第31話 緊急クエスト6
「よし!錨を下ろせ!俺とはエンディル討伐に迎う、お前たちはは船に残って港を封鎖だ!海賊を1人たりとも入れるな!」
と、船を港に着けたレスターが部下に指示を出す。
「貴様は俺とともに来い!エンディルの最後を見せてやる」
レスターの中で俺がどのような扱いをされているのかはわからないが現状俺たちは、共通の敵エンディルを倒すという目的の下で協力している、と思ってよいのだろう。
「行くぞ!」
レスターの号令の下、港に降り立った俺たちは、すでに人波をすべてかき分けてこちらを見ていたエンディルに向けて突撃を開始する。
エンディルの後ろにある人波はエンディルが通ったであろう道ができており、そこだけ人が一人もいない空間になっており、モーセの十戒のような光景になっていた。
あの数のプレイヤーを押しのけてここまで来るエンディルの実力に俺は驚きながらも、レスターを連れてくるという判断はやはり正しかったのだ、と自己満足に浸りながら、エンディルへと突撃する。
「エンディルっ!貴様を捕縛するっ!」
先に突撃したレスターが背中に背負った大剣をエンディルをめがけて叩きつける。それをエンディルは受けることなく横にステップして難なく避ける。
「チっ!やっぱりお前かよ!それに誰の差し金かと思えばおめえか!カイゲン!」
回避と同時にエンディルはレスターの横っ腹に一撃を入れるも鎧に守られたレスターに弾かれる。
エンディルにとって一度は負けた相手が予想通りやってきたことと、それを引き連れてきたカイゲンを見て、エンディルは嫌そうな言葉とは裏腹に楽しそうに喋る。
「この男の判断は正しかろう?なんせ俺は一度は貴様を捕縛したことのある男だから、っな!」
レスターの大剣の横なぎがエンディルを襲う。それをエンディルは2本の刀で受ける。
ガキィィンと音を立てて金属と金属が激しくぶつかる音が響く。
ギチギチと音を立てて二人はその体勢から動かず相手の武器の動きを止めるために自らの武器に力を込める。ここで引いてしまってはお互い次の一撃をもろに食らってしまうことが分かっているのだ。大剣の一撃を食らえばエンディルとて無傷では済まない。レスターも鎧に守られてはいるものの鎧の継ぎ目の隙間や目の部分など攻撃の通る部分は存在し、機動力と言う面でエンディルに劣るレスターがここで距離をとれば確実に急所を切られることが分かっていた。が、かといってどちらかの力が一方的に上回っているわけでも無くつばぜり合いのような状態となる。
「っ!!」
エンディルとレスターの戦いを見ていた俺は、この両者が動きを止めた瞬間を見逃さない。エンディルを倒す千載一遇のチャンスなのだから。
俺は手に持った【ロックスパイクハンマー】をギュッともう一度握りしめエンディルに叩きつけるために駆け出し一気に距離を詰めその勢いと俺の全体重を掛けた一撃をエンディルに放つ。
「ふっ!いい度胸じゃねえか」
俺の動きを捉えたエンディルの動きは速かった。
刀をわずかにレスターにわざと刀を動かさせる。突然拮抗していた力が一瞬ゼロになりレスターの大剣は横なぎと言うより前に突き出すような感じで動く。動いた勢いを利用して不安定なその力の向きをエンディルは大剣に刀を叩きこむことでカイゲンが突っ込んでくる方向にかちあげる。そのままエンディルは大剣の陰に隠れるようにして流れるようなステップでレスターの後ろに回り込む。
「何っ!?」
俺は目の前で起こった一瞬の出来事を認識しながらも急には体の動きを止められず上にかちあげられた大剣に俺はハンマーを振り下ろす。ガンっと言う音がして振り上げられていた大剣が俺のハンマーにぶつかり今度は下方向に無理やり力が加えられてとうとうレスターの手から離れる。
カランコロンと、音を立てて大剣が転がる。
そうしてできた隙をエンディルは見逃さない、背後からレスターめがけて突きを入れる。
まずい、そう思った時にはもうエンディルの刀はレスターの目の前まで迫っていた。
しかし、その突きはレスターに刺さることはなかった。
俺の目に飛び込んできたのは間一髪のタイミングでエンディルの刀を弾きながら間に割って入るリュウの姿。そしてエンディルの背後を突くようにキースが槍を突き出す。それを刀を弾かれた勢いを使って素早く半身になることで避けたエンディルに、半身になったことで新しく背を向けたことでできた死角から矢が放たれる。
ドスっ!と音を立ててエンディルの左肩に矢が突き刺さる。
「チっ!」
エンディルは自分に攻撃を食らわせた一連の連携に驚きながらも一端距離を取る。
「サクラさん!それにみんな!」
ピンチの状況に表れて今まで無傷だったエンディルに傷を負わせた人物たちに俺は興奮して声を上げる。
「すまない!カイゲン君。
君に任された作戦は失敗してしまった。」
サクラさんは俺のほうに駆け寄りながら謝罪してくる。
「こちらこそすみません。思ったよりもエンディルがすごかったんですよね?あの人波を押しとおってエンディルはここまで来たんですよね?俺もそこまでとは思っていなかったですから」
感謝こそすれ謝罪されるようなことは無いと感じつつ俺はむしろ謝ってしまう。単純にエンディルの戦闘力を測り損ねたのだから。
「しかしアイツの戦いっぷりは恐ろしかったぜ?なんせ大砲を叩き切ったんやからな」
横にいたリュウがあの大砲の一件について話す。俺がやったことではないが少し申し訳なくなる。
「ともあれ、奴に一撃入れたことですし、連携すれば倒せないことも無いのではないでしょうか?」
シュウがいつでもエンディル攻撃を放てるように目を離さずにこちらに歩いてくる。恐らく先ほどの連携攻撃はエンディルに一撃食らわせるまで順番に誰かが攻撃を食らわせるつもりだったのだろう。いつの間にかそれぞれ武器を構えたサクラさんPTのメンバーが勢ぞろいしていた。
「カイゲンよぉ、おめえいい友達持ってんじゃんかよ」
エンディルは俺の周りに集まったサクラさんたちを見てそうつぶやく。
「まあ、俺にはかなわないけどな」
エンディルが刀を構えなおした。
戦いの当事者や傍観しているプレイヤーも含めてその場にいる誰もが思った。
ここからが本番だ。と。
これからも引き続きよろしくお願いします。