01
3作目となります。
しばらくは、1作目と交互に書く予定です。
今回は最初の出だしなので、8時間置きに投稿します。
よろしくお願いします。
この世界を見守りし神々。
その神々を奉りし神殿に、誰もが12歳になった日、祈りを捧げ1つの〈能力〉を授かる。
ただ、それは神々の気まぐれか、祈りを捧げた者が望んだスキルとは限らない。
この世界に現れる魔物を倒すべく、戦闘に関するスキルを望む者が、それに見合ったスキルを貰う事もなく。
また、剣や盾、生活に必要な道具を作る代々鍛冶師を営む一族であっても、鍛冶のスキルに恵まれない事もある。
この話は、今回、12歳となり祈りを捧げた少年、少女……主人公達が望んだスキルではなく、今までにない特殊なスキルを授かり、めぐり合い、生きていく話である。
少年、エルヴィス・カラードは3歳の頃、村から町へ、町から都へと特産品を買いつけては、売りにまわる旅商人の両親とともに、荷馬車で旅をしていた。
ある日、上手く商品を売りつけ、その代金で、別の村に特産品を仕入れに行く途中で盗賊に会い、村に売る商品と代金を奪われ、揉めた際に父親も殺され、母親はエルヴィスの盾となった。
その直後、近くを通った冒険者が現れ、エルヴィスを保護したが、盗賊は逃がしてしまった。
まだ、その時は息のあった母親は何が起こったのか冒険者達に話した後息をひきとった。
冒険者は、盗賊のアジトに行き殲滅させ、盗まれた商品や代金を回収し、必要な物は自分達で、不要な物は売ってお金にし、エルヴィスをいくつかの村を結ぶ、町の神殿の孤児院に預けた。
冒険者達は危険な仕事の為、エルヴィスを育てる事は出来ないからだ。
売りさばいたお金の3割を、国と神殿の協定通り、神殿に養育費として渡した。
神殿は、そのお金の7割を受け取り、残りの3割は、エルヴィスが12歳となって孤児院を出る際に渡す事になっていた。
エルヴィスは12歳になるまで孤児院で育った。
与えられた仕事をこなし、時間があれば助けてくれた冒険者達の様になりたく、木剣を振り続けている。
また12歳から登録出来る冒険者ギルドに入り浸っては、冒険者に頭を下げ、剣を教えてもらい、また、仕事の話を聞いたりとしていた。
最初は、なかなか相手にしてもらえず、嫌な顔で追いやられていたが、いくら追いやっても頭を下げ、しつこく粘り、やがてエルヴィスの熱意に負け、何人かの冒険者は相手にする事にした。
12歳になる前には、エルヴィスは冒険者ランクの下から2番目、Dランク並の実力まで身につける事になった。
ただ、エルヴィスが自惚れ天狗にならない様にする為、その事は誰もエルヴィスに教えていなかった。
そして、今日、エルヴィスは12歳となり、孤児院の隣、神殿へとスキルを授かりに足を運んだ。
エルヴィスの他に、2人の男の子がスキルを授かりに来ていた。
その2人は順番に部屋に呼ばれ入り、しばらくすると出てきた。
どうやら、祈りを捧げスキルを授かったみたいだ。
1人目は思ったスキルを授かったみたいで喜んでいた。
2人目は違った様で、1人を恨めしそうに見ていた。
その後、1人目と2人目はそれぞれの神官に連れられ、別の部屋に行き姿を消した。
最後にエルヴィスの番となり呼ばれ返事をした。
エルヴィスが部屋に入ると、1人の神官が待っていた。
「よく来ましたね、エルヴィス。
お誕生日、おめでとう。
貴方が、この神殿……孤児院に預けられて、もう8年以上になりますか?
まったく、年月の過ぎるのは早いものです」
待っていた神官は、この町の神殿と孤児院の総まとめ役の大神官長ウィリアムだった。
「ウィリアム様?
