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始まり

俺はもう一度味わうのか? 

 あの苦しみを、悲しみを・・・・。







 「藤崎悠馬君! 一緒にバイトしませんか?!」

 「断る」

 「そこを何とか!」

 「だが断る。他を当たれ」

 

 頻りに一人の男子生徒をバイトに誘うのは茶髪の髪を肩まで伸ばし、少女らしい大きな瞳を期待の色に染め、方やバイトに勧誘されるのは赤の混じった黒髪に漆黒の瞳を持つ青年。それは楠野森高等学校2年1組。そこでは今年に入ってから毎日繰り返される光景があった。

 「あぁ、今日も平和だ」

 「藤崎と相沢さんの掛け合いも一か月続けば慣れるもんだな」

 クラスでは日常として受け入れられつつあった。

 バイトに勧誘されている方、藤崎悠馬≪ふじさきゆうま≫はそんなクラスメイトの声を聴きながら、顔を顰めた。彼の目の前では同じクラスで自分のしているバイトの良さを語る相沢美咲≪あいざわみさき≫の姿。悠馬の今のところの鬼門だった。

 悠馬には、幼い頃より人には視えないものが見えていた。黒く淀んだソレらは人の集まる場所に蠢いていた。人の陰険な負の感情を餌にしてそれを増長させ、また食らう。悠馬はそれを『陰』と呼んでいた。悠馬にはこれを祓う力があり、たまたま2年に上がった時誰も居ない教室でいい加減目障りになってきた影を祓ったときを相沢に目撃されたのだ。以後自分にも視えて祓うことが出来て、同じ力を持った人間が集まり仕事をしているという。それを一緒にしないかと、2年に上がってから毎日言われ続けている。

 「そろそろ、諦めてくれないか。正直鬱陶しいんだ」

 「・・・『ラウル』。この言葉に憶えはない?」

 「ない。いい加減にしろ。毎回それ聞くけど、なに。・・・・バイトもしないし言葉も知らない。これ以上付きまとうな」

 そう言って悠馬は寝る体制に入る。相沢は渋々と自分の席に帰っていく。これで毎日の二人の掛け合いは終了する。

 悠馬は相沢の気配が離れるとそっと息をつく。

 相沢の言った言葉に懐かしさを感じてしまう自分自身に嫌気がさしてくる。もう、関わりのないことだと思っていても、割り切ったつもりでいても、こみ上げてくるものがあった。

 憶えも何も、相沢の言った言葉は自分の前世とおばれるもので自分の居た国の名前だ。王宮を中心とした街並みも、名君と謳われた王の顔も何もかも憶えている。優しい記憶なはずなのに、嫌悪感すら溢れ出る。あの悲劇の夜、いや、悲劇に見舞われたのは国民と前世の自分だった。



一回載せたものが手違いで短編扱いになっていたのでシリーズ作品としてもう一度投稿します。

初投稿作品です。初心者ゆえ至らぬところがありますが以後よしなに。

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