第0話 prologue
拙い文章ですがどうかよろしくお願いします。
今年もうだるような暑さの暑い夏がやってきた。
これが期末の考査を終えて帰路につく俺が最初に思ったことだ。世の高校生の中でこんなテンションの低いことを夏休みののっけから思っているような奴はおそらく俺くらいだ。
「なにボーっとしてんだよ大!!」
後ろからいきなり俺にタックルをかましながらいつもの元気な親友がやってきた。竜崎剣元野球部の名残の丸坊主に少し髪の生えてきたような髪形をしているが無頓着なだけでかなりのイケメンだ。
今年の夏、こいつ一人の活躍で万年一回戦敗退だったうちの高校はあと一歩で甲子園というところまで行き学校のヒーローになっていた。
「だから、なにボーっとしてんだよ!海原大く~~ん?」
「なんでもねえよ、これから夏休みだなってだけ」
相変わらずうるさい剣にそう短く返す。
「これから夏休みってやつの言い方と顔じゃねえぞそれ」
そういうと剣がなにやらカバンをガサゴソといじりだす。
「そんなお前に今年は俺からプレゼントってことでこれ一緒にやんね?」
そう言いながらカバンから出されたのはサングラスのような形をした何かと小さなプラスチックケースがそれぞれ2つ。
「なにそれ?」
「聞いて驚くなよ?なんとこれ明日発売の新型ゲーム機VRダイバーとそのソフトの『WORLD NEW ORDER』さ!! 」
「おいおいまじかよそれ!」
俺は聞いて自分の耳を疑った。近年注目されていたヴァーチャルリアルの世界を用いた最新式のゲームで、ついに完成された仮想空間で五感を再現する技術によって、まるでゲームの世界に飛び込んだかのような体験ができると世界中で大注目のゲームが目の前にあった。
当然値段もまだまだ高く一般市民である俺たちが楽しむのはまだまだ先かと思っていたところだったのだ。
「なんでお前そんな高価なもんをしかも二つも持ってんだよ!?」
「あー、なんかな、隣の学校のなんとかって子にしつこく遊びに誘われててな、それで先週遊びに行ったらなんかしらんが2個もらえてな~」
隣、とはすぐ近くの有名女子高校のことだろう。剣はあれで性格も顔も良いから女にもてる。んでもって、これは貢物で…あそこの生徒はみんなお金持ちだから…俺がそのおこぼれを頂戴しても何の問題にもならないよな…できることなら俺自身が貢がれるような男に生まれたかった…あぁ、こいつ殴りてぇ…
「まっ、ありがたくいただくとするわ。
んで、もちろんサービス開始と同時にやるだろ?」
俺は心の中で抱いた劣等感や怒りをゲームへの期待で塗りつぶし、なるべく笑顔で話す。
「なんか笑顔が怖いぞ?
まぁ、それはおいといて、もちろんイエスだな」
このゲームのサービス開始時間は明日の午前9時。これに関しては大々的にテレビでの宣伝やマスメディアが発信しているニュースなどで何度も耳にしていた。
「なら明日の9時になー!」
急に走り出した剣はバス停に向かいそこでやってきたバスに走って乗り込む。なんとも元気な奴だ。
「さて俺も早く帰るとしますかね」
こうして俺はこの人類史上最も多くの人が巻き込まれた事件の被害者となることが決まったのであった。
読んでいただき有難うございます。
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