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第三話 幻覚

佐助は学校に向かう為に近道をしていた。


裏路地を通って順調に学校まで向かっている。


この裏路地を通れば、普通に通学路を通って行くより時間が10分も短縮されるのだ。


最後の裏路地を通ると、後は一直線に進むだけだ。


そこまで順調だったのに、最後の裏路地の所にインディアンの様な格好をした大男が立っていた。


「げっ…」


佐助は足を止める。


インディアンは佐助に気付き、あっという様な表情をする。


すると突然インディアンが低く獰猛な獣の様な声を上げながら佐助の首を絞めてきた。


「ぐっ…ごはっ!」


『ミーンミンミンミンミンミン』


今度はセミの声が聞こえる。だが耳からではない、頭に響いている。


複数の鳴き声と羽音が響き、まるで自分の体の中にセミが居る様な気持ち悪るく吐きそうだった。


インディアンは次第にドンドン力を強めていっている。


もう駄目だ、と思った時に誰かが後ろに立った。


「……あー、聞いていいか?そりゃパントマイムか何かか?」


佐助はハッとする。


後ろを振り返ると、佐助の友人である水城史夫が立っていた。


既にインディアンは消えており、セミの鳴き声も聞こえない。


「なぁ。またか?マジで病院行った方がいいんじゃないの?」


「行った結果異常無しって言われたんだよ、デカイ病院でもな。薬出されてるけど効果は全くねぇ、ほら、もうさっさと行くぞ」


そう言って佐助はカバンを拾い上げて最後の裏路地を通った。


佐助は原因不明な幻覚や幻聴が聞こえる。当然、薬物をやった事も無いし、そうなったキッカケも分からない。


色々な病院に回ったが、異常なしと言われたのだ。



学校への道を通っていると、途中で一人の男がヌウっと佐助達の前に現れた。


その男は包帯だらけで髪、耳、左目だけが露出していた。服装は佐助と同じ学生服だ。


「クックックッ……清々しい朝だな、雨宮佐助…そして水城史夫よ」


不気味に笑うその男の名前は支倉。


中学時代からの友達だが、相変わらずこんな性格。


彼はオカルトグッズを収集しているのが趣味だと言う。


「お、オーッス支倉…」


水城は少々、支倉の事が苦手だった。水城だけじゃない、普通の生徒から不良グループから女子からにも気味悪がられて誰も近づこうとしない。むしろ避けられている。


だがそんな事でヘコむ支倉ではない。


「ヤツは俺のこの波動オーラに怯えきっているのだ…」


と言っていた。


そんな支倉は佐助も少々苦手だった、別に嫌いという訳ではないが。何故か苦手だった。


「どうした?ボーッと突っ立って、まさかこの俺に恐怖しているというのか?クックック…そんなに怯える必要は無い、俺とお前達は友――――」


支倉の言葉が当然詰まってそこから先ごにょごにょ言ってて聞こえない。


「…まぁ、そんな事だ」


「どういう事だよ!」


勢い良く史夫がツっこむ。


「なぁ支倉…まさかまた俺達にオカルトグッズの収集をさせるんじゃないだろうな?」


「クックック…流石だな雨宮佐助、その通り…だ今度の休日な」


