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波乱



 夕日も沈み切った人気のない路地で、悠馬の機嫌は急激に下がっていた。

 不機嫌な彼の目の前には、蠢く不気味な陰の姿。

 人は本能で此処は嫌だと感じる場所がある。そこは心霊スポットだとか、陰気な場所。この路地もそうなのだろう。時間帯はずれているが、この路地を抜ければ人の通りが頻繁な通りへの近道のはずが人気が全くない。この影を目視できなくとも、ここまで大きくなれば徒人にも気配は伝わるものだ。

 季節は夏を過ぎ、時折ひやりとした風が吹くこの季節にも拘らず、この場はねっとりとした嫌な風が悠馬の体を包む。

 「相沢の奴、俺をバイトに誘う前に仕事しろよ」

 【アぁ・・・。キモい・・・。しにダイ。アイツ殺ス?】

 悠馬が呟くのと同時に陰はノイズ交じりで言葉を発する。それは女とも男とも取れない声音だった。

 「・・・。なにコイツ、負の感情だけじゃなく人間の生気まで喰ってんじゃねぇか」

 大きく成長した陰は負の感情だけでは飽き足らず生きている人間の生気を喰らう。喰われた人間は廃人となるか、最悪の場合は死ぬ。そして陰は蠢く大きな塊からその姿を変え、より多くの生気を喰らおうと人を襲う。

 蠢く陰はゴキッゴキと音を立てながら姿を変えていく。それを見た悠馬は静かに右手を胸に当て、何もない空間からズルリと白銀の刀を出す。悠馬の持つ祓いの能力。前世から魂を通じて悠馬に宿った力だ。

 悠馬が刀を出すと同時に陰はその姿を完全に変え、漆黒の大蛇となった。頭は蛇だが体のところどころは内臓や骨がみえ、臭気と瘴気をまき散らしている。

 【殺ス、キモイアイツは殺す!】

 「寄せ集めの分際で俺を殺すのか? 笑わせんな」

 悠馬は向かってくる大蛇を高く跳躍することでかわし、刀を振りかざし、大蛇の頭めがけて落ちる。

 しかしそれは大蛇首を落とすまでには至らず、わずかに傷口を作っただけだった。

 「固い。修復能力もあるみたいだし。厄介な魔物だな」

 悠馬は刀を構え直し、忌々し気に呟く。生気を喰らった陰は魔物と呼ばれる。自己修復能力を持ち、攻撃的になる。目の前の大蛇も悠馬のつけた傷が修復され、その巨体を悠馬に向ける。

 前世の記憶でもこの時代でも何度か対峙し、その厄介さが身に染みている悠馬は灯りのついていない居酒屋の看板を踏み台にし、襲い来る大蛇から距離をとる。

 【マジウゲる・・・。アイツ・いい?かねずる】

 大蛇から発せられる言葉に悠馬は苛立ちを感じる。

 「はっ。いつの世も、俺も他人も人間は欲深い生き物だな」

 陰や魔物を生み出すのは人の感情。それが蓄積され、集まった言わば思念体のような存在だ。それから人々を守るのが前世での自分の仕事で、誇りでもあった。

 前世の事がフラッシュバックのように思い出され、悠馬は皮肉だと笑う。消し去りたいものであっても、ふとした瞬間思い出すのは過去の出来事ばかり。

 「だからこいつ等やなんかと関わりたくねぇんだ」





 「おう、青年。そんなものこんな往来で出してたら通報されんのがオチだぜ?」

 「!!」

 声が聞こえた瞬間、風景がモノクロへと変わった。


区切りがいいのでここで。

短しです。戦闘シーンなんてあってないようなものですね

精進します!

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