『浴衣男子のすゝめ』 ~男浴衣をカッコ良く着よう、着せよう~
浴衣の季節になりました。毎日暑いですね。
最近はお祭りなんかに行くと浴衣を着てデートする女の子が増えました。僕はと言うとデートする相手なんてこの方縁がないので、通り過ぎる浴衣デートのカップルを羨みながら眺めるだけですが……
ここで気になることがあります。
女子がちゃんとした浴衣を着てるのに、男子がTシャツに短パン、サンダルと言う全くやる気の感じられない格好をしているカップルの存在です。
両者ともしっかりした浴衣をきれいに着こなしているカップルは見ていて心が華やぎます。
慣れない浴衣をちょっと着崩れながらも頑張って着ている若いカップルは微笑ましく応援したくなります。
男子が作務衣の場合はもうちょっと頑張れと思います。
男子がやる気ない格好をしているカップルは……
普段着慣れていない女子が浴衣を着るのは大変なんです。ちゃんとした浴衣を一揃え買ったら結構しますし、デートで着るのにも勇気がいります。慣れない下駄や草履は足が痛いです。浴衣女子は好きな相手のために頑張っています。それに応えるためにも、男子の方もちゃんと浴衣を着るべきだと思うんですよね。
これはあくまで僕の意見ですが、浴衣デートと言う羨ましいシチュエーションでやる気ない格好をしてくる男子とは別れた方が良いです。今すぐ別れましょう。お祭りで待ち合わせしていてTシャツ短パンで男子が現れたら、その場で即刻振るべきだと思います。
折角の浴衣デートなのに男子がTシャツ短パンでやってくる。そういう悲劇を防ぐためにも女子の方から男子に浴衣を着るようにアプローチしておくのが良いです。
「あ、あんたが浴衣を着るっていうんなら、私も浴衣着てあげても良いんだからね!」
ぐらいの勢いで言ってやったら男も大人しく浴衣を着てくれるでしょう。それでも着ないなら別れた方が良いです。
さて、話はそれましたが、今回は女性向けに、普段から着物を着ている男から男目線で男子の浴衣の着方をおさらいしたいと思います。
従いまして、この記事は基本的な男の浴衣の着方を知っている人に対して、
「彼氏・旦那さんにカッコよく浴衣を着せてあげよう!」
と言う方法をお伝えする主旨になっています。
もちろんこれから浴衣に挑戦したいなと言う男性にもご参考になると思います。
着方の基本については検索すれば写真やイラスト付きでわかりやすく解説しているサイトが色々見つかると思いますのでそこを参考にしてください。
男着物や浴衣の事はすでに知っていても、女性の着物とは根本的に着方が違うって言う事は実際に着て動いてみないとわからないものです。
素人流の僕が偉そうに言うのも難なのですが、ここにあげる方法は特に着崩れ防止に結構役に立つと思いますのでご参考になれば幸いです。
まず初めに、一番大事なのは「腰紐を使わない」という事です。
着付けができる女性には特に「えっ?」と思われる方が多いと思いますが、男の着物には基本的に腰ひもは不要です。中に襦袢を着る場合でも前で合わせて押さえておいて、その上から着物を合わせて帯を締めるだけで大丈夫です。
角帯はこってり糊付けした正絹の糸をガチガチに織り上げた布でできていて、幅が約9cmで身体に3重に巻く長さがありまして、木綿でできたひょろひょろの腰紐とは摩擦力も保持力も全く違うんです。
腰紐は細く柔らかいので角帯よりもきつく締められますが、腰ひもをきつく締めた上から角帯を締めると帯が腰紐に覆い被さっているだけで角帯の摩擦力が効いていない状態になります。
この状態では動いているうちに腰紐が浴衣の生地に引っ張られてよじれたりずれたりしてしまいます。
「帯はちゃんと締めているのに、歩いているうちに衿がはだけて腰紐が帯からはみ出してくる」
というのはこういう理屈で、実は腰紐をしっかり締めれば締めるほど着崩れやすくなるんです。
と言う訳で、着るときは着姿を整えた状態で腰ひもを緩めに締めて、帯を締めるときに一巻き一巻きがっつり締めて、最後に腰紐をほどいて抜いてしまうと良いです。
慣れれば最初からいきなり帯を巻いてしまってもかまいません。
メジャーになっている角帯で話をしましたが、兵児帯を使えば何の問題もない話で、がっつり巻いて蝶々結びすればそれだけでOKです。
本来は浴衣には兵児帯をするものなので、浴衣を着るときの選択肢に入れて貰っても良いと思います。
次に、「帯は『臍下丹田』の位置で締める」という事です。
この時期になると着物業界の中で男浴衣の帯の高さ論争がにわかに起こりますが、あんまりピンとこないんですよね。今の若い人は昔の人と腰の位置が全然違いますし、人によって適正な帯の位置も変わってきますから。
本人の「この位置で着たい」という意思も尊重すべきですしね。
とは言え何の基準もなく位置は決められないので、とりあえずは一般的に適正な位置で着てみるのが良いでしょう。
『丹田』と言うのは気功の理論で人間の『気』が集まる場所の事で、『臍下丹田』は文字通りおへその下あたりにあります。
この場所は人間が立っている時に重心になる位置であり、身体をねじっても骨盤で固定されている場所でもあります。つまり人間工学的に帯を締めるのに最適な位置と言う訳ですね。
よく『おち〇ち〇の付け根のちょっと上』というような言い方がされますが、品性と説得力の面で『臍下丹田の位置』と言った方が良いと思います。
男の帯は前が下がっている方が粋と言うのが一般的ですが、締めるときに気にする必要はありません。締めた後に両手の親指を帯に差し込んでぐっと押し下げればOKです。着ているうちに「帯が上にずれてきたな」と感じるときも同じようにすれば元に戻せます。
最後に「晒しを巻く」という事です。
浴衣の下はVネックのTシャツかランニングか裸かという選択肢が一般的ですが、胸をはだけたときにTシャツやランニングが覗くのはカッコよくないし、裸もよっぽど体を鍛えていない限り見苦しいだけです。
Tシャツは腕を動かしたときに上にずれやすく、裸だと汗で張り付いて、それぞれ着崩れる要因にもなります。
晒しだったら胸がはだけても雰囲気があって良いですし、体形を補正して身体と浴衣の摩擦力を増して帯を安定させ、汗で浴衣が体に張り付くのを防ぐ効果があります。
巻くのが面倒なことを除けば良いことだらけですね。
詳しい巻き方は浴衣の着方と同じく検索して調べてみてください。
ちなみに下半身の肌着はステテコ一択です。最近は『見せるステテコ』が沢山売ってありますので、着る浴衣に合わせて選ぶと良いですね。
以上の三点のうちの二つでも実行すれば着崩れが圧倒的に少なくなり、浴衣をカッコよく着こなす手助けになると思います。
それでも着慣れていないとどうしても着崩れちゃうことがあるかもしれません。
着崩れてしまった時に直す手順は結構簡単で
1.帯に親指を差し込んで適正な位置に押し下げる
2.左身頃の裾側から右手を差し込んで右の衿先を体側方向に引く。
3.左の衿先を体側方向に引く。
以上です。衿先を引くときに背中心がずれないように気を付けてくださいね。
それでは、浴衣女子の皆さま、今年こそ彼氏や旦那に浴衣を着せてデートしましょう。
ご高覧頂きありがとうございました。