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王子様で王女様  作者: 迷
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04_王子様の茶会

騒動からそう間を置かずやってきた隣国の馬車から降りてきたのは、相変わらず白い肌に満面の笑顔の可愛らしい姫様と、何故か髪も服も乱れて放心状態のまま姫様に手を引かれるがままの普段の威厳がどこかへ飛んで行ってしまっている隣国の王様、さらにそんな2人を危険から守る筈の立場なのに足取りすら危うい付き人の男剣士でした。


正式に発表がされていないとはいえ王子婚約の噂を聞いた国民達は既に祝いの準備に精を出し、気の早い者は朝から酔っぱらった顔で酒瓶片手に街を歩いているというのに、まず嬉しがるはずの父や付き人が血の気の引いた顔をしているのはどういうことなのだろうか?と、疲れ切った顔の彼らを見て国民達は妄想を膨らませました。





彼らの顔合わせ用に設けられた静かな席は、それはそれはまるでお葬式のような、ゴシップ好きなメイドだってそそくさと茶を出すだけ出して逃げるように去っていく有様の、静かな席でした。





2人の王様は寿命間近の老人のようにプルプル震え、表情は相変わらず死刑囚か何かのように絶望しきった顔。

王子様の付き人の女剣士と姫様の付き人の男剣士も暗殺者どころか子供でも簡単に一本取れそうな隙だらけの上の空状態。

一番の当事者である王子様と姫様だけが熱い眼差しで互いを見つめ合っているのだから傍から見れば色々と不気味で不自然なお茶会でした。


そんなでも招いたからには始めなければ、と王子様の父王は口を開きます。



「さ・・・さて、冷めないうちにいただこうか・・・?」



王様の声は喉に刃物でも当てられているかのような竦み切った小声で、とてもこれから縁談話が始まるとは思えません。

それでもカタカタ震えるティーカップから最高級のはずなのに香りも味も感じられないお茶をやっとこさ喉に通し、泣いて逃げたい衝動を何とか押し込めながら意を決して王子様へと話しかけます。



「それで・・・早速だがまず再度確認したい。王子よ、お前はこの姫君と結婚したいと申したのは私の聞き間違いではないのだな?」


「もちろんです父上」



王子様はハッキリと頷き、姫様はぽっと頬を赤らめます。


それだけなら良いじゃないかと快く背中を押してやりたいところなのですが、何せ王子様は女の子。

後先考えず国民にも本人にも伝えないままやってきた結果が今のこんな状況な訳で、もちろん頭では分かっていたもののいざその時が来ると言葉に詰まります。


王様はどうやって隣国の王様と姫様に説明したものか、と今にも破裂しそうな胃のあたりを押さえながら裁判にでもかけられている囚人のように慎重に話しました。



「・・・王子よ。私はお前に人を愛す気持ちが芽生えたこと自体はとても嬉しく思っている。

しかしお前はまだ若いし、若さゆえの勢いでその決断を早まってしまっているかもしれぬという不安もあるのだ。だからもう少し・・・」



しかし、その先を口に出すより先に隣国の王様の方でした。





「私は今もこの先も断じて、決して認めんぞ・・・!!」





隣国の王様の声に反応したのは隣国の王様と姫様の付き人以外の4人でした。

王子様と姫様はもちろん諦めないという顔で隣国の王様に詰め寄って、王子様の父であるこの国の王様と付き人の女剣士は思いもよらなかった嬉しい意見に口角が上がって万歳したいのを何とか隠しながら平常心を保ちます。


反対を表明した隣国の王様は冷え切った顔で姫様を睨みつけ、姫様の付き人の男剣士は姫様に助けを求める視線を寄越されても眉を下げ首を横に振るだけです。

 


「ゴホン・・・そうかそうか、いや、まことに残念だが王子よ、親の同意の得られない結婚ほど悲しいものは無」


「何でですのお父様!彼がもし息子だったらっていつも仰ってたでしょう!?」



言い終わるより先に隣国の王様の服を引っ張り反論し始めたのは姫様です。

王子様も同意見のようで手こそ出してはしていませんが同じように悲しさと怒りを足して割ったような顔をして姫様と共に詰め寄っていましたが、そんな本気が見てわかる2人の講義にも隣国の王様の意見は変わらないようでした。



「とにかく駄目なものは駄目だ!というかお前はどこの国にも嫁に出さん!というか無理だ!」


「無理ってどういうことですの!!?」



姫様半泣きで抗議して王子が真剣に情熱を語っても、隣国の王は頑なでした。

そんな同じような問答を何度もやっているうちに姫様のお綺麗な顔は本格的に泣き顔に変わってしまい、王子様はもちろんですが、ここまで目の前でやられると自分達も同意見とはいえ王様と女剣士もそれなりに胸が痛みました。



「あ、あの・・・姫様も泣いておられますしもう少し冷静に・・・」



女剣士は無礼を承知で口を開きました。

しかし隣国の王様はそんな意見を聞くつもりはないようです。寧ろさらに激高してしまいます。



「うるさい!!大体、何故によりによって王子はコレを選んだのだ!?」


「コレとは何ですか!?いくら未来の義父様になるとはいえ我が妻になる女性をそんな風に呼ばないでいただきたい!」


「誰が義父だ!?他の娘を欲しいというなら大手を振って送り出したというのに!

もう少し女を見る目を養ってから出直して来い半人前めが!!」



その言葉に最も反応したのは王子様ではなくその父親の王様でした。



【ガッシャン!】



「・・・はァ!?息子は既にどこの国に行っても恥ずかしくないだけの人間に育っておるわ!

そちらこそポンポン数だけ増やしおってしっかり教育しているのか不安になるがね!?」



今までの死刑囚のような様子から一変、息子を誰よりも愛している父親である王様は一瞬で真っ赤になって隣国の王に怒鳴ります。

ついでに職人手作りの高級カップにはビッシリと亀裂が入りました。



【ガコン!】



「何だとーーー!!?」



さらに隣国の王も元から赤かった顔からさらに湯気を出して怒り返します。

ついでに立ち上がった時に机が傾きお茶と茶菓子が零れました。



お葬式ムードの顔合わせは一変していつの間にか熱が上がり、今や喧嘩ムード一色となりました。

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