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異世界帰りの魔王経験者、殺人事件を強引に解決する  作者: 遊野 優矢(ゆうや ゆうや)
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FILE01 女学園バラバラ死体事件-1

 楽しみにしていたゲームをやれなかったことに肩を落としつつ登校すると、学校もまた、朝から『月』の話題でもちきりだった。


「見てくれよこれ! ニュースで使われたんだぜ!」

「えー! すごーい!」


 クラスの男子がスマホを掲げながら、自慢げに声を上げている。

 どうやら、スマホで撮影した昨晩の動画がニュースで使われたらしい。

 たしか、彼の名は高橋だったか。


「なあなあ左端よう。お前は見れたのか?」


 高橋は、登校したばかりの俺に、どこか小馬鹿にしたように聞いてくる。

 俺がゲーマーだということは周知の事実なので、引きこもっていて見逃したとでも思っているのだろう。


「見たよ」


 誰よりも近くでな。


「へ、へー……」


 出鼻をくじかれた彼だが、まだめげない。


「でもニュースで使われるほどきれいに撮影はできてないだろ?」


「その通りだが、そもそも企業が作ったものなんだから、一番綺麗な映像を持ってるのは企業じゃないか?

 なんの自慢なんだ?」


「う……」


 完全に論点のすりかえなのだが、高橋をとりまいていた女子達も、「そういえばそうよね」などと言いながら散っていく。


「今日はずいぶんと強気じゃないか」


「普通にしてるだけだが」


 俺って、そんなに弱気な感じだったかぁ。


「いい加減にしなさいよ。

 前から言おうお思ってたけど、みっともないわよ」


 そこに割り込んで来たのは、耳の下で結んだ黒髪がとてもかわいい委員長。

 長嶺咲良ながみねさくらだった。


「なんだよ、今更かばうのかよ」


 高橋が疑問に思うのももっともだ。

 彼女もまた、俺が教師のストレスのはけ口にされるのを黙って見ていたクチだったはず。


「自分でどうにかする気もない人間をいちいち助けるような趣味はないもの」


「ちっ……なんだよそれ……」


 高橋は面白くなさそうに自分の席へと戻って行った。

 ちなみに高橋君、視線や体の動きから察するに、長嶺咲良のことが好きらしい。

 脈は全くなさそうだが。

 ご愁傷様である。


「あんた、思ったよりかっこいい女だったんだな」


「何よその言い方。かっこつけてるつもり?」


 素直な感想を口にしたつもりだったが、ちょっと魔王キャラが残って出てしまっていたかもしれない。


「忘れてくれ。昨日見た映画に影響を受けただけだ」


 うーん、こんなことも言わないな。

 自分が思っている以上に、言動があっちの世界に染まってるぞ。

 長嶺が完全に反応に困った目でこちらを見ている。


 その時、ポケットに入れていたスマホが振動した。

 主任からのメッセージだ。


『出た。迎えをよこす』


 書かれているのは、簡素な一文だけだった。

 この文面は、『奪うプランダラー』に関する情報が入った合図だ。


「すまん、委員長。俺は早退すると担任に伝えておいてくれ」


「え? ちょっと、なんであたしが?

 委員長の仕事じゃないわ」


 仕事の範囲はきっちりわけるタイプらしい。


「お父さんとのこと、今度相談にのるから」


 俺は彼女のカバンをちらりと見ると、そう言い残し、席を立った。


「は? パパのことなんで知って――ちょっと待ちなさいよ!」


 お父さんのことを話題に出したのはいくつか理由がある。

 いつも決まった時間に登校してくる彼女が、ちょうど電車一本分遅れて来たこと。

 カバンにタバコの灰がわずかについていたこと。

 彼女の父が喫煙家なのは、去年の学園祭で見ている。

 その学園祭には父1人で来ていたこと。

 他にもいくつか理由はあるが、今はいいだろう。


 俺が教室を出ようとしたところで、ミカと鉢合わせた。


「そっちにも?」


 ミカは俺と目を合わせ、軽くうなずいて見せる。

 俺も同じようにする。


「行きましょう」


「ああ」


「ちょ、ちょっと待って!

 あなた達、どういう関係なの?」


 お父さんのことを聞くために追ってきたはずの長嶺は、そんなことなど吹き飛んだかのように、俺に聞いてきた。

 振り返ってみれば、クラス全員が俺に注目している。

 そりゃ、これまで冴えなかったクラスメイトが、学校一有名な美少女と意味ありげに話してたら気になるよな。


「なんでもありませんわ」


 ミカは静かな声音だそう言った。

 ちゃんと病弱設定を守っている。

 まさかぴったりエロスーツで暴れるとは思えない演技だね。


「でも……」


 どうやら長嶺は、ミカが俺に何かされないか心配しているようだ。

 信用ないな!

 影は薄かったけど、そんなヒドイ扱いをされるいわれもないぞ。


「なんでも、ありません」


 ミカは彼女にだけ聞こえるよう小さく低い声で繰り返した。

 長嶺を射殺すかのようね視線でだ。


「ひっ――」


 小さく震えた長嶺はその場で硬直する。

 俺は、足早に立ち去るミカを追いかけた。


「おいおい、病弱設定はいいのか?

 なかなかの迫力だったが」


「何よ、あの女」


 俺の問いに、ミカは答えになっていない言葉を返した。


 んー、怒っている理由はわかるが……。

 これは、俺がツッコムとややこしいことになりそうだ。

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