第拾伍話 冥獣四天王篇 第六部 天将楼の八賢者
丁度その頃、冥獣四天王の一人、闇の吸血鬼・朱雀将軍が敗れてしまい、幻魔城城主・玉梓は朱雀将軍の魂を回収し、闇の大魔獣復活の儀式を執り行なわれようとしていたのである。
『遂に、光の八犬士が揃ってしまった様じゃな・・・。』
『あの暗黒の魔術師が、八犬士の一人だったとは・・・迂闊でございました。』
『それにしても、冥獣四天王の一人、闇の吸血鬼・朱雀将軍が倒されてしまった今、あの闇の大魔獣を復活させる儀式をする時が来たようじゃ。』
『玉梓様、まさかあの闇の大魔獣を甦らせようと・・・。』
『その通りじゃ。闇の大魔獣を復活させるには、冥獣四天王の魂が必要なのじゃ。今此処に、朱雀将軍の魂がある・・・。この魂を、あの邪神像に宿し、復活の時期を待つ・・・。』
すると玉梓は、朱雀将軍の魂を邪神像に宿しながら呪文を唱えていった。
『深き眠りし、闇の帝王・怪魔将牙神よ。今此処に、冥獣四天王の魂を捧げ、再び闇の世界より復活を遂げよ。オン・バサラ・ターク・シャナウ・ボダナン・アーク・センマンダ・ソワカ!』
すると、朱雀将軍の魂が邪神像に吸収され、邪神像の目が赤く妖しい光を放っていった。
『おお、これぞまさしく、闇の帝王・怪魔将牙神の気配・・・。』
『玉梓様、怪魔将牙神の復活も、そう遠くはありませんな。』
『ほほほ・・・。それはさておき、次なる四天王を呼ぶとするかのぅ。出でよっ、闇の破壊王・玄武将軍。』
玉梓が闇の魔法陣から、冥獣四天王の一人である闇の破壊王・玄武将軍を呼び出していった。
『お呼びでございますか、玉梓様・・・。』
『闇の破壊王・玄武将軍よ、亡き闇の吸血鬼・朱雀将軍の仇を取り、光の八犬士を始末せよっ。』
『任せておけ、我は無敵の破壊王。光の八犬士など、赤子の手を捻る様なものだ。』
『何と頼もしい事を・・・、さすがは玄武将軍。早速奴等の息の根を止めて来るのだ。』
『万事承知・・・。』
そう言って、玄武将軍は闇の魔法陣を潜り、姿を消していったのである。
『玉梓様、あの者に任せて宜しいのですか。』
『幻斎坊、あれでよいのじゃ。もし、光の八犬士にやられたとしても、また魂を回収すれば済む事じゃ。』
『はっ、しかし玉梓様・・・。』
『何か不満な事でもあるのか・・・。』
『いえ、別に何も・・・。』
『後は時期を待つのみじゃ・・・。』
『御意・・・。』
その頃、闇の吸血鬼・朱雀将軍を倒した導節達は、更なる力を求めて聖地・蓬莱国へ向かうべく、雷帝龍王に仕える神官・九尾乃狐と共に時空の鏡に辿り着いたのである。
「これが、時空の鏡・・・。」
「この鏡を潜れば、蓬莱国へ行けるのか。」
「なんや、ちょっと緊張してきたわ。」
「そうですね。しかし、この先にはいったいどんな世界が待っているのか・・・。」
「果たして、我々を待ち受けるのは、正か邪か・・・。」
「とにかく、行ってみようぜ。」
「導節様、早速この鏡を通らない事には・・・。いつ奴等が襲撃して来るか・・・。」
「そうだな・・・。九尾乃狐よ、案内してくれ・・・。神の聖地・蓬莱国へ・・・。」
『分かりました。では、蓬莱国へ通ずる時空の鏡前に立って下さい。』
九尾乃狐は、導節達を時空の鏡の前に立たせ、呪文を唱え始めた。
『時空の鏡よ、我が名に於いて命令を下す。光の八犬士の者達を蓬莱国へ導き給え・・・。』
すると、時空の鏡がまばゆい光を放ち、一瞬にして導節達を蓬莱国へ移動していくのであった。
「・・・ん、此処はいったい何処なんだ。」
『光の八犬士よ、此処が聖地・蓬莱国です。』
「此処が、蓬莱国なのか・・・。」
「人間界とは全く違う世界だな。」
「うわ〜、なんや綺麗なところやなぁ。」
「九尾乃狐よ、何処に行けば本当の八大童子の力を手に入れる事が出来るのだ。」
すると九尾乃狐は、
『この蓬莱国には、八人の賢者が存在すると云います。光の八犬士よ、これより八人の賢者が住むと云う、天将楼に向かうといいでしょう。』
