表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

第四話 陰陽師

未神省吾は山の近くの神社に居た。


山から下りて買ったアイスをペロペロと舐めて涼んでいた。


神社の中から巫女服を着た少女が出てきた。


「省吾。一人だけズルい、私も欲しい」


そう言って省吾が買ってきたアイスが入った袋を取ろうとしたが、省吾がヒョイと庇う。


少女は頬を膨らませる。


しかし省吾は何かを思い出したかの様にハッとしてアイスを少女に押し付けて神社の中に駆け込む。


大きな紙の上に一心不乱で五芒星を書き始めた、大きな五芒星を書き込むと学生服から札を取り出して五芒星の上に札を貼り付ける。


臨兵闘者 皆陣列在前


省吾は心の中で九字を唱える。


すると、風が先程よりも激しく吹く、狂ったかのように踊り歌う木々。


風が部屋の中に入り込むと省吾の懐にあった札の束が部屋中を舞う。


一斉に札は地図に向かって張り付いた。


何事も無かったかの様に暫しの沈黙が訪れる。


パンッ!と手を叩くと一気に地図に張り付いた札が吹き飛んで剥がれる。


一枚だけの札が残されていた。省吾は最後の一枚の札の剥がすと地図には喫茶店がある場所だった。


ニヤリと不敵に笑うと、省吾は畳の下から拳銃やサブマシンガン、手榴弾を取り出してカバンの中に詰めて弾丸はポケットの中に入れた。


武器が入ったカバンを持って省吾は山を降りてその喫茶店に向かった。


――――――――――――――――


「なぁ、教えてくれないか支倉」


佐助は珍しく包帯を全て取って呑気にコーヒーを飲む支倉に詰め寄った。


「どうして俺は狙わなきゃならないんだ?ひょっとして俺もお前と同じ陰陽師なのか!?」


そう問い詰めるが支倉は落ち着いて相変わらずコーヒーを飲んでいる。


「いや、雨宮家はただの侍の家だった。支倉家の記録ではそう残っている」


「どうして支倉と雨宮が関係あるんだよ!?」


「雨宮、そしてもう一つは北上家、この二つの家とは支倉家と仲が良かったらしい…だが明治時代になると、支倉と雨宮と北上は赤の他人状態になった…」


支倉は口にデザートのケーキを口に入れて話を止める。


「雨宮と支倉が再び出会ったのは奇妙な運命だな」


フッと辺りを見ると人が一人も居なくなっていた、店員も客も、外に居た人達も全て消えていた。


すると外から一人、大きなカバンを持ったチーマー風の男、省吾が店の前に近づいてきた。


「まずいな…」


ポツリと支倉が呟く、するとカバンの中から数個の手榴弾を取り出して喫茶店に投げ込んできた。


ガラスが割れる音と共に手榴弾が足元にゴロリと転がってきた。


佐助が手榴弾と認識するのに時間がかかり、逃げる時間も無く爆発した。


店は吹っ飛んだ、店は燃え上がる。


炎の中から支倉が出てきた。佐助も何故か無事で火傷一つしていなかった。


省吾はニヤリと笑いながらカバンの中からサブマシンガンを取り出した。


「雨宮佐助、逃げろ」


佐助は支倉を信用して、言われた通りにする事にして、その場から立ち去った。


ニヤッと笑うと省吾はサブマシンガンを支倉に向けて乱射した。




街中に銃を撃つ音が響く、あまりにも静かな街で佐助は不気味に思う。


携帯を見ると、圏外になったいた。


チッと軽く舌打ちした。


すぐ近くに銃声が轟く。もしかするとアイツが追いかけてきたのか?支倉は駄目だったのか?


