004 マッドサイエンティストとレズビアン
どうも、クロジャです。
特にご報告、することはないので、どうぞ。
「あ、起きました?」
目が覚めると最初に目に入ったのは、見知らぬ女性だった。
パッと見はどっからどう見ても、美少女なのだが、顔には少し
あどけなさが残っていて、活発そうなイメージを持たせた。
そんな奴が何故だか、椅子から身を乗り出して顔を近付けてきた。
...近い邪魔鬱陶しい。
とりあえず落ち着いて、現状確認。
「...あーっと、とりあえず聞くが...お前は誰だ?」
「へ?誰だってひどいじゃないですか。まるで他人行儀みたいですよ東雲様?」
「いや、他人行儀みたいってーーー」
あ?今なんつった?
僕名前を何で知っている?
それに...東雲、様?
まさかとは思うが...。
「...ロロア、か?」
「何で疑問形かは分かりかねますが...とりあえず。はい、私はロロアですよ」
そう言って、近付けてきた顔をヒュッと引っ込ませ、ニコリと微笑んだ。
ちょっと待って理解が追い付かない。
「は?...は?」
「いやかなりのアホ面で、二回もは?ってなんですか...」
目の前にいるコイツが...ロロア?
はっきり言って嫌だが...この人間がロロア?
訳分からん。
「...いまいち納得いかんが、とりあえずは分かった。それであの後どうなったんだ?」
「あ、そうですよそうですよ~!!大っ変だったんですよ!!私!!」
そう言ってロロア(仮)は、こちらを少しジーッと睨んできた。
「東雲様が出血多量で死ににかけていたのを、助けようと、ほんっと、ほん...っとうに疲れますけど!!人間の姿になって、近くの。ほら、あの場所から見えた所ですよ、今はそこにいるんです、それで、まぁ日本で言うところの、病院みたいな所に連れてきたんです!!本っっっっ当に疲れたんですよ!?」
...なんだって?
「この人間の姿になるのって、とんっっでもない量の魔力を使うんで本っっっ当に疲れるんですよぉぉ!?」
とりあえずロロアが、ワーワーと叫び出したので、面倒なので放置、現状確認が最優先。
...先程、ロロアが言ったようにここはどうやら病院、らしい。
周りを見渡すと、確かにそれらしい空気が、漂っているし、白い服を着た奴が、ベッドの上で寝ている。
「あー、はいはい...で、お前のその状態はいったい何なんだ?」
先程も言ったが、端から見れば美少女だが、僕からしてみれば、全員同じ。
なので、こいつの今の状態は、僕にとっては...まぁ、最悪の一言に尽きる。
「先程も言いましたが、人間の姿になったんです」
「人間に、ねぇ...。どうしてだ?」
そういえば、魔力を大量に使うからー、とか。疲れるんですよー、とか、言ってたんだっけ。
ただ、どうしてなったのかが、分からん。
「...東雲様って...意外にバカだったりします?」
「いや、なんで罵倒されるんだよ」
なぜ、急にバカにされなきゃならないんだ。
「...ハァ、頭が回るんだか、回らないんだか...。まぁ、いいです」
僕の上に、いつの間にか登っていたロロアは、諦めたような顔をした。
...地味にコイツ重い。
「あの後、大量出血で死にかけていた東雲様を、この場所まで連れてくるのに、機械のままでは流石にと、思ったんですよ。それで、変身魔法の上位互換である、変化魔法を使ったんですよ。それで、走ってここまで、とは行かないので、ここでも加速魔法を使いました」
...新しい情報が、ドンドン頭の中に入ってくるもんだから、整理がつかない。
えっと?
「ーーーってか待て、今、一番の問題に気付いた」
「はぁ...?何ですか?」
こんな場面で何なんだけど、今まで忘れていたことに気が付いた。
「僕の腕は?どうなった?」
そう、《ライオーク》の手によって、切断された腕はどうなったのだろうか?