ウィリアム様が、僕の立会人なのですか?」
「ええ、そうですよ。
これから説明を致しますので、こちらに来てください」
「あ、はい」
エルヴィスは、ウィリアムがすすめた椅子に座り向き合う様に、ウィリアムも座った。
「では、改めて、エルヴィス、お誕生日おめでとう。
これから、貴方は神々に祈りを捧げにスキルの授与を行います。
貴方は、孤児院にて私の話を何度も聞いているので、よく理解していると思いますが、もう一度、説明します。
よろしいですね?」
「はい、よろしくお願いします。
ウィリアム様」
「ええ、まず、貴方は幼い頃より、冒険者に憧れ、木剣を振り、剣の技術を研いていました。
ですけども、スキル授与で確実に剣に関するスキルを授かるとは限りません。
そして、どんなスキルを授かるのかも、この後、祈りを捧げなければわかりません。
この事は、よろしいですね?」
「はい、ウィリアム様」
「よろしい……では、こちらに来て膝まついて、神々の像に祈りを捧げなさい」
ウィリアムは立ちあがり、祭壇の机のある場所に立ち、祈りの場に来る様にすすめ、エルヴィスに祈る様に言った。
エルヴィスは祈りの場に膝まつき、神々の像を見た。
中央に、この世界全ての神々のまとめる神王アルビィオス。
その左、エルヴィスから見て、神王アルビィオスの右側に立つ、アルビィオスの妻であり、命の輪廻を司る女神シェラー。
神王アルビィオスの右、エルヴィスから見て左側の、太陽と月を作りし、時間を司る男神アロデゥス。
女神シェラーの隣に立つ、天空と海の支配する男神バンディット。
男神アロデゥスの隣に立つ、大地と恵みを司る女神クフォンデルの五柱が、祈りを捧げる者を囲み見下ろす様に作られ並んでいた。
エルヴィスは五柱を見て、目を瞑り強く祈る。
(僕に剣の才能を、技術を、それにともなう身体を授けてください)
神々に祈りが届き、天窓から光がエルヴィスを照す。
「おお、今、この時、エルヴィスの祈りが神々に届き、エルヴィスにスキルが授かった。
……エルヴィスよ、今一度、神々に感謝の祈りを」
「はい」
(神様、ありがとうございます)
「これにて、スキル授与の儀式を終了とする。
エルヴィスよ……目を開け立ちなさい」
エルヴィスは指示に従い、もう一度神々の像を見上げた。
ウィリアムは移動し、再び椅子に座り、エルヴィスにも座る様にすすめた。
「さて、エルヴィス……儀式は終わりました。
これから、新たに説明をしますので、よく聞いてください」
「はい」
「まず、スキルを授かった時点で、授かった者が共通で出来る事があります。
それは、ステータスというものです」
「……ステータス?」
「はい、ステータスというのは、自身の基本能力状態がわかる表です。
ステータス、またはステータスチェックと思ったり、言ったりすると自分だけが確認出来ます。
また、ステータスオープンと言えば、他の者に自分の状態を見せる事が出来ます。
まずは、ステータスオープンと唱えてください。
それを見て、それぞれの項目の説明をします。
では、お願いします」
「はい、ステータスオープン」
すると、エルヴィスとウィリアムの中間に半透明の板の様な物が現れ、何やら、文字と数字が描かれている。
名前:エルヴィス・カラード
職業:未定
レベル:3
体力:13/16
魔力:10/11
筋力:14
速力:8
知力:10
器用:15
運力:3
特殊能力:カード
「まずは上から見ていきましょう。
名前はもちろん、貴方の名前。
職業はこれから何とでもつきます。
……エルヴィスは冒険者なるんですよね?」
「はい」
「では、ギルドに行き、冒険者登録すれば、職業は冒険者に変わります。
レベルは上がれば基本能力が上がり、ランダムで能力値が上がっていきます。
レベルは、その人の職業で行動した事で、経験値が増えれば上がります。
貴方の場合、ギルドで依頼を受け、仕事を達成すれば経験値が増えます。
体力から運までは、その時の基本能力の目安ですね。
鍛え方によってその数値の上がり方が変わります。
毎日走り込みをしていけば体力と速力が上がっていき、走る距離が増え時間短縮が出来る様になります。
これは、スキルとは関係なく、数値を上げる事が出来ます」
「なるほど」
「最後に、特殊能力ですが……」
「「カード?」」
エルヴィスとウィリアムは2人して首を傾げた。




