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出来ました。
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ちょっと長くなりました。
アーノルドとエリスは、数日かけた依頼を終え、冒険者ギルドに戻り、入り口のスィングドアを押し、中に入った。
アーノルドは中に入り、エルヴィスを探したが姿はなく、先に受付で依頼成功の報告をする事にした。
ただ、入った際、中にいた冒険者達が一瞬、鋭く睨む様にアーノルド達を見て、賑わっていたギルド内が静かになった。
だが、それは直ぐに元の賑やかさを戻し、冒険者達は、アーノルド達に声をかける。
「よー、アーノルドさん。
お疲れー、久々だな?
依頼、遠出だったのか?」
「ん、ああ、そうだが……それよりもだ。
さっき、お前ら、俺達に敵意を見せなかったか?」
「敵意?
何で、俺達が?」
「はぁ?
何、言ってんだ、この人?」
「ついに、ボケたか?」
近寄ってきた何人かの冒険者達は、アーノルドが言った言葉が理解出来ず、顔を見合わせた。
「ん、いや、勘違いか?
って、おい……誰がボケただと?」
最後に言った冒険者に、アーノルドは笑顔で詰めより、頭に拳骨を落とした。
「いてぇ?
冗談だよー、マジ痛ぇっての」
殴られた頭を押さえ、涙目で口をとがらし、文句をいう。
「……冗談でも、聞き捨てならんわ。
それより……エルヴィスは……まだ、戻ってないか?」
アーノルドは、後ろで笑っているエリスを一睨みし、エルヴィスの事を尋ねる。
エルヴィスが冒険者となって一年が過ぎ、ある程度の経験を積みDランクとなったエルヴィスは、アーノルド達の手を離れ、ソロで活動する事になり現在Cランクにまで上がった。
そして、今日、エルヴィスとアーノルド達は、エルヴィスが冒険者を始めて一年という記念を祝う約束をし、依頼を終わらせ、ギルドで待ち合わせをしていたのだった。
「エルヴィス?
うんにゃ……まだ、今日は見てないな?
誰か、見たか?」
「いや、でも、確か……アイツも2、3日かかる依頼、受けてたんじゃなかったか?」
「あー、そうだったかも?
今日、だったか?
戻ってくるの」
「いや、知らん」
冒険者達は、お互いに知っているか尋ね合い、否定の表情をする。
「そうか……いや、すまん。
まだなら、いいんだ……手間かけたな?
とりあえず、俺達、受付に行くわ……じゃあな」
軽く手を振り、アーノルドとエリスは、受付に向かった。
だから、気づかなかった。
今、話していた冒険者達、さきほどは否定したアーノルドへの睨みを、再び向けていた事を。
そして、アーノルド達の後ろを、ゆっくりと近づいていく事を。
「よう、シータ。
久しぶりだ……依頼の報告させてくれ」
アーノルドは空いていた受付の前に立ち、シータに挨拶をし、依頼主から受け取っていた成功報告書を差し出した。
「お疲れ様です。
アーノルドさん、エリスさん。
依頼報告、ですね?
はい、承ります……はい、確かに。
では、依頼報酬を取って来ますので、少々、お待ちください」
確認した依頼書を後ろの職員に渡し、保管している報酬を持ってくる様にお願いし、アーノルドに、ある事を尋ねた。
「アーノルドさん……さっき聞こえたんですけど、今日、エルヴィスくんも戻ってくるんですか?」
「ん?
まあな……そうだけど、シータ?
お前が、エルヴィスの依頼、担当しているんだから、お前の方が詳しいだろ?」
アーノルドは首を傾げながら、さっきから引っ掛かる感覚に、再び疑問を持ち、シータに顔を近づけ尋ねた。
「……なあ?
今日、何か、おかしくないか?」
「そうてすか?
そんな事ないと思いますけど……」
シータも不思議そうに首を傾ける。
「きゃっ?」
その時、後ろにいるエリスに悲鳴が聞こえた。
「エリス?」
アーノルドは、シータから目を離し後ろを見た。
目に写ったのは、さきほど話していた冒険者達に、動きを封じられ床に押し倒されているエリスだった。
「おい、貴様ら、何をしてやがる!」
アーノルドは、冒険者達に怒りを向けた瞬間、首に小さな痛みを感じた。
首を押さえ、横を向くと、いつの間にか受付のカウンターのこちらに来ているシータが、伸ばした人差し指から出ている鋭く尖った爪を、アーノルドの首から笑顔で抜いていた。
「……シータ?
