第9話 独房
俺は気がつくと暗い石造りの部屋に転がっていた。
「チッくそ!!」
俺はつい先ほどまでのことを思い出す。
光とともに現れた騎士は現れると同時に俺に向けて切りかかってきた。
最初の一撃を俺はハンマーをぶつけることで止めようとする。
ガキィィン
と言う音を立て俺のハンマーが弾き飛ばされる。
ワイルドホーンの突進でさえ弾き飛ばされるのだ。当たり前だろう。
「うぉぉぉお!」
飛ばされたハンマーを見ることなく俺はせめてもの抵抗にと、殴りかかる。
金属の鎧を俺の渾身のストレートが捉えるも、鈍い音がして俺の腕に痛みが走る。
視界の端を見るとHPゲージが減少している。
硬い金属に俺の筋力ではかなわずむしろ当たったことに対してダメージ判定を食らっている。
そして、鎧の騎士はそんなこと気にもせず、大剣を振りかぶり俺に向けて振り下ろした。
無機質なプログラムそのものを代弁するかのようなその鎧の騎士の俺を切るその様はその場にいたリュウを含むほかのプレイヤーを恐怖から一時的に行動を不可能にしており俺にはその場にいたほかのプレイヤーたちが恐怖で顔を引きつらせているさまがよく見えた。
そして気が付くと俺はここにいた。
思い出すだけでもムカつく。このイライラは鎧の騎士に対してのものあるが、おそらくはそれだけでなく俺をバカにしたプレイヤー達とリュウをもバカにしたあのプレイヤーに対しての怒りも含まれている。
PKを行ったことに対して後悔はしていないしむしろせいせいしているがおそらく向こう側は悪いともなんとも思っていないのだろう。
そう思うとなんだかやるせなくなってきた俺は怒りが静まり少し冷静になって周りが見えてくる。
俺の飛ばされた石造りの部屋は明かりをとる窓と、出入り口に使われたであろう鉄格子状の扉以外は全面を石造りの壁に囲まれた言わば独房と呼ばれるものであった。
メニューを起動させると、メニュー起動に割り込む形で
『プレイヤーキル行為を確認したため刑を執行、捕縛を行いました。
3日間、この独房で自分のやった行いを反省してください。
尚、独房内では一部のアイテム、スキル、技能の使用はできません。』
と言う文が表示される。
「3日ねぇ…」
試しに俺はメニューのアイテムから、ベーシックハンマーがあることを確認して装備しようとするも、『今は装備できません』と言う文字が出て装備することができなかった。
「こりゃ、3日間どうやって過ごすか考えないとな」
手元には最低限の光が月明かりで確保されているとはいえ、メニューの端に映る時刻が午後10時を回っており、1日の疲れを感じた俺は石造りの床の上で寝転がりながらぼんやりと考え事を始める。
とりあえずなんだかんだでやることができていなかったスキルの【木工職人】【鍛治職人】【道具職人】と、それに伴ってはじめからアイテムポーチに入られていた
・初心者用木工セット
・初心者用鍛治セット
・初心者用道具製作セット
を、使って生産活動をすることを考える。
しかし、慣れない戦闘に、死に戻りでの気だるさが俺の眠気を誘う。
どうせ俺は3日間ここから出られないんだ時間はたっぷりあるさ。それに暗くて手元もよく見えないだろうなんて自分への言い訳を考えながら俺は固い石造りの床の上で眠りについた。
これからも引き続きよろしくお願いします。