サッと佐助は身を隠した。


靴音と口笛が聞こえてきた。


佐助はジッと動かなくして、完全に気配を殺していた。


そこに通りかかったのは未神省吾だ。


省吾は支倉との戦いのせいか、額から血を流しながら佐助を探していた。


額から大量の血を流しながらも、タオルで押さえ、表情の笑みは消えていなかった。


その笑みはとても不気味だった、何を考えているのかサッパリ分からない。


通り過ぎようとしてた時、グルリと未神は後ろを振り向いて、目を見開き舌を出しながら佐助の方を向いた。


驚きのあまり佐助は一歩も動けなかった。省吾はニヤニヤしながら佐助の驚く顔を堪能した後、銃を向ける。


「クソッ!」


ようやく体が動いた佐助は走り抜ける。


後ろから発砲音が聞こえるが、全て外れている。


省吾が遊んでいる事に気付き、佐助は益々背筋が凍る。


何か武器になりそうな物はないかと、たまたま近くにあったパン屋に駆け込む。案の定、中には人が居なかった。


近くにあるトングを手にして、ジッと見つめる。が、すぐにトングを元に位置に戻す。


もう少しで、これを武器にしようとトチ狂った事をする所だった、相手はサブマシンガンでコッチはトングで戦うのは無謀を通り越してアホの行動だ。


再び銃声が響いてパン屋のガラスを割れて盛大に商品のパンが棚から落ちていく。瞬時に佐助はカウンターの後ろに隠れこんで銃弾の雨をやり過ごす。


佐助は手榴弾を恐れて店の裏口から出て逃げた。



カツーン…カツーン…


足音が聞こえる。


誰の足音かはすぐに分かった。これは未神省吾の足音だ。


タッタッタッ…


今度は走る音が聞こえてきた。これは支倉…生きていたのか…?


佐助が耳を集中させると足音だけで誰かが識別出来ている事にハッと気づいた…まさかこの耳の力?


そうこう考えていると再び銃声が聞こえた。やはり支倉と未神が戦っている、とりあえず佐助はその場を離れようとした。


すると、目の前が急に青色に染まった。


「こ、これは…!?」


しまった、こんな時に幻覚か。


完全に視界はブルーアウトした。だが完全に真っ青になった訳ではない、透き通るような青色で景色はちゃんと見える。


ふと隣を見ると、ゴミ捨て場があった。


そこだけは青では無く、赤色に光っていた。


警戒するが、体が勝手に動いてゴミ捨て場を漁っていた。


すると、中から一枚の札が出てきた。


この札から赤いオーラを放っている。


咄嗟に佐助はそ何の躊躇も無く札をビリビリッと破った。


――――――――――――――――


未神省吾は違和感を感じた。


隆景と佐助を始末する為に、人払いの札を破られた気配がした。


すぐに佐助が破ったという事に気付いて、省吾はハッとした。


「……あと三つだな。今の佐助なら見つけられる」


隆景は省吾に向かってそう言う。


省吾は佐助を先に始末するべく、佐助を探そうとしたが、隆景が後ろからナイフを投げる。


見事に省吾の背中に突き刺さって地面に倒れこむ。


「貴様とは今決着をつけるぞ」


吐きかけるように隆景がそう言う。生まれたての馬のように省吾はプルプルとしながら体を起こす。背中に刺さったナイフを抜くと、そのナイフを隆景に向かって投げた。


ナイフは隆景の頬を通過して隆景は少し怯む。


狂気に満ちた純粋な笑顔でサブマシンガンを隆景に向けて撃ち込む。


しかし弾丸は全て隆景に逸れる。省吾は目を大きく見開いて首を傾ける。


ハラハラと省吾の頭上から人の形をした紙が降り注ぐ。


その紙には頭部には支倉と書かれ、胴体には九字が書かれた紙だった。


省吾が再びサブマシンガンを撃つが、人の紙が隆景に当たる前に盾になっている。紙には貫通せずに、あっちこっちへと弾丸が飛んでいく。


隆景は省吾を見下ろしながら近づいてくる、すると省吾は屈託のない笑顔を浮かべてパンッ!と手を叩いた。


すると人紙は風に吹き飛ばされてしまい、隆景を守る盾が無くなった。


再び笑顔を浮かべながら省吾はサブマシンガンを向ける、その前に隆景は省吾に煙幕を投げつけ、近くにあるカバンまで走りこんで省吾のカバンから銃を見つけた。


怯んだ省吾は瞬時に隆景の気配を感じて片手でサブマシンガンを向けて引き金を引こうとするが、省吾は一秒遅かった。


パァンッ!


一個の火薬莢が落ちる音が響く。


先に撃ったのは隆景だった。


ポタリポタリと省吾の眉間から血が溢れ出る。


自分の眉間から出て地面に落ちる血を見て、撃たれた事に気付いた省吾はニヤリと不敵に笑ってバタリと地面に倒れこんだ。


なんだ…?このモヤモヤとした感じは…


隆景は念の為にサブマシンガンを省吾のカバンに詰めて、持ち去った。


―――――――――――――


「これで…全部!」


佐助は全ての札を処分した。


するとさっきまで居なかった人々が現れた。


幻覚も消えて、ヤツの術か何かから逃れられたのか…。


佐助は安堵して、そのまま座り込む。


しばらくすると肩で息をしながら隆景がやってきた。


「アイツはどうした?殺したのか?」


「いや…多分アイツは死んでいない…」


しばらくすると悲鳴が聞こえてきた。省吾の死体を見つけたのだろう。


「とにかくここに居るのはマズイ、さっさと離れるぞ」


そう言って佐助は隆景を連れて、その場を離れた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