一章一節 世界変化
…二十年後…
都市は廃墟と化し、海は干上がり、人々の生きていけるような世界ではなくなっていた…。
ということはなく、世界の地形の変動こそあったが、昔と変わらない生活を人々は過ごしていた。
いや、昔と変わった所が数カ所あった。
エネルギーを作り出す発電所などの施設は存在しなくなった。
住む場所は、巨大なドームのような建物になった。
世界を守る人々の年齢が若くなった。
これらは、神の贈り物による影響だった。
神が人々を守るため、人々に与えた贈り物は、神の力である「能力」を分け与えることだった。
そして、20年後の今、能力者の数は10億を超えていた。
人類は、能力者達を魔獣と戦う戦力、または「能力」をエネルギーに変換する者達に分けていた。
能力者が、二つの役職に分けられているのは、戦える能力者と戦えない能力者がいるからだった。
例えば、同じ火の「能力」を持つものでも、軽い火傷をする程度の火力を出すものと、町を焼き切る程の火力を持つものがいたらどちらを戦わせるだろうか?
当然強い方だろう。
弱い方を戦わせないのは、単純に危ないからだ
だが決して、この役職分けが絶対ではなかった。
稀に弱い能力者として生まれ、魔獣と戦えるものがいたからだ。
そんな弱い能力者達を見きわめるために試験を作った。
「対魔獣戦力認定試験」、通称「対戦試験」だ。
弱い能力者たちは、テレビなどで見るヒーローに憧れて試験を受けていた。
しかし、憧れで合格できるほど試験は甘くなかった。人の生死を左右するため、採点はとても厳しく、合格率は少数点を切っていた。
そんな試験を受けるべくして試験会場の門をくぐった一人の少年がいた。
ただし、外から中にではなく、中から外にだったが……。
裏音は、空を見上げていた。
空は裏音の心の様に曇っていた。
そして、
「はあぁぁぁ………。」
裏音の口からため息がこぼれる。
「また落ちたか…。」
言っても仕方ないことだが言わずにはいられなかった。
「……はは。これで30回目か…」
なんでこんな試験受けてるんだろう?
受付の人も最初は優しかったけど、段々「またお前かよ」みたいな目で無言で対応されるし。最近じゃ完全に哀れみの目で見られている。
「やっぱり、向いてないのかな……?」
そんな俺に話しかける人物が1人。
「珍しいな。めげない、しょげない、諦めないが信条みたいな裏音がそんなこと言うなんて」
「なんだ、いたのか…」
話しかけた人物は、二宮春紀。俺の友達だ。
「なんだよ、親友に向かってその態度は」
春紀が、肩をすくめて戯けたように言う。
「俺はお前のことを親友と思ったことなんてないよ」
「酷いな……。いや、まさか俺はお前の親友以上の存在だということか⁉︎」
「それはない」
俺は、春樹の意見を真っ向から否定した。
そして、俺と春樹は何気ない話をしながら歩き出した。