第一話 空想
私の名前は雨宮怜奈。汐華中学校のニ年生、とても元気で明るいと自称している
「やっほー怜奈ぁ!」
この子は釘鮫のり子、幼稚園からの幼馴染でとても活発で元気な子、政治家の釘鮫聡近の娘らしい。
「あぁ怜奈さん。おはようございます」
この子は内波彩加。才色兼備で学校一の美少女、もうなにをやらせても完璧の完全完璧人間、非の打ち所が無い、彩加は凄い大手会社の娘さん
「うひゃひゃひゃひゃ!殺すゥゥ!コ・ロ・スゥ~~~!!!殺してやるゥゥゥ!ぶち殺すゥゥゥゥ!!!内臓をエグリとってカレーの具にしてやるぜクソがァァ~~!ヒャヒャヒャヒャッ!」
この人はちょっと不良が入った四条城子先輩!援助交際なんて普通にやってヤンキーグループにいつも混じっている!でも凄い美人!だけど性格がクソ以下のクソ!例えるなら一流イタリア料理店で出されるパスタ料理に馬のクソと鼻くそと手垢と耳垢を混ぜてソースにしてパスタにブチまけた感じ!本当に惜しい事をしている!
「あれ?城田先輩、どうしたんですか?その鼻」
「ヒロシのヤローに折られたんだよクソがぁあああ~~~!!!!見たら分かるだろォがボケェええ~~~~!!!!」
「あら、怜奈さん、来ていたんだ」
四条先輩はさっきまで女とは思えない化け物の様な表情から、私を見るとすぐにいつもの美人な四条先輩に戻った。だけど性格はクソだ、別にこの人と私は友達って訳じゃない!
「あなたのお兄さんに手紙渡してくれた?」
にっこりと私に言う。このクソったれアバ公は私のお兄ちゃんに『一目ぼれ』だか『あきたこまち』だが知らないが恋をしているという。しかももう付き合った気でいやがる。こんなのとお兄ちゃんと付き合ったら胃にあるもの全部ブチ撒いてしまいそうだ。
このボケが書いた手紙もメアドくれだのなんだの書かれていた、当然兄は見せずに破ってゴミ箱に捨てた。だが、ウンと頷いておいた、本当の事を言うと何をするか分からない。
「フ~~ンそう?あ、あと怜奈さん、アンタ、お兄さんにベッタリ過ぎない?兄妹で……気持ち悪いわよ?この前も一緒に遊園地行ってたでしょ?お兄さん迷惑しているよ?きっとねぇぇ?」
感謝の一言も言わないし、しかもなんでそんな事知ってるんだこの馬鹿は。本当にお前は兄のなんなんだ。
「あまりベッタリし過ぎない方がいいわよ」
そう言って颯爽と四条先輩は去ろうとした、私の怒りは完全に限界突破していた。
「待ちな、この自分売りが」
そう言って私はカバンの中からオートマチックの拳銃を四条先輩に向けて構える、近くにいた、のり子ちゃんと彩加ちゃんは私が何を持っているのか理解するのに数秒もかからなかった。
「ちょっ…怜奈!『それ』って…!」
彩加ちゃんは顔を青ざめさせながら拳銃を指差す。しかし肝心の四条先輩の顔色は全く変わらない、平然とそして凍てつくような視線をこちらに向ける。
「何?それ?よ~くリアルに出来てるね」
どうやら本物だとは思っていないようだ、だが残念ながらこれは本物、私は特別に得られる『銃所有許可』のライセンスを持っているのだ、もちろん使っても良い。
「ま、本物だとしてもアンタにそれを撃てるハズが――――」
四条先輩の言葉はそこで途切れる。耳を貫く発砲音が部屋中に響いて弾丸が四条先輩の額に風穴を空いた。鮮血を噴出しながら床に倒れる、そして私は倒れた所を拳銃に入っている弾丸を全て使い切るまで撃ち続けた。四条先輩は全身血の色に染まった。
「私には撃てる…それに、お前みたいなクズを殺しても罪悪感なんざ全く感じないがな……逃げるよ、のり子ちゃん、彩加ちゃん…サツが来る」
私は拳銃を懐にしまうと、颯爽とその場を去り東京のネオン街へと消えた………
私の名前は雨宮怜奈、一流の殺し屋。裏社会では『死の弾丸』と呼ばれている。得意とする武器は数多い。私はこの学校を支配する校長を裏で糸を引くロシア系マフィアのボスを暗殺する為に私はこの学校に来たのだ…。
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「…な、怜奈。怜奈…学校遅れるぞ、俺もう学校行くから」
兄が目の前に居た、カバンと荷物を持つと兄はさっさと出て行った。私もさっさとカバンに荷物を詰めて家を出た。
私は空想癖が少し強い。だからさっきちょっとだけ空想をしてしまった、だけど空想は私にとっては生きがいだ、まぁ社会人になる頃には治すと決意している。
当然、私は殺し屋なんかじゃない、ごく普通の女子中学生だ。本当に何の変哲も無い女の子で、本当に地味な感じだ。
「オーッス怜奈ー」
「あぁ、オーッス」
釘鮫のり子。政治家の娘だという事は間違いないが、変に怪しい噂がよく立っている、地図に描かれていない有人島の所有者だとか、どこかに自衛隊の海底基地を独自の判断で造ったりとか…色々と危ない噂があるが、当の のり子は気にしていないようだ。私もあまり政治とか興味無いし聞かない。
「二人共。おはようございます」
「よォー彩加ァー」
内刃彩加。彼女も大手会社の娘だというのは本当。才色兼備で学校一美人という事も何やらしても凄い子だという事も本当だが、その会社はブラックで有名な会社だ。しかも最近では彼女の父親である社長が賄賂をしたという噂が立っている。
だけど私は何も聞かない。他の誰かから『雨宮さんは二人と仲が良いんだから聞いてみて』と言われても聞かない。二人も何も言わない。何も聞かない、何も見ない、変な事に首を突っ込まない。それが最善。
「あ、怜奈さん」
四条城子…兄と同じ高校に通っている高校一年生、兄の後輩だ。
この人はあまり好きではない、援助交際しているとかよく聞くし、相当な貞操概念が無いグループと良く居るし茶髪だし。
「アンタさ…怜奈さん、さ。この前…遊園地に行ってたわよね」
「だから…なんですか…」
「ちょっと…ひっつき過ぎじゃあない?兄妹なのにさ…」
どうしてコイツはそんな事を知っているんだ。まさか付けて来てたのか…!?
「あ、そうだ。あの手紙渡してくれた?」
兄宛の手紙の事だろう。
捨ててはいないが、兄には見せていない。何が書いてあるのか分かったもんじゃない。
とりあえず怜奈はウンと頷いておいた。
城子は暫し黙ると「ありがとう」と言ってその場を去った。
「四条先輩ってよく分かんないよね?同じ中学だったけど、中学の時あんまり目だってなかったですし」
彩加が言う。
「そう言えばそうだったね……ま、そんな事より早く行こうぜ怜奈ー」
のり子が怜奈を呼ぶと、怜奈はハッとして二人の元に走り寄る。