「もしかして、天将楼の・・・八賢者の事なのか。」
「知っているのか。」
「ええ、天将楼の八賢者と言えば、あらゆる物事に精通している大賢者の事で、勿論闇の大魔獣の事も存じているかと・・・。」
「それじゃ、八大童子の事も知っていると言うのか。」
「ええ、この事は天将楼の八賢者以外は、誰も知られていないのです。」
「とにかく行ってみようぜ、天将楼とやらへ・・・。」
「ああ、私も天将楼の八賢者に逢ってみようと思っていたところだ。」
早速導節達は、九尾乃狐の案内で天将楼に向かっていった。
「此処が、八賢者が住むと言う天将楼か。」
「それにしても、何だか物々しいところですね。」
「この中に、全てを司る八賢者がいるんだな。」
「なんや、めっちゃ緊張してきたで。」
「いったい、どんな姿をしているのか・・・。」
『では、参りましょう。八賢者の待つ、《謁見の間》へ・・・。』
しばらくして、導節達は天将楼の中に入り、謁見の間の扉を潜ると、そこには八人の賢者が鎮座しており、導節達が来る事を予言していたと言うのだ。
『よくぞ此処まで来たな、選ばれし光の八犬士達よ・・・。』
「貴方が、天将楼の八賢者・・・。」
『いかにも、我等は天将楼の八賢者。光の八犬士よ、お主達が真の八大童子の力をどうしても手に入れたいと申すのか・・・。』
「お願いです、どうすれば真の八大童子の力を手に入れる事が出来るのでしょうか。」
すると、八賢者の一人がこう答えたのだ。
『今のお主達の力では、真の八大童子の力を手に入れる事は出来ない・・・。』
「何ですって・・・。」
「どう言う事やねんっ。」
『今のお主達では、闇の大魔獣・怪魔将牙神を倒せぬ・・・。』
「怪魔将牙神・・・。」
「そいつはいったい、何者なんですか。」
『怪魔将牙神は、今から三百年前に滅びた伝説の大魔獣。その大魔獣が、再び復活を遂げようとしている。』
『その大魔獣を封じたのは、伝説の戦士・天空八将神。』
『天空八将神とは、天空界を司る大天空聖者・元始天尊様を守護する護衛兵の事・・・。』
『大天空聖者・元始天尊様は、天空八将神に命じて怪魔将牙神を封じていった。』
『ところが、何者かが闇の大魔獣・怪魔将牙神を復活させようとしている者がいる・・・。』
「まさかっ、悪霊・玉梓が・・・。」
『恐らく・・・、悪霊・玉梓が何らかの形で怪魔将牙神を復活させようと企んでいるに違いない・・・。』
「・・・いったい俺達はどうすればいいんだ。」
「そや、わい等が敵う相手やないで。」
「そんな弱気になってどうするんだよ。」
『だが、必ずしも策が無いとも言えぬ・・・。』
「どう言う事ですか、八賢者よ・・・。」
『お主達の心の奥に眠る、光の心がまだ目覚めておらぬからだ。』
「光の・・・心。」
『その光の心が目覚めぬ限り、闇の大魔獣は倒せぬぞ。』
「では、どうすれば・・・。」
『方法はただ一つ、この世界に存在する、三つの試練に挑まなければならない。』
「その三つの試練とは・・・。」
『第一の試練は、攻撃技だけの試練。第二の試練は、法術だけの試練。第三の試練は、必殺技だけの試練。』
『この三つの試練を全て制覇した時、初めて真の八大童子の力を手にする事が出来よう。』
「要するに、その三つの試練を制覇しちまえばいいんだな。」
「なんや、だったらさっさとやってしまおうやなかいか。」
『光の八犬士よ、そう簡単に三つの試練は甘くないぞ。』
『左様、それぞれの試練には屈強の番人が控えておる。一筋縄ではいかぬ者達ばかりじゃからのぅ・・・。』
「それでも構わない、我々を三つの試練に案内してくれっ。」
『・・・よかろう。ではっ、お主達を三つの試練へ案内致そう。』
すると八賢者は、印を結んで術を唱え、導節達を三つの試練に転送していったのである。
『天空を守護せし大天空聖者・元始天尊様、この者達に三つの試練へと導いて下さりませ。天空秘術・時空転送の術。』
