第19話 食事会
今回から第2章スタートです!
今後ともよろしくお願いします。
俺はリュウを含めたサクラさん率いるPTと話しながら懐かしのニワトリ亭へと向かう。
「あらあんたかい、騒ぎを起こしてからしばらくぶりだったけど元気だったかい?」
と、あの女将さんから声を掛けられる。
あの石造りのどこだかわからない留置所的なところでエルと出会った俺はNPCという存在がどういったものなのか考えなおしてはいたが、ここでその考えが正しいものだったと確信する。
この世界のNPCは現実世界の人間と変わらない。個々が歴史と感情をもつ人なのだ。と。
「女将さん今日は食堂を貸りて話がしたいんですが」
キースが女将さんに話に行く。どうやら交渉事やなにか話をして物事を決めるときはサクラよりもキースのほうがうまく話を進めることができるためこういったことはすべてキースが行っているらしい。適材適所というやつだ。それではなぜサクラさんがリーダーなのか、と言う疑問が浮かぶが、話によると彼女は戦闘における作戦立案と統率力そして冷静な分析力などに優れているらしく、彼女以外のプレイヤーからの満場一致の評価を受けてリーダーになったそうだ。
「ええ、お金を払ってもらえるならいいわよ。
と、言うところだけど彼が帰ってきたのを見てうれしくなっちゃったから特別に無料でかしてあげるわ」
と、俺のほうを見ながら最後の部分を強調して言う。別に嫌味を言われているイントネーションではなかったが、番う意味で寒気を感じた。
「ありがとう!女将さん!」
キースが笑顔でこちらに戻ってきてから俺たちは給仕にこの宿屋の食堂に案内された。
「さて、ではカイゲン君の帰還を祝って乾杯!」
「「「カンパーイ!!」」」
キースの掛け声で手に持ったエールと言うビールに似た飲み物で乾杯し、俺たちは料理を食べながら情報を交換する。今日初めて知り合ったプレイヤーをここまで気遣ってくれる当たりリュウの存在が大きいのもわかっているが、この人たちは本当に良い人たちなんだと思う。
するとガチャガチャと音を立てながらステーキやらチキンタラと言ったいかにもな食材にかぶりつきジョッキに入ったエールを飲み干す。ゲームの世界なので酔うことが無いためこの世界では、未成年でもアルコールを摂取することができる。
酔っているわけでもないのに雰囲気でみんな口がなめらかになり先ほどよりも話しやすくなる。
楽しく進んでいた食事会。
すると、
「それでね、まずカイゲン、君に確認したいのだがログイン時に受けたチュートリアルと説明についてなのだが…君の言っていることに間違いはないんだね?」
サクラさんが俺のチュートリアルのことについての話を切り出す。
サクラさんが曰く、チュートリアルではすべてのプレイヤーがメニューの開き方やシステム的な説明、そしてスキル構成に関するアドバイスを受けていたらしい。
スキル構成のアドバイスとは、このゲームの戦闘は武器を扱うための基礎的なマイスターを得るスキルのみでは戦闘を有利に進めるのは難しいらしく自分の武器にあった便利系スキルの中の戦闘能力を補助するスキルをセットでとることを推奨されたらしい。
だから、自然と生産や他のスキルにさけるスキルスロットが減ることになるのだ。そのためこの世界の数多くのプレイヤーはそのアドバイスに従い、基礎体力や腕力などを強化することでモンスターとの戦いを有利に進めていたため、この序盤で死に戻りをするプレイヤーは少なくなっていた。
にもかかわらず、説明を受けずマイスター系のスキルのみで生産系のスキルを3個も所持しているプレイヤーなど現段階ではおそらく俺しかいないらしい。
「ええ、本当です」
俺はこれまでにこの食事会で得ていた情報を思い出しながらサクラさんに返答する。
「ふむ…となると、やはり…」
サクラさんは一度考え込むとおもむろに立ち上がりみんなに静かにするように合図をする。
「えー、コホン!こうして食事を共にして懇親を深めた我々であるのだが、ここでみんなに一つ提案がある」
と、ここで話を一度切りツカツカと歩き俺のほうへと歩いてくる。
「カイゲン!君をこのパーティーのメンバーとして迎え入れたいと思う!」
みんなが待ってました、とばかりに賛成と盛大な拍手をして、俺の返事を期待した目で見ている。みんな本当に心のあたたかいいい人たちだ。
そう思いながらも、ここで俺のは素直にハイと言えない事情が二つあり、そのうちの1はこの食事会で知ったものなのだが、どうやらPTのメンバー上限は7人らしく俺を加えることで4人と4人といったようにPTを2組に分ける必要が出てくる。これに関してはおそらく俺に知られる前に話を進める手はずだったのだろうが、気分を良くしたシャリーが俺に話してしまったのだ。その後、ヒョウによって別室へと引きずられていったところを見て今、その理由に気が付いた。
「せっかくの申し出なんだけど俺は断らせてもらいます」
俺は、この申し出を断る。と口にする。もちろん俺のことを思ってここまでしてくれるみんなの優しさは嬉しいがここでみんなに甘えてしまうのは何か違う気がするし、ズルズルとこのまま寄生虫のようなプレイヤーになってしまう気がしたのだ。
「っ?何故だ?先ほどのPT人数の上限について知ってしまったからなのか?それについてはしっかりと解決策を考えた!
それとも何か不満なことがるのか?まだ私たちのことが信用ならないのか?理由を教えてくれ!」
冷静なサクラさんが俺の答えを焦ったように俺に質問する。
するとキースが立ち上がり
「サクラさん落ち着いて。
ねえ、カイゲン君この提案君にとってもかなり有益な提案のはずなんだそれに君の友人のリュウもいるんだ。断るにはそれなりの理由があると思うんだ、その理由を聞かせてもらえないか?」
キースが冷静に場を沈めながら俺に問いを投げかける。
俺は全員から視線を集めている。特にリュウなんかはものすごい驚いた眼をしている。
スゥーー…ハーー
俺はこれからかなり恥ずかしいことを言う準備をするため大きく深呼吸をした。
「俺は…!」
俺が理由を言い終えるとみんなの目が文字通り点になっていた。
今後ともよろしくお願いします。
PTメンバーについて、6人制から7人制に変更しました。
ご指摘をいただいて自分でも恥ずかしいことながら、単純に数え間違えるという、初歩的なミスをしていました。
このようなミスが他にも多々あると思いますが、ご指摘いただけるとありがたいです。(9月1日修正