第25話 ニワトリ亭3
床に並べたアイテムを眺めながら、今回作る防具の部位をまず考える。
俺が現在持っている防具は胴回りと腰回りを防護する防具。新しく他の部位を防護するのが定石だから今回は腕回りかあるいは足回り、後は頭を守るもの…か。
「まずは靴とズボンタイプのものを作って下半身回りを強化するか」
まずは、足回りの防具で靴を作ることにした。使える素材は…【ファイターラットの皮】と【ファイターラットの牙】そして【乾いた丸太】と【頑丈な糸】を用いる。
まずは乾いた丸太を自分の足の形にフィットするように木をくりぬいて足との接触が多い部分は限りなく細くそれでいて角などが生じないようにして自分の足に合う靴の穴を作る。そして、土踏まずや踵、つま先の形に合わせて気を削り、磨いて形を整えていく。そして踵やつま先などの裏に、サッカー部や野球部などの運動部が試合などで使うスパイクの刃になるようにして牙を埋め込んでいく。その際、固定するために裏側から釘を打ち込んで固定する。木で靴を作るなんて何年も修行を積んだ職人が本来やるものだが、【木工職人】のスキルもあり、何とかそれらしいものが完成しつつある。
そして、毛をきれいにむしり取った【ファイターラットの皮】を二枚用意して靴の中敷きを作り、ずれることの無いように外側から縫い付けるその際【頑丈な糸】を使って常に負担のかかるこの部分の耐久性を高めておく。かなり力のいる作業だが時間をかけてゆっくり慎重に行い何とか成功させる。
余った皮でつま先の部分の劣化や損傷を少しでも減らすために、取り外しのできるカバーのようなものを取り付ける。イメージは野球のスパイクのピー皮と呼ばれるものだ。
「ふぅ…今回はものすごく時間がかかったな」
今回は木を削る作業に加えて縫い付けなど繊細な作業が多く一つの防具を作るのにかなりの時間を使った。
______________________________________
【木製スパイク(良質)】
世界にただ一人しか履ける者のいない完全な一品ものの木製のスパイク。
使用者のことを考えた調整が各所に施されている。
耐久150/150
DEF+10 製作者:カイゲン
______________________________________
と、ポーンと音がして【木工職人】のスキルレベルが上がり同時に技能【玄人木工術】が表示される。
これは、自分が生産を行う際にシステムから受ける補正が高くなりより高品質なものや、複雑なものが作れるようになるといった技能だった。
「に、しても…これ家の中ではあんまりはけないな」
スパイクタイプにしたためそれでバランスが取れないというほどのものではない刃があるために家の床のほうにダメージがありそうな感じがするのだ。
「うん。これは外に出るとき専用の靴にするべきだな。」
こうして、俺はスリッパを作ることになったのだが、今回の靴を作るにあたって、俺は前に何度か見せてもらったリュウの野球のスパイクを参考にした。
まぁ、その結果が内履きのスリッパを作成する羽目になったのだが。これで外では今まで以上に踏ん張りがきき走りやすくなることを期待しよう。
「よし、次はズボンタイプだな」
俺は、ズボンを作り始める前にメニューを開き時間を確認すると時間は既に午後11時47分を指していたが、睡眠は絶対に必要な要素ではなくゲーム内ではあくまで欲求として存在しているだけなので続けて作業に取り掛かる。鑑定をしたり履き心地を確かめる時間に十分にMPと俺の内面的な集中力も回復し、意気込んで作業に取り掛かる。
使う素材は、【タックルボアの皮】と【頑丈な糸】を使う。すでに腰回りの防具として作った【ホワイトフォールド】があるため動きを阻害しないズボンを作ることを優先し防御力よりも機動性を求める。
「ま、今回は簡単な形でいいか」
俺は自分のサイズに合わせて皮を【頑丈な糸】を使って縫い合わせていく。
機能性を重視した防御力はおまけ程度の防具にはなるが簡単なつくりでも丁寧な作業でズボンを作り上げていく。
「随分早く終わったな、ま、とりあえずの防具だからこれで良しかな」
_____________________________________________
【ボアズボン】
タックルボアの皮を用いた簡素なズボン。
耐久 100/100
DEF+6
製作者:カイゲン
_____________________________________________
「意外と防御力は高めなのか…」
機能性を重視して作ったもの同士だが二つのモンスターの皮の素材を用いて、見た目的にも防御力が高そうな【ホワイトフォールド】と同じ防御力がこの【ボアズボン】で手に入るとは思っていなかった。
使う素材が上位互換のようなモンスターを使っているため、このような差が出るのだとしたら余裕が出たら、一度前に作った防具も新調するほうが良いかもしれないな。
そんなことを考えながら俺は展開していたアイテムを片付けて床に就く準備をする。
時刻は日付が7日目にかっわて午前0時20分だった。
先ほどに比べれば短い製作時間だったが、終わった、と思った瞬間に眠気が俺を襲った。
「ファ~。眠い、思ったよりも疲れたな」
俺は、睡魔にあらがうことなく眠りについた。
これからも引き続きよろしくお願いします。