すると、導節達は魔法陣の中へ吸い込まれる様に一瞬にして転送されていくのであった。
『あの者達は、果たして無事戻って来られるだろうか。』
『心配する事は無い、あの者達は必ず戻って来る・・・。』
『その通り、あの連中からは強い霊気を感じる・・・。』
『やはり、そなたも感じるか・・・。』
『ああ、必ずあの八人の犬士は帰って来る。』
『ではっ、八犬士のお手並み拝見と参ろうかのぅ。』
しばらくして、導節達は三つの試練の一つである、第一の試練の洞窟の前に辿り着いたのである。
「遂に来たな・・・。」
「これが、第一の試練の洞窟か・・・。」
「この中に、いったいどんな試練が待ち受けているのか・・・。」
「はよ、中に入ろうやないの。」
「そうですね。導節様、行きましょう・・・。」
「そうだな、気を引き締めて行こう。」
洞窟の中に入っていった導節達は、恐る恐る洞窟の奥に進んで行くと、なんとそこには大きな身体をした、いかにも強そうな巨体の男が、導節達を待ち構えていたのである。
『待っていたぞ、光の八犬士達よ・・・。』
「貴方はもしや・・・、第一の試練の番人なのでは・・・。」
『いかにも、我は第一の試練の番人・剛力大仙である。』
「なんか、強そうな番人だな。」
「俺達、あんな奴に勝てるのかな・・・。」
「でも、やっぱり勝てないかも・・・。」
『お主達は、天将楼の八賢者から話しは聞いていると思うが、此処で行う試練は、全て攻撃技しか使う事を許されない場所だ。勿論、法力や必殺技は使用出来ないからそのつもりで・・・。』
「分かっている。強力大仙よ、早速我々を鍛えてくれ。」
『承知した、だが我は一切手加減せぬ。心して掛かるがよかろうぞ。』
遂に始まった剛力大仙の試練を受ける導節達。
だが、何度挑んでも剛力大仙の猛攻には、導節達も手も足も出なかった。
『光の八犬士よ、お前達の力はその程度か・・・。』
「まだ、こんなもので終わる俺達じゃないっ。」
「せやっ、わい等が本気になれば、あんさんなんか一発で倒したるわいっ。」
『そうだ、その根性があれば、怪魔将牙神をも倒せる筈だ。さぁ、もう一度掛かって来いっ。』
あれから、どの位の時間が経過したのだろうか。
導節達の力が徐々に増幅していき、遂に剛力大仙を追い詰めていったのである。
『とうとう、此処まで強くなったな・・・。だが、これで終わりでは無いぞ。更なる技を受けてみるがよかろうぞ。』
すると剛力大仙は、全身全霊を込めて導節達に攻撃技を放っていくのだった。
『破ぁ〜〜〜っ、必殺・龍狼烈火斬!』
しかし、導節達は剛力大仙の必殺技を跳ね返し、逆に剛力大仙を撃破していくのであった。
「大丈夫ですか。」
『・・・だ、大丈夫だ。それにしても、お主達はやはり強いのう。』
「そんな事あらへん。」「でもそのお陰で、我々を鍛えてくれたのですから・・・。」
「これで俺達は、闇の大魔獣討伐に一歩近付いたんだな。」
「だが、我々はまだ完全に強くなった訳ではない。残りあと二つの試練を制覇しない限り、奴等に勝てる確証は無いに等しい・・・。」
『その通りだ・・・。光の八犬士よ、決して今日学んだ事を決して忘れるではないぞ。』
「はいっ。我々八犬士、剛力大仙殿の教えを胸に秘め、日々精進致す所存にございます。」
『よくぞ申された、それでこそ教え甲斐があると言うものだ。』
「ではっ、これで完全に剛力大仙殿の試練は・・・。」
『第一の試練は、合格じゃ。』
「やったぜ、この調子で第二、第三の試練を制覇しようぜ。」
「そうだな、あと二つ制覇すれば、我等は闇の一族である悪霊・玉梓や、他の冥獣四天王、更には怪魔将牙神を倒す事が出来るんだ。」
『では、光の八犬士よ。お主達に鳳凰の証を授ける。こいつを持って次の試練へと進むがいい。』
「ありがとう、剛力大仙殿。」
導節達は、剛力大仙から鳳凰の証を手に入れ、次なる第二の試練へと向かっていった。
果たして、導節達に待ち受けます試練とはいったい・・・。