……お前?」
そう呟くアーノルドは、ゆっくりと床に倒れていく。
「エリ、ス……」
倒れたアーノルドは、もう一度、押し倒されたエリスを見て、意識を失った。
「くっくく……あっは、はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!
アーノルド……次に目を覚ました時、お前の絶望する声が聞けるのが、楽しみだ!」
シータ、いや、シータに化けたゲルハルトは愉快そう、声高々に笑い、洗脳した冒険者達を指示する。
「お前ら!
それまでの間に……その女、犯して、犯して、穴という穴を犯しまくれ!
っと……そうだった。
おい、そこの女ども!」
更にシータは、女冒険者達に新たな指示を出す。
「お前ら、これから神殿に行って、神殿の神官どもと、孤児のガキどもを皆殺しにしてこい。
勿論、邪魔する奴等も、皆、皆、皆、殺しだ!
……さあ、行け、行って殺しまくれ」
少ない女性の冒険者とはいえ、集まれば20人はいる女性の冒険者は、シータの出す指示に立ち上がり、ギルドを出て行った。
当然、行き先は神殿。
女冒険者達は無表情で、神殿に向かって歩いて行った。
「あとは……おい、お前は、町の入り口に行って、エルヴィスを迎いに行け。
予定では、3時間は、まだ帰ってこないはずだ……それ以降は、いつでも構わん。
いいか、いかにも何かありましたという風に言って、連れてくるんだ。
いいな?」
シータは、受付の奥にいる職員1人に、声をかけ向かわせた。
「ああ……楽しみだ。
絶望、絶望、絶望……絶望の気配が、心地好い……」
シータは、今、冒険者達や、男性ギルド職員に順番に、数人で犯されているエリスの絶望。
これから起こる、アーノルドとエルヴィスの絶望を感じ、思い、想像し、口元からヨダレを流しながら、光悦の表情で笑う。
「あぁ!
やっと帰ってきた、エルヴィスくん!」
見覚えのあるギルド職員が、エルヴィスが町に入り口の門を通り、中に入ってきたのを見て、慌てて近寄ってきた。
「あれ?
どうかしたのですか?」
汗をかき、焦っている職員に、首を傾げるエルヴィス。
「今、ギルドで大変な事が起こっていて、アーノルドさんか、エルヴィスくんがもう少しでエルヴィスくんが帰ってくるからって、呼んでくる様に頼まれたんだ」
エルヴィスを見つけて安心したのか、ギルドで何かが起こっているかわからないが、アーノルドに頼まれたと、早口で説明する職員。
「アーノルドさんが?
何だろ……急いだ方がいいんですよね?」
エルヴィスは尋ねる。
「ああ……至急に、と頼まれている」
頷く職員。
「わかりました。
行きましょう」
エルヴィスと職員は、急ぎ足でギルドに向かった。
後ろにつく職員は、ニヤリと笑う。
「う……何、が?」
アーノルドはゆっくりと目を開け、状況を思い出せなまま、賑やかな辺りに目をやる。
「う……あ……やめ……も、う……やめ、て。
お、ねがいっ……だ、から」
「ば~か!
誰がやめるかよ!」
「なんだ?
まだ、意識あるのかよ?
さっさと、壊れろよ?
なあ?」
「そうだ、「「「こっ、わっ、れっ、ろ!こっ、わっ、れっ、ろ!」」」」」
身体中にアザをつくり、男達が射出した汚れに身を包み、いまだ前後の穴を突かれながら、どこか遠いところを見て、うわ言の様に呟くエリスに、男達は、壊れろと連唱している。
「あ……き、貴様らー!」
目に入った妻への蹂躙に激怒したアーノルドは、立ち上がろうとした。
が、いまだ身体にめぐる毒は蝕み、動く事が出来ない。
「目が覚めたみたいですね?」
怒りで、顔を赤黒く染めて、男達を睨むアーノルドの前に、上から覗き込みながら尋ねるシータが笑う。
「どけ!
シータ、邪魔だ!
