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王子様で王女様  作者: 迷
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06_王子様の結婚

縁談もとい大乱闘のしばらくして「とにかく大変なんです」とメイドたちから知らせを受けた兵たちがその場に駆けつけた時に見た光景は、確かに大変なものでした。



まず足元には大量の茶器やら菓子やらが飛び散って、

2人の王様は今まで見たことも無いくらいの盛大な男泣きをしながら生き別れの兄弟のようにガッシリと抱き合って、

付き人の剣士2人も互いの長年の苦労を労う引退する仕事仲間のように割れたカップとわずかに残った茶で乾杯しながら涙ながらに肩を叩き合って、

そして王子様と姫様はお熱いキスの真っ最中。



6人のどこの誰にも声をかけずらい、というか声をかけたくない状況にメイドも兵も何もできずにポカンと立ち尽くし、

そうしている間に騒ぎを聞きつけた大臣達や近くで働いていた者達が集まって、


そうしてようやく我に返って気づいて恥ずかしさの概念を取り戻した王様2人と付き人2人、王子様と姫様は姿勢を正し、





そんな場所で、2人の婚約は発表されました。





最初は例の秘密を知っている者達は何故だどうしてだと王様達に詰め寄りました。

しかし裏でコッソリと理由を聞いたとたんに秘密を知らない国民同様、お祝い勢に姿を変えて涙を流して喜びました。


今まで散々頭を悩ませていたことがそれで万事解決。何よりこれより良い縁談が今後出てくることなどまずありえない最高に丸く収まる方法が奇跡的に見つかったのです。

王様や付き人はもちろん、そりゃあ理由を聞けば反対する者なんていないでしょう。





実は王子様は、自分が男だと思っている女の子。

実は姫様は、自分が女だと思っている男の子。





2国の誰もかれもがデリケートな問題だと言えないままに大人になって、そして本人達は何の疑問も無くオメデタな事態になってしまった・・・と、何とも酷くて最高なカップルが奇跡的に出来上がり、本人達はそれが普通と思っているのがまたミラクル。

これにOKを出さずしてどこでこの問題を解決できるというのだろうか、ということでした。


事情を知らない国民達は立派な王子様とお美しい姫様との婚約の知らせを聞いてからというもの毎日のようにお祝いをして、事情を知っている者達も体中の水分が無くなるんじゃないかというくらい涙を流して安堵して、やがて正式に姫様が国へとやってきて結婚式を挙げた時の盛り上がり様といったら、山一つ超えた先にも聞こえるような歓声が響く程でした。



2人の結婚は、2国の間に色々と変化をもたらしました。



王様や大臣達や、他にも例の秘密を知っていた者達は長年の悩みの種が1つ取れたせいか以前より少し若返り、同じ悩みを持つ者同士の交流が増えたお蔭で2国間の絆はとても強固なものになりました。

民間の間でも物流や交流は以前の倍くらいまで増え、そのせいかほんの少しずつではありますが両国の財政もろもろが豊かになり、国民の殆どの者に嬉しい結果です。

しかし時々、王様2人が子育ての苦労話を愚痴り合うグダグダでクドクドな飲み会が開かれるようになったせいでほんの一部の方にはちょっぴり不遇な結果になりました。


相変わらず王子様は素晴らしい次期王様で、前より増えた公務に加えて2日酔いの父と義父の分の仕事も片づけてしまう有能っぷり。

嫁いだ姫様も最初こそは王子狙いだった女性たちからそれなりに睨まれたり陰口叩かれたりされていたのですが、料理裁縫に加えて服やお化粧のセンスもプロ並みで、おまけにどこかの貴族のお宅にお呼ばれする度に良い話をポンポン持ってくるこれまた交渉術も素晴らしいお方。あっという間にプライドの高い貴族の女性たちからも白旗を上げられ、今や国中の女性から尊敬される立派な王女様となっています。





表から見れば特に何の問題も無く、寧ろ以前にも増して良い方向に向かっていっていると思われているこの国なのですが、新たな問題は早くも発生していました。





「しっかし、王子様は結婚してから幸せ太りされたなぁ。」


「本当に、馬にもあまり乗らないし。よっぽど王女様といるのが楽しいのかしらね。」



2国間の秘密の会議の結果、今更性別を本来のものに戻すのも色々とアレだし・・・ということで、2人の性別は据え置きとなりました。

そしてその結果、王子様のお腹が目立ち始めた今現在新たな胃痛の元が出はじめていたのです。


そりゃそうなるだろうさと誰もが思っていたのですが、誰も言えなかった結果がこれです。



「男というのは大変だな。こんな腹で半年以上も過ごさなくてはならないのか。重たくてロクに馬にも乗れやしない」


「あら、女だって男がしっかりと働けるように影で色々とやっているのですよ?赤ん坊の着る服や離乳食は全部私が作るんですからね」


「アハハ・・・」


「ソウデスネェ・・・」



他に変えも無いということで、結婚後も付き人を続行中の剣士2人は乾いた笑いで互いの主人に同意しました。

そして彼らの部屋からは毎晩のように泣き声が聞こえてくるとメイドたちの噂になっていて、夜間は近寄り禁止の怪談スポットとなりました。



今後さらにお腹が目立ってきたら?

お生まれになるお子様の性別は父母と同じく逆で伝えるのか?



この先、何も知らない王子と王女それに大多数の国民には明るい未来が。

そして秘密を知る一部の者には先を考えれば考えるほど胃が痛くなる暗い未来が待ち受けているとは思いますが、そこはご想像にお任せします。



めでたしめでた・・・くないですね。


おしまい。

実はこちらは別の小説サイトで人生初投稿した小説なのですが、少し直してなろうでも投稿させていただきました。

拙い短編とはいえ1つの作品を完成させたという実績は残せましたので自信にして次の作品に挑みたいと思っています。


最後まで読んでいただいた方、本当にありがとうございました。

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