第17話 初心
今回は後半部分に短いですが別視点を挟みます。
誰かはバレバレだと思いますが一応伏せておきます。
その後、俺はエルと他愛のない話なんかをして暇をつぶして眠くなっては適当に寝てなんていう平和な時間を過ごし、気が付けばメニューに表示される日付は5日目を指して、外は暗くなり明かりは月明りになっていた。その間、リュウからの返信と町の近況を知らせるメールが送られてきて、どうやらメールによると俺たちのいるシフリートは本来港町で、貿易が盛んな町らしい。しかし、近海で最近騒いでいた海賊が商船を襲うことから港に誰も寄り付かなかったらしい。それを派遣された近衛騎士だかなんだかが、海賊を一網打尽にせん滅したことで今までは船のよりついていなかった浜辺に商船が来て、新しいアイテムの入荷やアイテムの値下げなんかが起こったらしい。
その話に出てくる海賊がたぶん目の前にいます。なんてメールをしたらリュウのやろうは心配するだろうから、了解、ありがとうとだけ返事を送る。
そんなやりとりをしながら、この世界にきてから初めて俺は何もこのゲームの攻略やクリアについて考えずに1日を過ごした。この世界は俺たちのいた世界とは確かに違うがここには現実の世界にはいないような過去を持って過ごす人やゲームの中だからこそできる過ごし方をしている人たちがいる。そんな人たちとちゃんと話してもっといろんなことを聞いて純粋に俺はゲームを楽しむのもありかもしれない。どうせ俺の実力なんてたかが知れてるし、元から俺は戦闘メインでなく生産メインでやっていくつもりだっただから、わざわざ俺がやりに行かなくてもいいじゃないか。ゲームクリアなんてのはきっとどこぞの英雄さんのような人がやってくれるさ。
なんて俺は考え始めていた。
まあ、実際俺一人が現時点で攻略に与えている影響は皆無だから俺が居なくても何の問題もないわけだし、ここをでたらしばらくは自由にしてみよう。
それこそ海に出るなんてのもいいかもしれない。海賊行為なんてのはちょっとあれだが気ままに航海して過ごすのもありだし、全大陸の訪問だったり7個目の大陸の発見なんかも夢があるな、などと考えていると、
「なんだかつきものがとれたみたいな顔してんな、俺がここにきてすぐのころのおめえは何か思い悩んでるみたいだったからな」
と、エルが話しかけてくる。
もしそうなのだとしたらエルのおかげになるんだろか。
「エルお前のおかげだよありがとう」
俺は素直にエルに感謝を伝える。
エルはなんだい急になんていいながら鼻の下をかいて照れ隠しをする。意外とわかりやすいやつなんだなと思っていると俺の目に急にディスプレイが浮かぶ。
『所定の拘留時間を過ぎました。今から三秒後に所定のポイントへ転送されます。』
と、浮かび上がる。
そして俺は何も対処できないまま視界が白くなり宙に浮くような感覚の後戻った視界は見覚えのある天井と景色だった。
「ここは…教会か?」
俺が一度このゲームで見たことのある景色でここと同じものは一日目に見たあの忌々しい死に戻りで飛ばされた教会しかない。と、なると…
「よし、いないな」
俺はあたりを見回し他のプレイヤーがいないか確認する。特にこの間のノートを持っていたあのプレイヤーだ。あいつのせいで俺の出鼻が挫かれたと言っていい。まあ、さすがに夜の戦闘をこんな序盤から好んでやるプレイヤーも少ないだろうし、ここにいてもアイツの欲しそうなスクープなんてのはここでは得られないだろうからここにはたぶんいないだろう。
俺は、もう一度当たりを見回してからメニューからフレンドの欄を開きリュウに帰ってきたとメールをするのであった。
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「あれま、急に消えちまったか」
俺はつい先ほどまでいた同居人が突然消えたことに一瞬びっくりするもそれも<加護持ち>ならば仕方のないことだと考えるのをやめた。
すると、
「頭!準備が出来やした!」
と、明かりを取る窓から声がかかる。
そうか、準備ができたか。俺は床に落ちていた小石を窓の外に投げ返す。了解も意だ。
「もう少し一緒にいたら、おもしろいことにアイツも混ぜてやれたんだが…まあしょうがないあのガキにはまだ早そうだし、それにこれから何度か会えそうな気がするしな」
そう言って、指にはめた木製のリングを見つめる。
「さあ、パーティーの始まりだ」
俺は懐から日本の刀を取り出して、これから起こるパーティーを楽しみで自然と笑みがこぼれた。
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これからも引き続きよろしくお願いします。