「...?どうなったって...ちゃんとあるじゃないですか」
「?」
そう言われて、右腕を見ると。
あ、あった。
傷痕一つ残らない形で。
「...切断されたのって、もしかして夢だったとか?」
「あぁ、いえ。右腕は確実に切断されましたよ」
「じゃあ、どうしてーーー」
「残っているんだ、ですよね。簡単ですよ、この世界は剣と魔法の世界何ですよ?腕の一つや二つぐらい、余裕で再生させられますよ」
あ、そ。
言い方が雑すぎる、なんだ腕の一つや二つぐらいって。
まぁ、いっか。
「...そういえば、あれからどれくらい立ったんだ?まさか、一ヶ月立ってるとかいう、オチはなしで」
「いや、そんなに立っていませんよ。せいぜい二時間ぐらいです」
腕を切断されて、二時間で復活できるって...この世界の魔法どんだけ便利なんだよ。
「色々と聞きたいことがあるんだけど...とりあえず、いくらだ?」
「...?」
ロロアは頭の上に、ハテナマークが三つほど綺麗に、ちょん、ちょん、ちょん、と、浮かび上がった。
ご丁寧に目視できるようにされている、魔法か?
「いや、治療したんだろ?だったら金がかかるのは当然じゃないのか?...あー、それともこの世界の、病院って金がかからないとかか?」
「あ、そういうことでしたか。そりゃあモチのろんでかかりますよぉ♪」
なんでテンション高めなんだよ。
情緒不安定かよ。
「そうか、じゃあ、いくらーーって、そういえば、この世界のお金持ってないわ」
「あ、安心して下さい。お金は事前にこちらでーーー」
「払ってくれたか、それとも用意してくれたのか?」
使えない機械だと、思っていたが、意外に使えーーー
「ーーー用意出来るわけないでしょう」
「開き直るな屑鉄」
ーーーる訳ないよな。
そりゃそうだ。
「く、屑鉄!?それは流石に酷くはないですか!?」
「無理矢理ここの世界に、呼び出しといて、上空から落とすし、《ライオーク》戦で、窮地を脱したから、落としたことは許してやろうと思ったが、そもそもの話、お前がミスしなきゃあんなところに落ちなかったし、戦うこともなかったしな。
以上のことからお前は、屑鉄だ」
「ぐはっ!!」
そんなやり取りをしていると、ガチャ、という音が聞こえてきた。
「さて。例の患者は、っと」
音の方へと振り向くと、僕と対して変わらない歳であろう、人物が扉から出てきた。
身長はだいたい、160~170cmぐらい。
青色の長髪を床まで、伸ばしており、目元を見ると、かなり濃いクマが見える。
他の有象無象の奴等とは、引けを全く取らないほどのスタイルなのだが、なぜかマッドサイエンティストに見えるのだから、怖い。
そして、そのマッドサイエンティストがこっちに、近寄ってくる。
嫌な予感。
「あ、起きてたね。どうだい?腕とかに支障は出てたりするかい?」
「...ロロア、代わりに説明しとけ。大丈夫だ、代金はいくらだ、とな」
「いや、なんで私がーーあ、そういえば、そうでしたっけ。分かりましたよ」
どうやら、今の言葉だけで伝わったらしい。
勘違いじゃなきゃいいが。
「東雲様は、大丈夫だ、代金はいくらだ、と聞いていますよ」
「シノノメ...?あ、ひょっとして、この患者の名前かい?シノノメ君、というんだね。それで、えーと...腕はもう大丈夫で、代金のことが知りたいと」
おい、僕の個人情報。
「はい、いくらですか?」
「どうして君が、答えているのかは...うーん、そうだね、おそらくだが...シノノメ君は《狂喜》との戦いで、恐怖が止まらないのか、それとも声帯をやられたか...。だけど多分どれでもないね、恐怖による場合は、《狂喜》の名前を出しただけで体が、震えてしまうし、声帯をやられての場合は、まず私が見逃さないからね。だからおそらく...人嫌い、なのかな?」
ロロアの質問は無視して自分の意見を、言い出し始めたマッドサイエンティスト。
...コイツはメンタリストか何かか。
「...はぁ、ロロア、いい。もう僕が話す」
「最初からそうして下さい」
「おや、シノノメ君から話してくれるのかい?それはありがたいね」
胡散臭いな、コイツ...。
今、理解した、苦手なタイプだ。
「...その前に、一つ。もしかしたら、人見知りだったかも知れないんだぞ、僕。それで、どうして人嫌いだと?」
「ん?あぁ、そのことね。簡単だよ、少し見せてもらっただけだから」
「...見る、ねぇ」
能力、というか魔法みたいなものか。
