第7話 先駆者《パイオニア》
翌朝目覚めた俺は、まずは眼に映る天井が自分の部屋の天井である事を期待したが昨日の夜見た宿屋の天井である事にガッカリし、メニューを開きログアウトできるかどうか確認して落胆した。できるとは思ってなかったが期待は一応して見てはいたのだ。
すると、メニューの一部に変わったところがある事に気がつく。
_______________________________________________
07:08 2日目
アイテムポーチ
クエスト
フレンド
ログアウト
Web
掲示板
GMコール
_______________________________________________
日付の部分が2日目になっている。閉じ込められてから何日経ったのかわかりやすくするためなのか、あるいは元からの仕様で自分がこのゲームを始めて何日目なのかわかりやすくするためなのかは、分からないが今となっては閉じ込められて何日経ったか、を確認することができるこのシステムはありがたい。
流石に今頃、世界中で大騒ぎになっているだろうからなんらかの保護などはしてあると考えられるがそう長く閉じ込められているのは絶対に良くはないはずだ。
そんな事を考えながらステータスを見ると、今度はまた昨日見た時とは違うことが書いてある事に気がつく。
_______________________________________________
カイゲン
称号“先駆者”
HP100/100
MP100/100
・【槌マイスター】
・【木工職人】
・【鍛治職人】
・【道具職人】
・【鑑定】
_______________________________________________
は?称号?先駆者と俺の称号欄に書かれており、昨日は称号なしと書かれていたはずだった。
パイオニアをタップすると
_______________________________________________
称号“先駆者”
所持者 カイゲン
全プレイヤーの中で最も早く何かを成した事で知名度を上げプレイヤーに送られる称号。
効果:NPCとの交渉の成功率が上昇する
_______________________________________________
知名度が上がるような事をした覚えは全くなくこれはバグ的な何かであると、思いながらも自分の部屋から出ると女将がちょうど朝食を運んでくれているところでバッタリ出くわす。
「あ!アンタかい!ちょうどよかったよ!
あんたの朝食には少し色をつけておいたよ!」
そう言いながら、ワゴンから俺にパンとサラダの乗ったプレートを俺に渡す。
ちなみに隣の部屋でまだ寝ていたリュウは部屋に侵入されたあげく叩き起こされていた。
ちなみにこの宿の名前は『ニワトリ亭』…
おそらく由来は女将だろうなんて、事を考えながら俺は部屋に戻り朝食をとる。
そして、朝食を食べ終えた後に昨日聞いた食事効果について思いだしステータスを確認すると、[食事効果:自然回復力上昇 残り6時間]
という表示が追加されていた。
昨日、リュウの話ではPTを組んだあるプレイヤーが採取ポイントと呼ばれるポイントを発見しアイテムである[リンゴ]を発見したらしくその場で食べて見たらしい。
すると、食事効果として[スタミナ上昇]が付与されたらしいのだ。この世界において満腹度や腹減りと言ったゲージやシステムは昨日一日過ごした中では存在していなかったが、食事をする事でメリットを得ることができるのは確認できた。まぁ、スキルの中で生産の一部に料理系のスキルもあったからおそらくプレイヤーでも所持している面々がいるだろう。
なんて事を考えながらリュウと宿の出入り口で落ち合い、今日もひとまずは北を目指して探索しようと町を出ようと歩いていると、そこらじゅうから俺へと視線が向けられていた。
リュウもさすがに何か感じ取ったらしく警戒はしていたが、その視線は歩いているプレイヤーだけでなく市場に店を出しているNPCからも向けられており、
「ねぇ、ひょっとしてあの人じゃない?」
「あぁ、例のあの人なんじゃないか?」
なにやら、ヒソヒソ話す声も聞こえた。
そして、この視線が何故俺に向けられているのか全く分からない俺であったが町のゲートのすぐ前に立てかけられていた立て札を見て俺は理解した。立て札には紙が一枚貼り付けられており、その内容は
『朗報!プレイヤーは死んでも死に戻りできる!
本日(ゲーム時間1日目)プレイヤーの死に戻りが確認されました。体験者であるプレイヤー、カイゲンさんにお話を伺ったところ多少の倦怠感はあれど死に戻ることが確認されました。
カイゲンさんありがとう。
情報屋 シキケン』
と書いた紙と、どこかで見た似顔絵が貼られていた。心当たりがあるプレイヤーが1人思いたり、恥ずかしさからそのプレイヤーに文句を言いたい気分だったがここで騒ぎを起こすとさらに悪目立ちするということを俺のわずかに残った理性が主張していたため、俺はその立て札に貼られていた紙を引き剥がして外へ出た。
「良かったなぁカイゲン!これで有名人だな!」
なんて、呑気なこと言いながら走って俺に追いついてきたリュウはゲートの外に出てから回し蹴りで蹴り倒しておいた。
そんなことがありながらも今日も俺は[南の大平原]にやってきたのだが…
「チッくそ、強すぎんだろがぁ!!」
俺はワイルドホーン相手に苦戦していた。
すばしっこく動くワイルドホーンにハンマーがなかなか当たらずなおかつ突進を避けきれずにダメージを負うと言う悪循環に陥っていた。
リュウとPTを組み戦闘をしていたのだがリュウのプレイヤースキルが思っていたよりも高く、ワイルドホーンを事もなげに倒す姿を見て俺もやれると思いリュウに手出しするなと言って挑んでは見たものの、このざまだ。
「はぁ、はぁ…すぅ、はー」
俺は荒れた呼吸を整えてハンマーを握り直す。
昨日の反省から突進中のワイルドホーンにハンマーを当てても弾かれることを学んだ俺は突進後の停止する隙を狙ってハンマーをあてるようにしているのだが、突進を避けきれなかったり、停止している隙に間に合わなかったりして、苦戦を強いられていた。
が、ワイルドホーンもかなり消耗してきたらしく膝が震えているのが目で見てわかる。
それを見た俺は気力を振り絞りハンマーを振り上げる。
「これでフィニッシュだぁぁ!!」
俺は叫びながらワイルドホーンにハンマーを叩きつけるとワイルドホーンが力なくその場に崩れた。
苦戦すること10分ついに俺はこの世界で始めてモンスターを倒すことができた。
ちなみに言うならばリュウが1体のワイルドホーンを倒すのにかかる時間は1分ほどで、かなりの実力差を感じる。
「おー、良かったなぁー、おめでとう、フィニッシュだぁぁ〜〜〜、って、痛いゴメンって」
褒めると見せかけてバカにしてきたアホを俺は足を踏みつけて黙らせる。
とにかく、剥ぎ取りをしないとアイテムも金も手に入らないのでさっそく剝ぎ取り作業に取り掛かる。
リュウの倒したワイルドホーンで剥ぎ取りは経験していたが自分で倒した獲物ということに感動を覚えながら剥ぎ取りを進めると、
ポーンと、音がして
[スキルの欠片]
と、いうものが手に入った。
昨日話していたアイテムで、おそらくスキル入手に関係するものだろうと思いアイテムポーチに入ったそのアイテムを押してみると、
_______________________________________________
[スキルの欠片]
スキルを習得する際に必要なアイテム。
5個集めることで1つのスキルを入手することができる。
_______________________________________________
と、書かれていた。
この文だとあと4個このアイテムがあればスキルを入手することができるのだろうと考えながら俺たちは次の獲物を探した。
これからも引き続きよろしくお願いします。