……ぐあ?」
動けない身体を這いずる様に進むアーノルドに
、シータは背中を力を込めて踏みつけた。
「変ですね?
毒で動けないはずなんですけど……愛、ですか?
……ヘドが出ますね」
シータは足を下ろし、アーノルドの前に回り込み、しゃがみ込む。
「……お前、誰だ?
シータじゃ、ないな」
アーノルドは震えながらも上体を起こし、シータを睨む。
「あ、わかります?
……じゃあ、誰だと思う?」
シータの声が途中で、男の声に変わる。
「………………その声……まさか?」
アーノルドは聞き覚えのある声に、顔を青ざめ違う意味で震え出す。
「ん?」
シータは、更に笑う。
「あんたは……死んだ。
俺が、あの時……」
「殺した、ってか?」
シータは立ち上がると同時に、アーノルドの顎を蹴りあげる。
後ろに倒れた上体を起こし、シータを見た。
が、立っていたのはシータではなく、魔人だった。
そして、その顔は10年前に討伐した盗賊の頭梁だった……ゲルハルトだった。
「……い~~~~~~~~い、絶望ぅ~~だ~~!
ア~~ノルド~~!
その、顔!
その、表情!
その、絶望っ……最っ高ぉ~~~~だ!
なあ、おい?
その顔が見たかったんだ!
あー、もうマジで……最高っ!」
アーノルドからほとばしる感情が、ゲルハルトを喜ばせ、ギルドの床が抜けるぐらいに何度も地団駄を踏む。
「はあ、はあ、はあ~~~……。
あとはじっくりと、楽しませてもらうとして。
残りは、あのガキか」
ゲルハルトは舌をなめずり、入り口を見た。
(……あのガキ?)
その言葉を聞いたアーノルドは、嫌な予感がよぎる。
「ゲルハルト……さん。
あんた、もしかして……エルヴィスの事を?」
「ん?
ああ、そうだ!
喰ったシータの記憶に、あの時の商人のガキってのが冒険者になっているって~、あるじゃないか?
それも、シータの鑑定で把握出来ない能力がいくつもあるって話だ。
これも、何かの縁だ。
ついでに、そのガキも絶望してもらおうじゃねぇか?
なあ、アーノルド~~!
ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
「エ、ル……ヴィス」
その言葉を聞いていたのは、アーノルドだけではなかった。
今まで幾人にも、代わる代わる何度も犯され、暴力をふるわれ、絶望で心が壊れたエリスは、エルヴィスの名を聞き、それでもエルヴィスの事を忘れられなかった。
エリスから、新たな一筋の涙が流れる。
あの時から、私の、大切な……子。
エリスは、微かに残った心で、あるタイミングを待つ事にした。
「お、前に……エルヴィスを。
エルヴィス、は、俺が……守る!」
見守ってきた大切な子の想いは、震えていた身体は収まり、毒による症状も魂は越え、怒りは限界を越え、アーノルドを立ち上がらせ、ゲルハルトに向かいあう。
「おお、すげぇ?
何が、お前をそこまで突き動かすのは……何だ?
絶望の反対……希望?
エルヴィスって、ガキは……お前の希望、なのか?
いい、な……その希望、潰せば……お前は、再び絶望に落ちる!」
ゲルハルトは新たな絶望を求め、目を光らせた。
「テメエら、手を出すなよ?」
ゲルハルトは口角を上げながら、アーノルドに向かって歩き出す。
「絶対に……やらせない!」
アーノルドの武器は全て取られている。
手に魔力を貯め、拳を握りしめ、ゲルハルトに向けて突き出した。
ガシッ
「……おい、おい?
そんなもんで、俺を倒せるとも?
魔人……ナメんな、よっ!」
アーノルドの全力の右ストレートを、ゲルハルトは顔で受け止めたまま、アーノルドの顔面に殴り返す。
「ぐはっ……」
吹き飛んだアーノルドは、受付のカウンターにぶつかり、前のめりで倒れた。
バアンッ!
その時、ギルドの入り口、スィングドアを無理やり押し開け、中に入ってきたエルヴィスは、状況を見て固まった。
風邪もある程度治ったんですけど、まだ、どこかしんどい?
感じです。
皆さまも、気をつけて&お大事に。