何を見て、何を知ったのか。いや、知ってしまったのかは...分からないけど、勝手に見られるのは、気分的に最悪なんだが。
「さて、そっちの質問には答えたんだ。人嫌いだろうとなんだろうと、こっちからも質問させてもらうし、答えてもらうよ」
「...どうぞ」
「あ、私外に行ってますねー」
逃げやがった。
面倒事になると分かって、逃げやがった。
「あの娘も、あの娘で、後で聞きたいことがあるんだけどー...ま、とりあえずは、っということで。シノノメ君、まず最初に聞きたいことがーーというか、これを前提に話させてもらうんだけど...シノノメ君、君はこの世界の人間じゃないよね?」
もうバレた。
意外とすごい奴なんだな。
「あぁ、そうだ。とは言っても、来たばかりだけどな」
「否定しないのかい?」
「...?何故?」
「てっきり私は、知られたら困るものだと、思っていたからね。ま、それはそれで、話を進めやすいし、良いけどね」
どうでもいいから、早く進めろ。
時間の無駄。
「ま、とは言っても私が聞くのは、一つだけだ。
ーーーシノノメ君、取引をしよう」
「...物による」
取引、取引ときたか。
面倒なことじゃなきゃいいが。
「なに、そう難しいことではない。そちらにもメリットがあることだ。...君の体を研究させてほしい」
はい、面倒事になった。
「拒否権は?」
「それは勿論あるよ、ただ、君からまだ治療代を貰ってないのだけど...?」
...取引なんかじゃなくて、ただの脅しじゃん。
さてどうしよう。
「...具体的に」
「研究と言っても、体を解剖したり等のことはしない。ただ、見せてもらいたいだけだ」
「...見てどうなる」
「...少し、長いよ?」
うわぁ。
長いのか、めんどくさいな。
「...なるべく、手短に」
「それじゃ、話すよ?」
◻︎◇▫︎◻︎◇▫︎
どうも、皆様、ロロアです。
ただいま私は、知らない道を歩いております。
どうしましょう、迷子、という奴でしょうか?
いえいえ、私に限ってそんなことはありません、私は機械なのです、迷うなんてこと絶対にありません。
...そんなわけ無かったです、迷子です、完全に、迷子です。
どうやらここは、路地裏みたいです。
「それにしても、あの人。なぜだか、少し怖いと思ってしまうのですが...どうしてでしょう?」
あの病院みたいな所の人、何でしょうか?
そんな事を考えていると、いつの間にか路地裏を出ていました、良かったです。
しかし、その場所も、私が通った道では無さそうです。
うーん、いよいよどうしましょう。
...あ、そうです。人に聞けば良いじゃないですか、名案です。
周りに人がいないかと、キョロキョロと見渡すと...丁度よく、こちら側に来る数人の男性がいました。
「すいません、そこの男性方、ここは一体どこなんでしょうか?」
「あ?」
「それよりもさぁ、君可愛いねぇ、どこの国出身?」
「頭、会った瞬間ナンパしやがる、どうせフラれるのに」
「ぎゃはははは!!違いねぇ」
失敗しました、この人達は所謂、盗賊みたいな人達みたいです。
逃げた方が良さそうですね。
「あ、いえ、何でもないです。すいません、お手数かけました」
「いやいや、ちょっと待とうぜ。ここで会ったのも、何かの縁だしさぁ?」
そんな縁はありませんし、もし万が一、億が一、兆が一、あったとしても、確実に断ち切ります。
それに話し方が、とてもウザいです。
「すいません、急いでいるので」
「そっちから話しかけといて、そりゃねぇよ。な?少しだけだからさ」
「おいおい、嬢ちゃん、頭の言うことは、聞いた方がいいぜ?頭に歯向かったら、嬢ちゃんの家族や親戚、友人が殺されちまうぜ?」
家族...は、いませんし、親戚...も、いませんから、いたとしても...東雲様ぐらいですかね。
私が、ここで言うことを聞かなかったら、東雲様が...いや、ありませんね。百パーセントあり得ません。
「ご心配ご無用です。多分、というか確実に、あなた達ごときでは、到底敵いませんよ。むしろ返り討ちに遭うだけですよ?」
「あ?言わせておけば、言いたいこと言いやがって。そんなに可愛がられたいのか?」
しまった。つい、反論してしまいました。
あまりにも下卑た視線を、浴びせられるものですから、つい。
「おい、お前ら」
「へい、頭」
「嬢ちゃん、バカだねぇ、どうしてわざわざ頭の、怒りの琴線に触れるようなこと言うのかね?」
「ま、俺達にとってもラッキーだ。久しぶりの上玉だからな。たっぷ~り、可愛いがってやるよ」
...ヤバイですね、囲まれました。
