第2話 時間とは尊いもの
どうも、クロジャです。
特に、報告することはないので、どうぞ。
朝ごはんが食べ終わり、やることもないのでゆっくりしていると日稲月が急に、なんの前触れもなく一瞬。文字通り一瞬で僕との距離を詰めてきた。(僕との距離は約一メートル弱)
まぁ、さすがは全運動部から助っ人に呼ばれるだけのことはある。
「………なにか用か」
「……みさと」
「………?」
目だけで次を促すようにするが、なぜか黙りこくってしまった。
なんだ?……不気味だし怖いんだが。
「…………用がないなら朝ごはん食べたんだから帰れ」
「用なら。用ならあるぞ⁈」
「なんで言った本人が一番驚いてんだよ……」
なんだか少し日稲月の様子がおかしい。
………待てよ、あいつが来てから何分経った?
いまの時間は・・・7:45。つまりコイツが来てから、もう一時間以上は経過している。
気付いた奴もいるかもしれないが、今のコイツのキャラは【元気っ子】になっている。
コイツは三十分から一時間に一度、キャラが“強制的に”変化する。
ちょっと僕もなんとなく経験から分かったことなので詳しいことは分からないし、いまいち自分でも何を言っているのか分からないが。
「み、みさとは……その……」
「………」
日稲月はよくよく見ると体つきはしっかりしていて、筋肉も適度についている。
それでいて世のだいたいの女性が羨むほど綺麗に整っている顔。
そんな奴が迫ってきて思わせぶりに黙ってしまったら、男として生まれたからには少しドキッとしてしまう。
だが日稲月はそんなものをぶっ飛ばしてしまうほど残念な奴なので、安心して話を聞ける。
まぁ、それ以前の話でもあるのだがそれはさておき。
「さっさとしてくれ」
「分かってる……しかし…」
……流石の日稲月といえど溜めすぎな気がする。
どうやらふざけた話ではないらしい。
「………はぁ……分かったよ。言える時になったら教えてくれ」
「……いや、大丈夫だ‼︎」
「だったら一体何だってんだ?」
「うぅ………」
言うのか言わないのかどちらかにしてほしいのだが。
まぁ、いつもの僕だったら待つなんてのはありえないが時間もそこそこあるし、真面目な話そうなので待つことにする。
「そ、その……」
日稲月の方を見て目で先を促す。
「み、京は……」
「あぁ」
日稲月は普段ふざけているが根は(多分)真面目なのでこういう場面では、(おそらく)結構重大なことを言ったりする。(しかし、七割はやっぱりふざけている)
でも、一応真面目に聞いてみようと思うーーー
「き、筋肉がなさ過ぎないか⁉︎」
ーーーと思ったがやっぱりコイツはコイツだった………。
一体なにを言い出すんだコイツは。
「無くていいだろあんなの」
「あ、あんなの⁉︎筋肉はな!自分の体を動かしたり守ったりするすごい奴なんだぞ⁉︎」
あ、訂正。【元気っ子】じゃなくて【元気っ子+筋肉大好きっ子】だ。
まったくもって、意味が分かんねぇ。
「あっそ、だからと言って必要最低限あればいいだろ」
「ぐぬぬ……」
「というかもう帰れよ。朝ごはん食べるだけ食べただろ」
「おい、話をそらすな。……まぁ、でも…ふむ。たしかにそろそろいい時間だな」
……いつもの日稲月なら「え〜〜〜」とか言うのだが………。
今回の日稲月のキャラは意外と話がわかる奴らしい。
ラッキーなのやらアンラッキーなのやら。
「そう思うなら帰れよ。というか二度とくるな」
「そこまで言うか……まぁ、いい。分かった。じゃあ、また後でな」
「絶対に話しかけてくるなよ」
「辛辣過ぎないか…?」
そう言いながらも家から日稲月が出ていった。
時間を確かめると7:58分だった。
……ゆっくりする筈だった時間がほぼ全部削られた…。
寝起きとは違う意味で泣きそうになる東雲だった。
◻︎◇▫︎◻︎◇▫︎
うちの学校は四学共大学校。略して四大と言い比較的、というか明らかにデカイ。
小中高大一貫となっており、部活やイベント(学園祭や体育祭など)はもちろんの事。多方面に有名なので、全校生徒は数千人とかよく分からないほどの規模を誇る学校となっている。
もちろん小学生から大学生までずっとこの学校を通う人もいる……が、殆どの人が途中から入ったり別の所へ行ったりしているので、小中高大ずっと通っている。という人はあまりいない。かくいう僕も中学生になってから通い始めた。
そんな学校に通うようになった理由は、単純に学費が安かったから。
だが今現在の時点で、この学校に通って良かったと思ったことは一度たりとも無い。
……なんでこの学校を選んだんだろう、僕。
小中高大一貫なので、それぞれ学校が分かれている……と思いきやそうではなく超超超巨大な学校となっている。
ただ何しろデカイので、入って間もない生徒はよく迷子になるので一週間かけて建物の中を覚えさせられる。
