの生活どころか、安い家を買うくらいの十分な金額だった。
どうりで孤児院の生活が結構な豊かさをもっていたはずだ。
決して贅沢ではなったが、それでも食事や衣服などしっかりと行き渡り、神殿や孤児院はちゃんとした建物で、孤児の身のまわりも清潔感を保っていた訳だった。
僕だけでなく、他の孤児達も同じ様に、お金とともに預けられていたなら、ひもじい思いしないし、また簡単な仕事を神殿が受け賃金が入り、神殿からお小遣いとして貰えていたはずた。
受け取ったお金の中にその一部も入っているらしい。
まあ、そのお陰でお金の心配はなくなったから、それはいいとして、スキルだ。
カード……いったい、どのような能力なんだろう?
やっぱり、剣の能力が欲しかったな。
「よう!
エルヴィスじゃないか……どした、こんな所で?」
ぼー、としていたら、後ろから声がかけられた。
後ろをみれば、見慣れた人物だった。
髪の毛を全て剃りあげた頭に厚めの布帽子を被り、はち切れんばかりの筋肉に服が引っ張られ、その上に胸と胴体を金属で守った鎧を着ている。
横でとめているベルトも、いつか切れそうだ。
腰には長く重そうなロングソードが鞘に入り、ぶら下がっている。
全身が筋肉の塊の様な男、冒険者Bランクのアーノルド・ロイドだった。
彼も、エルヴィスが頼み込んで剣を教えてくれた冒険者の1人だ。
「アーノルドさん」
「おう、何だ?
しけた顔しやがって、何か悩みでもあんのか?
ん、話してみろよ」
目線を合わせる様にしゃがみ、聞いてきた。
……アーノルドさんの事知らなかったら、単にいちゃもんをつけられてるみたいだ。
「えっと」
僕は、スキル授与の儀式で授かったスキルの事、これからの生活の事等、ウィリアム様に言われた事を話した。
「ふーん?
なるほどなー、まあ、生活に関しては、お前がしっかり考えて無茶さえしなければ何とかなるさ。
大神官長様だって、そう思っているから金を渡したんだろ?
後、スキルだがな?
カードだっけ?
確かに剣の能力に関係ないわな。
でもな、お前、勘違いしてないか?
剣や槍、そういった武器の能力とか、魔法とか貰えなかったら冒険者になれないと思ってるだろ?」
アーノルドは、そう言ってステータスと唱える。
「……」
「エルヴィス……俺の授かったスキルなんだと思う?」
「え?
えー、と身体強化とか、筋肉増幅とか?」
「ばっか!
違ぇよ……俺のスキルは、ほれ、オープン」
アーノルドはステータスをエルヴィスに開示した。
名前:アーノルド・ロイド
職業:冒険者
レベル:27
体力:54/60
魔力:23/23
筋力:51
速力:36
知力:15
器用:26
運力:2
能力:料理・レベル10
身体強化・レベル5
剣術・レベル4
瞬間速度・レベル3
「どうだ?」
「すごい……レベル」
アーノルドは、エルヴィスの感心のしどころの間違いに、膝の上に置いていた腕がずり落ちた。
「だから、違ぇよ!
基本能力の下、スキル1つ目だよ。
何て出ている」
「……料理?」
「そう、料理だ。
これが俺が神々から授かった、最初のスキルだ」
「え?」
「誰しもが、12歳になって祈りを捧げたら、基本能力の下、最初にスキルが載る。
例外なくな……その後のスキルは、俺が努力して身につけたスキルだ。
剣術にしろ、身体強化にしろ、冒険者で剣を振り続け、身体を鍛え、魔物を倒しまくれば、いつか覚えていたぞ」
「本当ですか?」
「嘘言って、どうする。
そりゃ~よ?
最初から、神様にそんなスキル貰えりゃー、楽、だよな?
でも、あれだ?
自分で剣振って、身体鍛えて、ある日、スキルが身につけたなら、努力したかいあるよな?
ちなみに、俺のスキル、料理だがよ?
やっぱり料理しなきゃ、宝の持ち腐れだしな……いろんな料理、作ったぜ。
結構、楽しかったのもあるが……レベルが上がるのも、面白かったしな。
……ああ、でも、お前の場合、大神官長の言った通り、お前のスキル、カードの研究はしっかりとやれよ?
もしかしたら、戦いに必要な事、覚えられるかもしんめぇ?
何が出来るか……てのも、考えれば楽しみだろ?」
「そう……かも、しれない」
「だろ?」
2人は、ニヤリと笑いあう。
「ところでよ?
お前、ギルドに行かねぇのか?」
「あー、行くつもりだったんですけど、考え事したかったんで」
「ここに来た、と?」
「……はい」
「そっか……んじゃ、行くか?
ギルドに……みんな、待ってるからよ」
「えっ?
何でですか?」
「そりゃ……あー、もう、面倒くせー!
さっさと行くぞ、おら!」
アーノルドは立ち上がり、エルヴィスの服のえりを掴み持ち上げ、引きずって歩き出す。
「ちょっ、待ってください。
ちゃんと歩きますから、手を離してくださいって」
「チッ……さっさとしろ、おらっ」
アーノルドは、エルヴィスを解放し、町に向かって再び歩き出す。
「待ってくださいよ、アーノルドさん」
自由になったエルヴィスも、アーノルドの後を追いかけた。
町に戻り、ギルドに向かう途中、黒い衣装を着た辻の占い師が、道端で椅子に座り、テーブルに両肘をついて構えていた。
「ふむ……おい、エルヴィス」
アーノルドは立ち止まり、占い師を見た。
「何ですか?」
「ちょっと、占ってもらうか?
金は出してやるよ」
「えっ、でも?」
「まあ、良いじゃねぇか?
お前の人生、見てもらえよっ、な?
まあ、誕生日のプレゼントみたいなもんだ」
「……良いんですか?」
「おう……占い師さんよ?
ちょっと、コイツ見てやってくれねぇか?」
「ええ、良いわよ。
坊や、そこに座ってくれるかしら?」
占い師はフードで顔が見えなかったが、声からして若い女性の様に思えた。
エルヴィスはおずおずと、占い師と対面の椅子に座った。
「じゃあ、何を占おうかしら?」
「おう、コイツ、今日12歳の儀式で、スキル授かったんだよ。
んで、どうしたらいいか、わからないらしくてな。
道しるべ的な事、占ってやってくれよ」
「ふーん、そうなんだ?
じゃあ、そうね……これを使おうかしら?」
占い師は、何十枚と重なった占いのカードを取り出した。
「まずは、この占いのカードを、自分が思う様にシャッフルしてくれるかしら?」
エルヴィスは言われた通り、占いのカード束を掴み、シャッフルしようとした。
その時。
ポーン。
習得条件が揃いましたので、スキル『占い』を覚えました。
また、それに伴い、占いカードを好きな時、魔法で作り出せます。
エルヴィスの頭の中で声が聞こえた。
今回は、ここまでとなります。
次回は、別の作品、1作目の続き1話を書き終えた後、書く予定ですのでしばらく日にちが開きます。
1作目も最終章に入ってます。
気になる方は、作者名をクリックしてみてください。
今後とも、よろしくお願いします。