第13話 独房5
新しい登場人物の登場です。
コツコツ
ガチャガチャガチャ
と、人の足音と金属音がして俺は目を覚ます。
ここに閉じ込められてまだ一日も経っていないが自分がたてた音以外の人工的な音を聞くのは随分と久しぶりな気がしてやってくる人気配に俺は必要以上に緊張してしまう。
だんだん聞こえる音が大きくなりその音の主たちは俺が入れられている部屋の前までやってくる。
カチャリ
と、音がして扉があけられる。
「犯罪者め、ここで貴様の犯した罪を悔い極刑までの時間を神に懺悔する時間にでも使うがいいさ!」
ドン
と、茶色のコートを着て頭には大きなハットを被った男が俺と同じ部屋の中に倒れこむ。
この男をここまで連行した男、先ほどの声の主は純白の鎧を纏い昨日、俺がコテンパンにしてやられた鎧の騎士に負けず劣らずのオーラを放っていた。
その男は自分がここまで連行したコートの男送り届けるという仕事を完遂し満足そうな顔で扉を閉めると、チラリと俺を見て
「犯罪者どもめが」
と、呟いてまたガチャガチャと音を立てて遠ざかっていった。
しばらくはいきなりの事態に対応できないでいたが、冷静になり俺は転がっているコートの男性に声をかける。
「おい、大丈夫か?」
この男性は先ほどここに倒されてからピクリとも動かないでいたので少し心配しながら声をかける。
「あぁ、坊主すまねえがよぉ、何か回復できるアイテムもってねか?」
男は、こちらを向きもせずにそう答える。
「どこか怪我をしているのか?」
俺は男に近づき体お揺するようにすると男の体が今までの姿勢から90度回転してあおむけの体制になる。すると男のわき腹からぬるりとした何かがこぼれていることに気付く。
血だ。
「おい!おっさん!だいじょうぶか?」
俺はアイテムポーチに薬草が入っていることを思い出し、慌ててそのアイテムの効果を見る。
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【薬草】
体力を回復させる効能を持つ薬草。
直接食べることで摂取したり傷口に塗り込むことでその出血を抑えることができる。
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俺はこの説明欄を読み手でちぎりながら男の傷口に揉み込む。男の傷口は刃物で刺されたような形をしており男の顔色からすでに体力的にかなり消耗していることがうかがえる。
リュウが先日一緒に俺を探してくれたプレイヤーから聞いた情報に状態異常の出血というものがあった。出血に陥ったプレイヤーは持続ダメージを治療するか状態異常が自然に収まるまでの間受け続けるという厄介なものだったと聞いていた。
おっさんの状態からそんなことを思い出しなが傷口を揉まれる痛みに悲鳴をあげるおっさんを無視して揉み込み続けた。
既に日が沈み手元に届くのが月明りだけになったころだった。
あれからしばらくして傷口からの出血が止まり自然回復で体力が回復し落ち着いた様子のおっさんがむくりと起き上がる。
「坊主、たすかったぜ、ありがとよ。
でもよ、薬草は塗り込んだらあんなに揉む必要は無いって知らなかったのか?」
「目の前で死なれたらなんか寝ざめが悪そうだったからな。
そーなのか?全く知らなかったわ」
そんな会話をしながら俺とコートのおっさんは初めて互いに顔をしっかりと向き合わせ目を見て会話する。
深くかぶったハットからはみ出るやや青みがかったぼさぼさの髪と角度的に右目しか見えないが青い瞳、
さらに首筋にはきらりと光る蒼色のようで翠色のようにも輝く一枚の鱗を通しただけのネックレスをしていた。そのネックレスはただそれだけの何の工夫も施されていない代物なのに俺は不思議とそのネックレスに興味を惹かた。俺は、装備に自由度の幅はあれどよく見ればところどこ擦り切れていたりボロボロになったコートや中に来ているインナーにもかなり気がひかれた。
「何だ?そんなに海賊が珍しいか?」
それが、これからのこのゲームでの生活で長く関わることになる海賊エルとの出会いだった。
これからも引き続きよろしくお願いします。