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第壱話 悪霊・玉梓(たまずさ)、復活

時は今を去る事600年以上も昔、戦国時代中期に起こった怪奇な事件を追う光の玉に導かれた八犬士の活躍の物語である。

その内の一人、犬山導節いぬやまどうせつは山奥深くの岩場で修験道の修行を行っていた。

若干26歳にして全ての修験術を修得し、その後全国各地を行脚しながら日々精進していたのである。

そんなある日の事、導節がいつもの様に旅をしていると、突然無数の妖怪が導節の廻りを取り囲み、いきなり導節に襲い掛かって来たのである。

「おのれ、化け物め・・・。」

導節は得意の修験術を施し、妖怪達を一斉にやっつけていくのだった。

「ふぅ、毎回毎回こう妖怪が現れては、埒が空かないな。」

暫くして、導節は近くの古寺で野宿をしていると、導節の枕元に金色に輝く仏像が現れ、導節に話し掛けていったのである。

『導節よ、我が名は雷帝龍王らいていりゅうおう。天界を司る天帝なり。』

「雷帝龍王・・・。」

『導節よ、我はかつて悪の化身である暗黒の魔術師と名乗る魔者を封じたのだが、何者かに依って暗黒の魔術師が復活してしまった。』

「いったい何者なのですか、暗黒の魔術師とは・・・。」

『暗黒の魔術師とは、悪しき魔力を持った恐ろしい妖怪。だが、その正体は謎に包まれたままだ。導節よ、何としてでも暗黒の魔術師を捜し出し、再び奴を封じてくれないか。』

「しかし、どうやって暗黒の魔術師を・・・。」

すると、雷帝龍王は導節に一つの宝玉を手渡したのであった。

「この宝玉は・・・。」

『これは〔八大童子の宝玉〕と言って、大昔に役 行者えんのぎょうじゃと言う修験者が、龍の珠から作り上げたとされる伝説の宝玉だ。』

導節が宝玉を受けとると、いきなり宝玉が光を放ち、《忠》の文字が浮かび上がってきたのである。

「こ、これは・・・。」

『どうやら、お主は八犬士の一人に選ばれた様だな。』

「私が、八犬士の一人・・・。」

『そうだ、その宝玉がお主を選んだのだ。そして、お主はその宝玉を持って、残りの同志を捜さなければならないのだ。』

「同じ宝玉を持つ仲間を捜す・・・。」

『よいか、これは天より与えられし宿命だ。一刻も早く、同じ宝玉を持つ仲間を捜し出し、暗黒の魔術師の野望を討ち砕いてくれぬか。』

「・・・承知しました、この犬山導節命に代えても、必ず私と同じ宝玉を持つ同志を捜して参ります。」

『そうか、よくぞ承知してくれた。それでは、お主に巻物授ける。受け取ってくれ。』

そう言って、雷帝龍王は導節に、〔天地滅殺破〕の巻物を手渡した。

「この巻物は・・・。」

『導節よ、もし万が一危機に曝された時になったら、この巻物を使うがよかろう。』

「解りました、雷帝龍王様。」

翌朝、導節は雷帝龍王から《忠》の玉と、天地滅殺破の巻物を携え、再び旅を続けたのである。


古寺を出発してから三日目の事、導節が旅を続けていると、前方に白い霧が立ち込め始め、すかさず導節は錫丈を構えていった。

「・・・何だか恐ろしい妖気を感じるな。」

と、その時だ。白い霧の中から真っ赤な鎧を身に纏った死霊の軍団が現れ、導節は錫丈を構えながら修験術を唱えていった。

「オンバサラ・ナウマク・サマンダ・ボダナン・インドラ・ソワカ!」

導節の放った修験術が死霊の軍団を撃破していったのである。

「くっ、次から次へと出て来やがって・・・。」

だが、幾ら死霊の軍団を倒しても再び復活し、導節は一旦その場から離れ、屋根の上に高く飛び移った後、再び修験術を唱えて行くのだった。

「オンバサラ・ナウマク・サマンダ・ボダナン・インドラ・ソワカ!」

何とかその場を凌いだ導節だが、かなりの体力を消耗してしまい、ばったりと倒れ込んでしまうのであった。


数日後、気を失っていた導節は、七日間眠ったまま目が覚めず、翌日にはやっと目が覚めたのである。

「・・・ん、此処はいったい何処なんだ。」

「あっ、気が付きましたね。」

「あなたはいったい・・・。」

「私は、この宿屋の主人で、かすみと申します。」

「そうですか、でも私はいったいどうして此処に・・・。」

「貴方様が近くの地蔵堂の前で倒れていたところを、私の息子が此処まで運んで来たのです。」

と、そこへまだ幼い少年が大量の薪を背負って帰って来たのである。

「ただいまぁ〜。」

「お帰り、賢太。」

「息子さんですか。」

「ええ、一人息子の賢太です。まだ七歳ですけど、家の手伝いをしてくれているので助かっています。」

「そうでしたか・・・。」

「おじちゃん、もう大丈夫なの?」

「ああ、君のお陰で助かったよ。」

「ところで、おじちゃんは何処から来たの?」

「ず〜っと遠いところから来たんだよ。」

「ふ〜ん、じゃおじちゃんはいろんなところを旅しているんだ。」

「そうだよ。」

「いいなぁ、おいらも大きくなったら旅をしてみたいなぁ。」

「これ賢太・・・。」

「いいんですよ、男の子はでっかい夢を持つ事はいい事なんだよ。」

「うん。」

「本当にこの子は・・・。」

「まあ、いいじゃないですか。」

「ところで、名前を聞いていませんでしたが・・・。」

