岸本 雅史の場合。
僕は嬉々として、この日を迎えた。
バレンタインデー。それは、女の子が好きな男にチョコレートをあげるイベントだ。
この日、中学時代ずっと好きだった女の子からチョコレートを貰えるかもしれないという情報が入った。もちろん、友達伝いにだったけど、
いつもは瑠花と登校するけれど、今日だけは一人で出かけた。
下駄箱確認! この手段は使わなかったか!
机の下! これもまだ手が早すぎるか!
放課後! ……あれれ?
僕は笑った。
結局、噂程度だった。全く信じていた僕は何だったのだろうか。いい加減ばからしくなってきた僕は学校を出て、公園に目を向けた。
チョコレートを渡すのなら絶交のスポットである公園。そこに、二人の男女が立っていた。
一人は僕の知る人物――――兄の雅紀だった。
その雅紀に女性が抱き付く。その姿を確認すると、僕の好きな女の子だった。
噂は『岸本にチョコレート渡すんだってよ』だけ。つまり兄貴も岸本だ。
僕は全身から力が抜けるのを感じた。
これはキツイ……。
心が完全に折れそうになった。
「雅史、これ。バレンタインチョコ」
そういって渡してくれたのは幼馴染の瑠花だ。
瑠花はチョコレートと言いながらもハンカチを渡してきた。何とも心優しい幼馴染だ。
若干感動した僕は、チョコレートとハンカチを両方受け取った。
「雅史、いくらあんたがチョコレートもらえなかったとしても、あたしは絶対にあげるんだからね!」
「……うん、ありがとう」
その時から気づいていた。
僕が好きになる女の子は全員兄貴にとられる。しかし、すぐに捨てられる。
この連鎖を生み出しているのが瑠花と雅紀だと僕は分かっていた。
以上で番外編バレンタインでした。
基本的に作者の自己満足的な作品でもうしわけありません><
よろしければ、本編もどうぞ。