「えぇ~~!?もう嫌だぜ俺!」


「どうせ休日暇なんだろ?」


支倉にサラッとそう言われると史夫はグゥの音も出なかった。


「クックック…何をするかは昼休みに告げる、それでは学校に向かうとしようッ!フハハハハハハッ!」


高らかに笑いながら学校へと向かう支倉。俺達はその背を追うようにトボトボと学校に向かった。


―――――――――――――




授業の四時間目が始まった。


「確かこの後の昼休みに支倉と会う約束だったな…」


休日暇なのはどう言っても覆せない事実だし、仕方無しに休日オカルト収集に付き合ってやるか、と佐助は決めた。


授業が始まるチャイムが鳴ると同時にガラリと先生が入ってきた。


「ほら早く座れー」


そう言った先生の手には拳銃を持っていた。


佐助はぎょっとした。なにをするつもりだ。


先生は無表情のまま、銃口を生徒の一人に向けた。



乾いた音が響くと、その生徒は頭から鮮血を噴き出しながら地面に倒れた。



生徒達は一切表情を変えずに次々と額から血を噴き出しながら倒れていく。


一人、一人と的確に殺していく、まるで射的の様に黙々と撃っている。


そしてついに先生は自分に向けて銃を向けた。


死ぬ。


そう思った佐助は背筋が凍りついた。。


先生が引き金を引くと、今まで動けなかった佐助は大きく仰け反って弾丸を避けてそのまま後ろに倒れた。


大きな音を鳴らしながら倒れて、周りのみんなの注目を集めてしまった。


撃ち殺された子は生きており、先生も銃を持っていなかった…。


先生は呑気な声で佐助に声をかけた。


「大丈夫か雨宮?顔色悪いが…」


「え、えぇ…すみません」


そう言って雨宮は椅子を起こして、席につく。


また幻覚だ。日に日に幻覚がリアルになっていく気がする。


この原因不明の幻覚や幻聴にいつも佐助は悩まされている。科学の力で治せないというなら、支倉のオカルトでなんとかなるかもと佐助は淡い期待を抱いていた。


――――――――――


放課後。


佐助は支倉からここに行けと言われて地図を渡された。学校から、そう遠い場所ではなかったので徒歩で行く事にした。


史夫は階段から転げ落ちた為、史夫は行けなくなった。支倉は後で来るが、先に現場に行っておく事にした。


辿り着いた場所はなんの変哲もない十字路だった。


ここに何があると言うのだ?佐助は辺りをキョロキョロするが、別に変な所はない。


とりあえず支倉が来るまで、佐助はポストの近くで待つことにした。



――――――――――――――


おかしい。


かれこれ数分も経っている。


支倉も来ないし、それどころか人一人も通らない。


沈みかけそうな太陽も沈まない。


イライラしてきた佐助は学校に戻る事にした。


長い長い道路を歩くと、再び十字路が現れた。しかも先程と同じ光景の十字路だ。


佐助は取りあえず先に進んだ、しかしまた十字路に戻った。


へとへとになった佐助はその場に座り込んだ。


さすがにおかしい。これは一体なんだ?歩けど歩けど学校に到達しない。


しかもどれだけ歩いても人は居ない、太陽も中々沈まない。


これは幻覚だろうか?


