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王子様で王女様  作者: 迷
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02_王子様の成長

本来なら女児は外の国との仲を持つ役目を与えられ嫁ぎ、男児なら国の後を継ぐため育てられるはずの世の中です。

なのでお妃様が女児だけを産み亡くなったのなら普通は次のお妃様を迎えるとか、最初から複数人の女性と結婚したりとか、それでも女児だけならお婿をもらうとかいう手もあります。



しかしこの国の王様はそれでも最愛の女性との間の子に確実に王の座を継がせようと、あろうことか娘を王女ではなく王子だと国民に嘘をついてしまったのです。

しかも大した考え無しで、です。



女剣士が心に思うことは10も20も、100も200もあったのですが、姉である王妃様一筋だった王様が



「秘密のまま育ててくれ!頼む!」



と床に頭をつけて懇願してくる姿を見せられてしまっては反論の気も起こせず、今現在こうして女の子の王子様の背中を流す立場に陥っている、という訳です。

さらにさらに問題なのが、王子様までもが自分の事を男だと思って育っているのだから扱いも中々に難しい状況になってしまっていたのです。



子供の今は人前で脱がない限り疑う者はいないと思います。

しかし、あと数年も経てば顔つきや体つきは年相応な女らしいものになっていくだろうし、王子であるからには世継ぎのために女性を娶らなければならないわけで・・・そうなれば国民にも外の国にもバレるのは確実なのです。


できることなら何か怪しい黒魔術でも何でも良いから時間を止めてほしいくらいにこの国の状況は複雑なことになっていたのでした。





王様たちが裏でどうしたものかと頭を悩ませている今日も、王子様は元気に馬に乗り剣を振っていました。



「お美しい身のこなしでした!」



たまの隣国で行う友好試合でも王子様は年頃の女性たちの人気者です。


隣国の王様は2人の王子様と3人の王女を持つ子沢山な家庭を築いている王様でした。

その中から王子様に真っ先に駆け寄ったのは一番幼く一番可愛らしい末っ子の姫様で、王子様にハンカチを渡し、まだ恋心も何もない王子様が純粋な笑顔で受け取ってお礼を言うと姫様の頬が赤く染まる。

・・・それなりに恋を知る方から見れば、姫様の思いは一目瞭然でした。


しかし、子供らの微笑ましい光景だというのに隣国の王様の顔には少し眉間に皺が寄っていて、一方こちらの国の王様の王子様を見る目は重度の心配性の人間の様に目にも手にも落ち着きがありません。


知らない者には「大事な子供の相手を見定めようとしている父親」か「大事な子供の恋の行方を心配する父親」のように見えることでしょう。

普通の男の子と女の子、それを見つめる親・・・と見ることができるのなら可愛い喜ばしい状況なのでしょうが、王子様の本当の性別を知っている数人には少女が少女に頬を赤らめているのに慌てる親という、少しばかり破廉恥な光景なのでした。



「・・・あの、今度は王子のお国で剣技を見に行ってよろしいでしょうか?」


「もちろんさ!ただ、キミの肌は白くて綺麗だから焼けてほしくないな。次は大きな日傘を持って見にきておくれよ」



大半の見物人は可愛らしい王子様と姫様の将来に期待し、一部の者は冷や汗をかいてその光景を見守ったのでした。





幸いなのかそうでないのか、王子は王子の心のまま成長していきました。



「何故僕は胸をきつく縛らなければならないんだ?」


「馬に乗ったり剣を振るう時にそのままでは邪魔になりましょう」


「なら仕方ないか」



身長こそあまり大きくはなりませんでしたが毎日のように続けた乗馬と剣のおかげで割れた腹筋や筋張った手足は男性と同等くらいに逞しく、幸い運動に慣れた体は脂肪より筋肉をつけることを優先したのか胸も同い年の少女の半分にもならないくらいに


しか成長しなかったため、王子様を「少し小柄な青年」として通すのはそこまで難しくはありませんでした。

それでも男性と比べれば体は細めで背は低いし、胸も少しは出ているから・・・と、王様達や付き人の女剣士は何かと理由をつけて王子に厚着をさせていたのでした。



王子様の剣の腕は小さな頃から更に素早く力強くなり、隣国や友好国と開催する剣の大会では毎回優勝を取って帰ってくるほどの腕でした。

最近は足が弱くなってきた父王の代わりに遠方の行事に出ることもありますが、その度に王族や貴族から「娘を是非あなたの嫁に」という手紙が宛名文字を読むだけで疲れてしまうくらい大量に届く始末です。



本当にどこに出しても恥ずかしくない立派な王子様に育ってくれたんです・・・一つを除いてはですが。


本来ならそろそろ良い女性を見つけて後々王座を継ぐ準備を進めたい所なのですが、この国の王子様の 体質上 そうもいかないのが現実です。

周りの国から縁談を急かされ国中の者が王子様への賛辞と期待を寄せる中、秘密を知る王様と世話役の女剣士、家臣の数名は胃をキリキリと痛めていました。


王様も悩み過ぎか歳のせいか段々と白髪が増え、王子様の秘密を知る者の中には頭のフサフサが随分と寂しくなってしまった者や、性転換の呪いや秘薬の研究をする者まで現れる始末でした。


そしてさらに困ったことに。





「王子!」


「やあ!また来てくれたのかい?相変わらず貴女の肌は白くて綺麗だね」



王子様と隣国の姫様は成長につれ更に仲が良くなってきていました。

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