第16話 海賊エンディルという男2
その後、話疲れた俺たちは気が付くと昼寝をしていたが日が沈みかけたころに俺が目を覚ました。
エルはまだ寝ているようで話しかけるわけにもいかず、俺は昨日の制作で余った【乾いた丸太】を使って何かできないかと、【初心者用木工セット】を開いて作れるものをスクロールしてみていると【木のリング】という木材だけで作ることのできるアイテムを発見しさっそく取り掛かる。
まずは丸太を適当な大きさに切り分けて薪のようなものを何本か作りその先端を2㎝ほど切り取る。
後は指輪の形になるように切ったり、削ったり、掘ったり、くりぬいたりと形を形成して【木のリング】を作り上げる。
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【木のリング】
木製のリング。
これだけではただの装飾品。
耐久100/100
製作者:カイゲン
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まあ、普通に作っただけだしこんなものだろう。【木工職人】だけスキルレベルも上がっていないし、他に特に作れそうなものもないため、スキルのレベル上げのためにも俺は【木のリング】の量産に取り掛かる。
【木のリング】。【木のリング】。【木のリング】。【木のリング】。【木のリング】。【木のリング】。【木のリング(良質)】。【木のリング(頑丈)】。【木のリング(頑丈)】。【木のリング(細身)】。
途中からコツをつかみスピードが上がり質の良いものも作れるようになったり、特殊なリングも作れるようになった。するとポーンと音がして【木工職人】のスキルレベルが上がる。
「ふぅ、少し休憩するか」
俺は目的のレベルを上げたことで少し休憩することにする。
すると、いつから起きていたのかエルが、俺の作った【木のリング】を拾い上げる。
「結構良いもんつくるじゃねえか、どれ、一つ俺が買い取ってやるよ」
そういうと、エルは【木のリング(頑丈)】を一つ手に取ると、胸にかけているネックレスを外し、鱗を取り外し代わりに俺のリングを取り付ける。
そして取り外した鱗を俺に差し出す。
「今手持ちで払えるもんがこれしかないからなこれと交換てことでどうだ?」
「っ?そんなんもらえねえよ!大事なものじゃないのか?」
海龍の鱗っていうのが本当ならそうやすやすと手放してよい代物ではないはずだ。
だから、俺もこれは受け取れない。
「未来ある若者の可能性への先行投資ってことだよ」
そう言ってエルは爪ではじくようにして俺に鱗を飛ばす。ひらひらと回転しながら俺めがけて飛んでくるそれを俺はキャッチする。するとアイテムを受け取りますか?と不意にディスプレイが浮かび上がりYESとNOの文字が浮かび少し迷ったのちに俺はYESをタッチする。
「エルだって十分若いだろうに」
俺は苦笑いしながらエルに感謝しながらもう一度手のひらの鱗をまじまじと見る。
そして、手のひらのアイテムを【鑑定】を発動して見ると
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【海龍の逆鱗】
海の覇者である海龍の逆鱗。
すべての生物の頂にある古代龍の血を濃く継いだ海龍の青く輝く鱗は堅牢でなおかつしなやかさを保っている最高級の素材である。
不思議な輝きを持つ海龍の逆鱗は海に出たものに幸福と試練をもたらすと言う。
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俺は解説文を読んでこれが本当に海龍の鱗でなおかつ逆鱗だと知り改めて驚く。
海龍の素材はおそらく超の付くようなレアアイテムだろう。その中でも逆鱗は龍の弱点とも呼ばれる一枚だけ逆さまに生えた鱗のことだからかなりの価値のあるアイテムだろう。
「おいおい、ほんとにいいのか?返せって言うならいまのうちだぜ?」
俺は念入りに確認する。今ならまだ、間に合う。と。
「だからいってんだろ?先行投資だって。
それとも何か?ここにあるリング全部持っていけば気が済むか?」
エルがおどけたふうに俺に聞き返す。
俺の作った指輪をすべて持っていかれてもこの取引は俺に有利すぎるし、おそらくエルも持っていくつもりなんてさらさらないだろう。
だが、1本取ってやったぜというエルの満足そうな顔と頑張れよ若者ということを目で語ってくるその様に何か反撃したい気分になった俺は
「そうだなあ、今から追加で10個作るからそれも含めてぜんぶもらってもらおうかな」
俺はそう言いながらニヤリと笑う。
「はぁ?お前何言ってんだっ?」
「うるせー!絶対に全部持って帰らせるからな!」
お前、やめろって!なんて困った顔で言いながら、エルが俺を止めようとする中エルの予想を少しでも狂わせた満足感となんだか友達とじゃれているような感覚で楽しむ俺はこの後本当に10個のリングを作り上げたのだった。
これからも引き続きよろしくお願いします。