「申し遅れましたが、私の名は犬山導節と申す旅の修験者でございます。」

「導節様とおっしゃいますの。」

「ええ・・・。」

「導節様はどうしてこの様なところへ参ったのですか。」

すると導節は、今までに起こった事を全て話していった。

「そうだったのですか。でも、最近この近くで何だか怪しい出来事が頻繁に起きているんです。」

「その、怪しい出来事とはいったい・・・。」

霞は、導節にこれまでに起こった出来事を語り始めていったのである。

「そうだったのですか、それでその妖怪はいったい何処に現れたのです。」

「この近くに養源寺と言うお寺があり、その養源寺の隣にある〔無限回廊〕と呼ばれる、まるで迷路の様な場所があります。」

「無限回廊・・・。」

「無限回廊は、恐ろしい魔物の巣窟。誰一人近寄る者はいません。」

「解りました、明日にでも無限回廊を探って見ましょう。もしかしたら、全ての謎が解けるのかも知れません。」


翌朝、導節は養源寺近くの無限回廊に向かっていった。

そこで導節が目にした物は、まるであの世とこの世を繋ぐ地獄の入口の様な洞窟が導節の度肝を抜いたのだった。

「此処か、最近魔物が出没する無限回廊と言うのは・・・。」

導節は早速無限回廊の中へと入っていき、松明たいまつを片手に奥の方へと進んでいったのであった。

「思った以上に恐ろしい場所だな。」

更に奥へ進んで行くと、壁に道標みちしるべが貼られており、【この先、迷宮の間への入口。】と書かれていた看板が目に飛び込んで来たのである。

「迷宮の間・・・か。」

導節は意を決して迷宮の間に足を踏み入れていくと、そこはまさしく迷路の様な場所だった。


「いったいどんな罠が仕掛けられているのか・・・。」

暫くすると、迷路の奥から何やらヒソヒソ声が聞こえて来たのである。

『へっへっへっ・・・、どうやら例の物を手に入れたらしいな。』

『ああ、全ては螳螂鬼とうろうき様のお陰だからな。』

「何っ、螳螂鬼だと・・・。」

導節がその場から離れようとしたその時、不覚にも足を踏み外し、敵の罠に掛かってしまうのであった。

「しまった。」

それに気付いた魔物達が急いで罠に掛かった導節を見つけ、攻撃を仕掛けようとしたが、導節は術を施して罠を解除しつつ、魔物達を退治していくのだった。

「もう少しで螳螂鬼とか言う妖怪に見つかるところだったな。」

しかし、そんな事もつかの間、導節は再び迷路の奥へ進んでいったが、暫くして奥の部屋に辿り着き、大きな岩の扉を見つけたのであった。

「こんなところに、扉があるなんて・・・。」

早速導節は、岩の扉を開けてみると、そこにあったのは無数の墓標が並んでおり、青白い火の玉がゆら〜りと浮遊していたのだった。

「何々だいったい・・・、こんなところに墓標があるなんて。」

導節が墓標を調べてみると、墓標の後ろに何やら文字が刻まれていた。

【悪霊・玉梓たまずさ、此処に眠る。】

「悪霊・玉梓・・・、たしか百年前に封じられた悪霊が、こんなところに封じられていたなんて・・・。」

導節が玉梓の封じられていたお札を見ていると、突然悪霊封じのお札が突風で吹き飛ばされてしまい、玉梓が封じられていた墓が大爆発を起こし、その墓の中から悪霊・玉梓が復活してしまうのであった。

『う〜、わらわを封じた者は何処じゃ。わらわをこの様な場所に閉じ込めた者は何処じゃ。』

その姿は、怨念を満ちており、邪気を漂わせていたのである。

と、そこへ一匹の妖魔が悪霊・玉梓の元へ駆け付けた。

『お目覚めになられましたか、玉梓様。』

『そなたは何者じゃ。』

『申し遅れました、拙僧は闇の僧侶・幻斎坊と申す者にございます。』

『その幻斎坊が、何故わらわの元へ来たのじゃ。』

『はい、最近我等の邪魔をする輩共やからどもが、どうやら現れた様なのでございます。』

『その輩共とは何者じゃ。』

『光の八犬士とか申す輩共にございます。』

『何じゃと・・・、光の八犬士が現れたと申すのか。』

『御意、どうやらその内の一人が、どうやらこの近くにいる様でございます。』

それを聞いた導節は、急いでその場から離れ、一旦退却を講じるのであった。

『棄てておけ、奴一人でわらわを倒すなど不可能じゃ。』

『しかし玉梓様、もし光の八犬士が全員揃ったら、我等闇の一族は滅ぼされてしまいます。』

『その心配は無い、わらわには秘策がある。』

『玉梓様、その秘策とはいったい・・・。』

『まず手始めに、妖魔・螳螂鬼を呼び寄せ、奴の息の根を止めてやるのじゃ。』

すると玉梓は、妖魔・螳螂鬼を呼び寄せ、導節の後を追わせ、息の根を止める様命じた。

『妖魔・螳螂鬼よ、分かっておろうな。』

『御意、必ずや光の八犬士の息の根を止めて御覧に入れましょうぞ。』


一方、無限回廊から脱出した導節は、玉梓復活を期に、光の玉を持つ同志を捜す旅を決意するのであった。

「悪霊・玉梓が復活した今、一日も早く残りの同志を捜さなければ・・・。」

遂に復活を遂げた悪霊・玉梓。果たして、導節は無事残りの同志を見つける事が出来るのか・・・。


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