そう思って佐助は地面や壁をペタペタ触る、ハッキリとした感触がある。


これは幻覚ではない、そう確信した。


しかしこれは一体どういう事だろうか、とりあえず佐助は歩き疲れて、その場で座り込んで休憩をした。


―――――――――――――――


釘鮫のり子と内刃彩加は帰り道を帰っていた。


他愛も無い話しや、怜奈の服がバリバリに破れていた事や、月庭美智子の漫画が凄かったりの話をしていた。


「それじゃあ私はこれで」


そう言ってのり子は手を振って去ろうとした時、ドンっと誰かにぶつかってしまい後ろによろめく。


「あ、ごめんなさ…あっ!?」


のり子がぶつかった相手は支倉だった。


支倉を見たのり子は顔を赤くして、彩加の後ろにサッと隠れた。


「支倉先輩。お久し振りです」


のり子に代わって頭をぴょこんと下げて彩加は挨拶する。


支倉は二人を見て何かを思い出したかのようにハッとする。


「ムッ…貴様ら…確か中学の時の…」


「はい。内刃彩加です、こっちは釘鮫のり子」


「ど、どうも…」


彩加に体を押されて支倉の前に出されたのり子はオズオズとしながら支倉に挨拶をした。


「フッ…久しいな…あれからもう一年か…あの時は一番楽しかった…邪神『イ・ブロベーヴォ』はまさに強敵で……」


支倉が思い出を長々と後ろから彩加がのり子に耳打ちした。


「ね、明日の休日遊びに誘ってみなよ」


「え、えぇ~~!?む、無理だよぉ!無理無理!」


彩加がクスクスと笑いながら、のり子にそう言うとのり子は顔をトマトみたいに真っ赤っかになって彩加にしがみ付く。


普段ののり子は男らしい所がいつも目立っていたが、今回ばかりは女の子っぽくて可愛いく彩加は感じた。


彩加は意地悪そうにのり子をせかし始める。


「ほらほら。もう会う機会無いかもよ~?」


そう言うと のり子は意を決したかの様に長々と語る支倉の前に立つ。


「は、支倉先輩!あ、明日の休日一緒にどこか行きませんかッ!?」


もうどうにもなれといった感じで大きな声で支倉に向かってそう言った。


支倉は表情を変えずに (包帯で隠れて見えないが)ジッとのり子を見た。


「うむ、構わんが」


「え」


支倉はそうサラッと言う。


のり子は驚きのあまり卒倒しそうだった。というかむしろ踊りたくなる気分だった。


のり子は嬉しさのあまり小刻みに刻むステップをしていた、ステップを止めようとしたが本能には逆らえなかく、我慢できずに踊り出す。




小刻みに刻んでいたステップから大きなステップに変わった。


キレがあり無駄の無いステップだ。まるであのマイケル・ジャクソンが蘇ったのかと錯覚するほどだった。


何故かのり子の周りがキラキラと美しい光が見える。これは喜びの踊りだ、彩加は確信した。


『のり子が喜んでいる』



ハッとして我に帰るのり子。


目の前には呆然と突っ立っている支倉が居た。ま、マズイ!


いきなり踊られて呆気を取られて支倉はポカーンとしている、慌ててのり子は弁解しようとした。


「す、すみません!あ、あの!あまりにも嬉しすぎてダンスの霊が憑依して…!」


訳の分からない言い訳だった。


すると支倉がのり子の前にずいっと立った。


動揺するのり子は後ずさるが、支倉がガッとのり子の肩を掴んでのり子の後退を止めた。


な、何をする気なんだろう…


のり子は変な期待をした…ジッと支倉はのり子の瞳を見つめて口を開く。


「釘鮫のり子。なんともないか?」


「へ?」


「吐き気は?」


「しませんけど…?」


そう答えるとフゥと一息ついて支倉はのり子から離れる。


「そうか、それなら良かった…。ところで雨宮佐助を見なかったか?」


「え?あぁ、そう言えばさっき……」


――――――――――――――


辿り着かない。


何時間も、何時間もかけて歩いても出口が見えない。


佐助は諦めかけていた。俺はこのまま抜けだせずに死ぬのか。


そんな事をフと思い、へなへなと地面に崩れ落ちる。


『雨宮佐助…聞こえるか…』


その時、頭の中から直接声が聞こえた。誰の声かはすぐに分かった。


「支倉!?ど、どこだ!?どこに居る!?」


辺りを見回すが相変わらず人一人も居ない。


『落ち着け、雨宮佐助…そこは幻想の世界だ。現実世界の住人であるお前ならそこから出れる!』


またどこからともなく支倉の声が聞こえる。


『いいか、雨宮佐助…そこは『迷いの道』、視覚と聴覚を集中させろ』


そう言われても佐助の目と耳は幻覚と幻聴の…


すると、何かが聞こえてきた。


『助けてくれ…』『もう解放してくれ…』


誰かの声が聞こえる…すると、目の前に先程まで見えなかった白い人影が大量に現れた。今まで気付かなかった。


「これは…」


『その道で迷った人の数々だな…』


さらに佐助は目を凝らす。すると、赤い影がリプレイしている様に右の道に走りこんでいる。


佐助は赤い影について行くと、赤い影がまた別の道に走りこんでいる。佐助はこの赤い影を信じる事に赤い影について行った。


しばらくすると、光の道が現れ、佐助はそこに入っていった…。



――――――――


光の道を抜けると大勢の人が行き来していた。


すると後ろから隆景が古ぼけた本を持ちながら佐助に近づいてくる。


「雨宮佐助、待たせたな」


「支倉テメェ……」


「そう睨むな、犠牲者が増えずに済んだじゃないか…それにしてもヤツは何を考えている…?こんな札を…やはりヤツはお前を抹殺する為に…?」


「未神?誰だそりゃ」


「ここではなんだ、そこで話そう」


隆景は喫茶店を指差した。

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