人間の姿を解こうにも、丸一日以上は立たないといけませんし。魔力ももう、すかすかですし。
流石にマズイです、自分で招いたミスとはいえ、ここまでなるとは、思いませんでした。
誰でもいいので、助けてください。
「無駄な抵抗は、しないことをおすすめするぜ」
「それは、こちらのセリフですわ」
その一瞬、瞬きするまさに、その一瞬のこと。
目の前にいた、頭と呼ばれていた男性は、
ーーー突然、襲いかかってきた斬撃に襲われ、吹き飛ばされていった。
「グハッ!!」
「頭!?」
「クソッ!!一体誰ーーーゴハッ!!」
「な、何が起こっていやがーーーガハッ!!」
「汚ならしい。自分の身分すら分からないのかしら、このゴミ屑どもは」
「なっ...」
瞬き一回、二回しかきっと、私はしていません。
しかし、その間に起きたことは、とてつもないことでした。
そして、それを起こした張本人は、こちらの方を向き、
「大丈夫かしら?もう少しだけ待っていて下さる?とても可愛らしい貴女を待たせるのは、わたくしとしても嫌なのだけれど...このゴミ屑、塵芥共を先に始末しないといけませんから」
そう言って、残った一人に向かって、持っていた剣を向けます。
さっきの斬撃は、どうやらこの剣でやったみたいです。
「ひ、す、すまなかった。立ち去る、立ち去るから、頼む、助けてくれ」
「立ち去るから助けてくれ?随分都合の良いことを言いますわね。あなた達は、そこにいる子が同じことを言ったら、助けてあげましたの?」
「そ、それは」
「あぁ、もう良いですわよ、何も言わなくても。あなた達がどう考えていたか、どうかはもうどうでもいいんですので」
「や、やめてくれ、しに、死にたく、死にたくない」
ーーーこのゴミ屑、塵芥共を先に始末しないといけませんから
この人は、この人達を殺す気なんだ。
それは、それだけは、何としてでも、避けなければ。
「ちょ、ちょっと待って下さい!!」
「あら、どうしましたの?...もしかして、貴女自身で殺りたいんですの?それならそれで、貸してあげますわ」
私の前に出される、剣。
でも、そういうことではありません。
「違います。この人達を助けてあげてほしいんです」
「...あなた方が言わせているんですの?」
私を助けてくれた女性は、盗賊みたいな人達に殺意の籠った視線を向けます。
私に向けてではないとは、分かっているのですが、恐怖で身がすくみます。
「ち、違います。私が、私の意思で、言っています」
「...どうして助けたいと、思うんですの?先程まで貴女に、下卑た、気持ちの悪い目線を送りながら、あまつさえ連れ去ろうとさえ、していたんですのよ?そんな奴らを...生かすんですの?」
「確かにそうです。けど、だからと言って、人を殺していい理由にはなりません」
人が死ぬところはもう、見たくありませんし。
「...分かりましたわ。ーーさっさと消え失せなさい、わたくしの意志が変わらない内に」
「あ、ありがとう...!!」
最後にその言葉を残し、他の人達を抱え、立ち去っていきました。
「ふぅ...」
「あ、ありがとうございました」
「わたくしは当然の事を、したまでですわ」
「それでもですよ。お礼は...」
「お礼...そうですわ、良いことを思い付きましたわ。貴女ーーお名前はなんというんですの?」
そういえばまだ、名乗っていませんでした。
「私の名前はロロアです」
「そうですの、いいお名前ですこと。貴女が名乗ったんですもの、わたくしからも名乗りますわ。
ーーーわたくしの名前は、リリイ・アラァと言いますの。
少し、呼びすらいでしょうから、リリイで良いですわよ?」
リリイ、アラァ?
どこかで...聞いたような?
「それで、ロロアさん。貴女にお願いがあるんですの」
「え、あ、私が出来ることであれば...」
「大丈夫ですわ、無理強いはしません。ロロアさん、私の所に来てくれないかしら?」
「...えっと、どういうことですか?」
「あぁ、ごめんなさいね。簡単に言うと、私の...愛人になってくれないかしら?」
「...はい?」
東雲様、大変です。
私を助けてくれた、女性は。
どうやらレズだったみたいです。
読んで下さり、ありがとうございます。
面白かったら幸いです。ありがとうございます。
また、評価や感想。誤字脱字変更ミス報告などをして頂けるとありがたいです。
それと、キャラなど細かい情報が欲しい場合、質問していただければできる限りの情報を出します。
よろしくお願いします。
では、また。