坂本 優香の場合
今時の女子中学生ってこういう事するんだろうか?
チョコレートを作る同級生達。皆の話では誰々にあげるだの、なんだので話は盛り上がっている。
あたしは別にあげる相手もいなければ、貰う相手もいない。いわゆる友チョコもない。
そんなもの貰ってどうするのって感じで、興味はない。むしろ、友チョコってもらって食べて『これならあたしの方が美味しく作れたわ』ってどうせ影でバカにしている友達ゴッコでしかない。
あたしは、そんな友達ゴッコなんてしたくない。
けれど、友達ゴッコはしたくないけど、続けなくては学校という名の檻の中じゃ生きられない。
だけど、バレンタイン当日。
「好きや! 付き合ってくれへんか!?」
ウケ狙いでもしてるんだろうかと思った。
後日、話を聞いたら彼は大阪から転校してきた人だった。だから、何だ。あたしには関係ないし、友達にもなりたくない。
逆チョコをしてくる男は多かった。
だが、全てを振り払った。友チョコならまだしも、男の作ったチョコレートなんて何が入ってるのか分からなくて怖かった。
全てを断り続け行くと、あたしは友達が好きだった子に、市販のチョコレートを渡されて――――告白された。
「坂本さんの事が好きです」
ありふれた告白。
あたしは、どうすることもできなかった。陰ながら、それを見ている友達の前では、ただ簡単に断ることもできなかった。
だから、あたしは言った。
「あたしは東京の高校に行くので、気持ちには応えられません」
「え!?」
「ごめんなさい……」
後日、あたしはハブられた。
それは当然だと思えた。元々仲が良かったわけじゃないし、それにもう卒業で、こんなところとはオサラバだった。
でも、あたしの中では不安しかなかった。
この十五年間、あたしは親友とよべる者がいなかった。高校生活でもこの友達ゴッコをしてしまいそうで、とてもとても不安で夜も眠れなかった。
――――あたしは友達チョコレートも碌に貰えない女の子。