……いや、本当になんでこの学校を選んだんだろう、僕。
そう少し現実逃避気味に歩いていると、学校に着いた。
先程言ったようにこの学校は小中高大一貫なのだが、面積の関係で小学校、中学校、高校、大学をそれぞれ分けることができないらしい。
ただそれでも大きいものは大きいので超巨大な学校の玄関口(多分)を入って手前から、小学校、中学校、高校、大学になっている。
……まぁ、この学校が出来てから未だに使われてないところも結構あるがそれはさておき。
中学校までの距離は、玄関口から入って約三百メートルちょいぐらいのところにあるのでそこそこ、というか大分距離があるので普通に歩いても一〜二分間ぐらいは余裕でかかる。
なので最終登校時間の8:30分に間に合わせようと、ドタバタと走っていく生徒が多数。いや、大多数いるのであちらこちらで騒動が起こることも珍しくない。
この騒動というのは8:25分〜8:30分の五分間の間で起きる日常茶飯事みたいなものだ。
まぁ、つまり何が言いたいかというと………
ーーー僕もちょうどその騒動に巻き込まれてしまっているのだ。
日稲月のせいで時間が大幅に削られてしまい、一通りの準備をして家を出た時にはすでに8:10分だった。
家から学校までの距離的に運動部とかに入っていない人が全力で走ったら、だいたい最低でも五分間ぐらいかかる。
しかし体力の無い僕は走ったら逆に疲れて動けなくなるので、歩いて行っているので十五分間弱はかかる。
そして現在。
時刻は8:27分。全力で走ればまだ間に合う時間なので、玄関口から学校まで人が溢れかえっている。
どのくらいかというと………
「早く行けって‼︎」「邪魔邪魔‼︎」「どいてって〜‼︎」「痛っ⁉︎誰だよ、俺の足踏んだの‼︎」「ぐぇ⁉︎」「きゃ⁉︎足触んないでよっ⁉︎」「お前俺より学年下なんだから俺に先行かせろよ‼︎」「はぁ⁉︎あんたアホか⁈」「んだと⁉︎」「あぁもううるさいわね‼︎」「さっさと行け‼︎」
これで全体の一割満たないのだから驚きだ。
そして何よりも喧しい。
その丁度ど真ん中ぐらいのところにいるものだからギュウギュウに押し潰されてしまった。
この状況を打開する方法はただ一つ。
ーーー諦めてただひたすら待つ。
やっぱり諦めが大事だということだ。
……うぇ………人酔いした…。
◻︎◇▫︎◻︎◇▫︎
流されている途中、チャイムが聞こえたが状況が全然変わらないので(むしろ酷くなった気がする)どうしようもないので無視した。
気付くと周りには誰もおらず、だだっ広い中学校の玄関にポツンと立っていた。
時刻を確かめると8:35分ぴったりだった。
靴を上履きに変えて自分のクラスへと向かう。
いや、訂正。
向かおうとした……のだが。
「ちょっと待ってくださる?」
なぜか一人の女子生徒に話しかけられた。
……あ、またまた訂正。
話しかけられた気がしただけなので別の人かもしれない。
ていうことで無視。
「ちょ、ちょちょちょちょっと‼︎」
今回のことは遅刻になるのだろうか。うーん。
「ちょっとー‼︎あ・な・た‼︎貴方ですわよ‼︎」
微妙だな。確率は五分五分ぐらいか。
「いい加減に………しなさい、ですわ‼︎」
ブワァ。
そう、ブワァ。
何の効果音かというと僕が宙に舞った音だ。
スケートとかダンスとかそういう綺麗な類のものではなく。
どちらかというとトランポリンとかで放り投げられた感じだった。
これ呑気に話してるけど、地面からだいたい二メートルぐらい離れてるからちょっとばかし驚いてる。
僕、人生で初めて鳥の気分味わえたかもしれない。
しかし重力は今日もちゃんと働いているので、僕は只今落下中。
あ、死ぬ。
いや、死んだだろ。コレ。
ちょっとこれはヤバイかもしれない。
ーーーいや、でも。まぁ……別にいっか。
僕の人生ロクでもなかったし。
どうだっていいかなー。
と、半ば人生を放棄していると誰かにキャッチされてしまった。
「……ハァ…先が思いやられますわ………とりあえず大丈夫ですの?東雲さん」
そこにはいたのはさっきの女子生徒だった。
というかお姫様抱っこされているのだが(コレ確か少女漫画だと多分逆)。
……………まぁ、どうでもいい。
「しののめさーん。大丈夫ですのー?」
とりあえず目の前の問題を片付けなくては。
なんか朝っぱから色々ありすぎな気がする。
きっと僕は今、死にそう顔をしているに違いない。
はぁ…メンドくさい………。
読んで下さり、ありがとうございます。
面白かったら幸いです。ありがとうございます。
また、評価や感想。誤字脱字変更ミス報告などをして頂けるとありがたいです。
それと、キャラなど細かい情報が欲しい場合、質問していただければできる限りの情報を出します。
よろしくお願いします。
では、また。