真夜中のエレベーター
終電間近の電車に揺られながら私は眠い目を擦る。
早くマンションに帰ろう…。
そう思いながら私は足早に電車を降りた。
***
ガチャン!
比較的大きい音をだしてオートロックのエントランスドアが閉まる。
「はぁ…今日も帰るのが遅くなってしまった…」
私は深いため息をつきながらそうつぶやいた。
世間ではちょうど今、盆休みの期間中らしい。
しかし、中古車販売店で勤務している私にはそんなものはない。
連日の激務で本当に疲れ果てていた。
眠たい目を擦りながら、私はエレベーターのボタンを押した。
ガチャン!ウィーン…。
エレベーターが下に降りてくる音が聞こえる。
早く部屋に帰ってベットの上で寝たい…。
頭の中はそんな考えでいっぱいだった。
ゆっくりとエレベーターの扉が開く。
その時、私は不思議な光景を目にした。
一人の老人がエレベーターの中にいるのだ。
「えっ…こんな真夜中に人…?」
私は瞬時に心の中でそうつぶやいた。
この時間帯に誰かがエレベーターに乗ってるのは珍しい。
この老人はこれからどこに行こうとしてるのだろうか?
「うう…。乗らないん…で…す…か?」
老人は一言一言絞り出すような声で私にそう言った。
「えぇ…乗りません」
私は恐怖を感じてとっさにそう答えた。
「そ…う…ですか」
老人はエレベーターのボタンを押した。
エレベーターは下に降りていった。
液晶パネルに地下1階を表す「B1」と表示がでる。
でもおかしい。
このマンションに地下はない。