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王子様で王女様  作者: 迷
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03_王子様の婚約

この国の王子様と隣国の姫様、幼馴染の2人は小さな頃から会話内容も行動もあまり変わらないのですが、姫様は父王に叱られながらも一人で頻繁に王子様の元を訪れ、王子様も嬉しそうに色々な所に連れてまわっていました。

しかも体はお互いしっかりと成長を続けているのだから、仲良さそうに馬に二人乗りしたり共に茶を飲んでいる姿を見れば恋仲だと思わない方がおかしいでしょう。


浅黒く活発的な背の低い王子様と、色白でおしとやかな背の高い姫様という中々アンバランスな組み合わせだったのですが、それでもお2人とも美男美女のお似合いのカップルですし、それに何より小さい頃から仲の良かった2人を影ながら見守っていた両国の国民は何故か反対している両国の王様2人から何かと理由を見つけて遠ざけては自分達も席を外したりとなるべく2人きりになるようにこっそり手を加えたりと応援していたのです。


付き人の女剣士もなるべくは万一の事態が起きぬよう行動を共にしてはいるのですが、流石に事情を言うわけにもいかずあまりにも付きまとっていれば怪しまれると思い時々国民たちと共に席を外していたのですが、2人きりの間に秘密がバレやしないかと背中に滝のような汗を流して王子様の帰りを待たなければならない日々が続き、 善意で王子様の恋を応援しようとする国民に強く言えないまま時間だけはズルズルと過ぎて、余計に2人の距離が縮まっていってしまっている現状に女剣士の戦いで鍛えられた屈強な精神は何の役にも立たずへし折れ、時にはこの現状を作り出した元凶の王子様の父親であるこの国の王様に恨みの視線を飛ばすことも多くなっていました。



そんな感じの、ほとんどの者が喜びほんの一部の者達が胃と頭皮を痛めている時でした。





「父上、私は隣国の姫を嫁に欲しいと思っています」





「・・・え?」



無欲な王子様が珍しくどうしても欲しいものがあるとのことで満面の笑顔で我が子のねだりを聞いていた親バカの父王は、つい先程まではとても嬉しそうな赤い頬をしていたはずなのにほんの数秒の間に真っ青に変わっっていきました。

王様の変わりように右から世話係が慌ててやってきて椅子から落ちないように支え、左から急病かと思った王の担当医がやってきて王の脈を計ります。

それでもそんなことも全く気付かないように王は何故か絶望したような表情で王子様をじっと見ていました。



「な、何だと!?・・・いやそれは嬉しいのだが色々と無理が・・・あ、いや息子よ、おまえはまだ若いしそんな気を急ぐことでもないだろうに・・・!!」



秘密を知っている数人は王と同じように顔を青くしながら王の言葉にガクガクと首を振りました。

女剣士も最近の王子様と姫様の様子からそういう覚悟はしていたものの、いざ起きた最悪の事態に全身の血が差サーッと引きました。



そりゃそうです。もし付き合いが発展して男女の仲にでもなろうものならその父親に最大の秘密がバレるのは確実です。

それに相手は末娘を縁談話の一つにも首を縦に振らない、嫁に出すのをずっと渋り続けている末娘だけには大変神経質な隣国の王様なのです。

そんな王に「あなたの娘が好きな王子様は実は女の子なのです!」なんて耳に入ろうものなら何が起きるかわかったものではありません。



でも、しかし、いや待て、と王様や大臣達が王子様の気を何とか変えようとしている様子は秘密えお知らない者達にはおかしな光景でした。



「・・・しかし、私は彼女以外に人生を共にしたいと思える方など他にいません。それにもう彼女から返事もいただきました」



王子様はしっかりと王様の目を見て言いました。

只でさえ誠実で信頼の厚い王子様です。その言葉が嘘でないことは長年近くで彼?を見てきた王様や女剣士はもちろん、家臣や下働きにだってわかるでしょう。



「まぁ!」


「何とめでたい!」



王子様の発表に喜ぶ声が大多数。殆どの者達がその言葉に国の安泰とお世継ぎの期待に胸を躍らせている一方で、



「「「「「無理だ!!!!!」」」」」



・・・という大きな数人の大きな謁見の間に響き、謁見の間のおめでたムードはピタリと静まってしまいました。



「大多数が知っている王子様と姫様の仲の良さを王様達は知らないのだろうか?」


「それにしては王子様と誰よりも一緒にいる女剣士まで驚くのはおかしくないか? 」



例の秘密を知らない者達には何が何だかわからない、しかし知っている者からすれば他国に王子様が女の子だとバレるかもしれない最大のピンチという状況だったのです。



国の財政が大きく傾いたり戦争の一歩手前の危機に陥った時にも冷静に対処していた彼らが血相変えて叫んでいるのだから、他の所にいた掃除人や料理人たちも皆何事かと聞き耳を立てて集まってしまいました。

そんな空気に気付いて余計に焦りだす大臣達や王様は顔だけは何とか整えながらも緊急事態とばかりに行動に移ります。



「と、とにかく今すぐ国一番の馬に乗り隣国の王と姫を呼んできてくれ!大急ぎでだ!バレて戦争になってからでは遅い!!」


「は、はい!!?」



王様が混乱しながら指示を出したのはあろうことか床磨き係の、もちろんながら馬に乗れない女性でした。

それでも王様の命令ですから、断れる立場ではない立場の床磨きの女性は素っ頓狂な声を上げながらも馬屋へと走り、慌てて他の家臣が馬に乗れる者に改めて指示を出し直します。


それが終わるとすぐに、とりあえずその場を乗り切ったというゲッソリした顔で今度は王様と数人の大臣達が個室に籠ってしまいました。


そんな王様たちの様子に王子様や国民達は首を捻りながら隣国の王様と姫様が来るのを待つことになったのですが・・・





まさか、隣国の王も同じような有様だとはその時は誰も思いもしませんでした。

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