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サイコパスシンドローム  作者: 木樵蝋梅
K-145RS否定
17/46

C-4

 校舎と隣接して立てられた寮。寮というよりはマンションに近いだろうか。しかし、いままでK-145RSが住んでいた隔離棟の構造とは違う。何処が違うかと言えば、外からは見えないし、隔離するのは敷地をぐるっと覆ったコンクリートの壁だからだ。外観は普通のマンションよりも良いほうだろうか。


「なぁ、アンタがここの設計までしたんだろ?なんでこんなメルヘンチックなんだよ」


「いいじゃないか昼夜君。それとここの他には寮はないし、敷地の外にも出られないよ。嫌いかね?」


「いや、別に住めるんなら何処でもいいんだけど」


「良かった。それで断るのなら私はテントを用意しないといけないところだったよ」


 十六夜昼夜は再び嘆息した。マンションがメルヘンだ、と十六夜昼夜が言ったのには明確な理由がある。外観がどう考えてもお城にしか見えない。下手をすれば悪趣味なホテルと形容されかねない構造になっていた。K-145RSは首を鳴らしながら身体の調子を確かめている。薬物によって感覚が強制的に向上させられ、要は敏感になっていた身体が元に戻っているのかを確認する為だ。K-145RSは視界に十六夜三日月を入れないように、十六夜昼夜に話しかける。


「専属講師、貴様は良くやった。感謝する」


 K-145RSは屈託のない笑みを浮かべて十六夜昼夜に感謝した。何といっても、あの状況」から性行為に移らなかった事がK-145RSにとっては嬉しいと感じられた。”サイコパス”歴は半年の彼女にとってはそのような一般的常識は世間寄りなのだろう。K-145RSとは違って”サイコパス”歴が長い者に関しては分からないが、少なくとも彼女は普通に近しい。


「まったく、恨まれるつもりはなかったのだけれどね」


 十六夜三日月がK-145RSの視線に気付いて呟いた。纏っていた黒衣から棒状の物を取り出して咥える。


「煙草じゃねぇよそれシガレットだよ笑わせんな」


「突っ込んでくれなかったら私はどうしようかと思っていたところだ」


 十六夜三日月はシガレットの箱を黒衣に戻して、同じポケットから小さな鍵を一つ取り出した。投げて十六夜昼夜に寄越すと、シガレットを口内で噛み砕いて音を発する。K-145RSを一瞥して、寮へと足を進めた。


「鍵だよ。部屋は501号室だ。レベルの低いものから一階から詰めていたらこうなってしまったのなのだが。まぁ、そう責めるな。五階はおろか、四階にも人はいないからどれだけはしゃいでも文句は言われまいよ。ギシギシアンアンやってくれても構わないさ」


「しねぇよ変態。そんな風な発言をするから変態と言われるんだ変態。あと髪洗え変態」


「これはアイデンティティだよ昼夜君?」


「ぱっと見吸血鬼にしか見えねぇんだよ変態。恰好も黒ってなんだよ変態。黒は死を連想するから医師はそんな服を着ねぇんだよ変態」


「はっ、死ねぇ……あながち間違ってはいないだろう?だって私は養護教諭というカタチをとってはいるが、医師免許どころか経験すらないよ。知識としては持ち合わせているから養護教諭くらいなんでもないさ」


「………絶対風邪引くなよ異常者」


 K-145RSは戸惑っていた。何といっても会話に介入出来ていないし、出来ない。俗に言う、苦手なタイプとして十六夜三日月を見ていた。寮へと歩いていく三日月についていく。十六夜昼夜は鍵をポケットに入れて、二人の後をついていった。


「あぁ、そうだ昼夜君。コイツに名前をつけないか?そろそろ私も名前を付けたいと思っていたところだ」


 歩みを止めず、十六夜三日月はそう言った。十六夜昼夜は、やはりそうきたかと思う。自分の名前すらも自分でつけて、あげくの果てには養子の名前まで自分で付けたがる人物だ。そう思わない方がおかしいだろう。


「まずは、名字は十六夜だ。この子程十六夜フカンゼンの名前に相応しい人物も少ないだろう?となると名前か……それこそ、昼夜の名前が良かったな。肯定と否定で相応しい」


「被るのはゴメンだよ。気持ち悪い」


 K-145RSは手を一瞬出そうとして止める。仕草に気付く十六夜昼夜はふと思い出す。


「異常者、剥奪された名前、覚えてるか?」


 口だけを動かして、『りさ』と言った。

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