再会と真相
2年の月日が流れた。
あたしは社会人をやってる。
そこそこいい会社で特にかわりなく。
彼と別れてからというもの恋をしようと頑張ったが、彼以上にあたしを落ち着かせる人がいなくて1ヶ月でそれをあきらめた。
あとは勉強と就活にいそしんであたしのキャンパスライフは終了となった。
というのは数年前の話であって。
「白井さん、これお願い」
「はい」
上司に言われて仕事をする。
そんな繰り返しだ。
彼は今、どこにいるのだろう。きっとあたしの知らない世界であたしの知らない人を愛しているのだろう。
あの約束の日から、あたしは空を見るようになった。
空と飛行機を。
多分、あの飛行機には彼がのってたんだろうね。
彼に別れを告げられた部屋は引っ越した。
あの部屋は、彼との思い出がつまっていすぎてツラいから。
「ナミナミナミ!!」
と妙なテンションの友人から連絡が入ったのはつい最近のことであった。
「今度さ、飲み会を決行しまーす! いえーい!!」
「ねぇ、すでに飲んでるでしょう?」
「あ、わかった?」
同僚の桜井さんと食事中にかかってきた電話にあきれながらいう。
「どうせナミ、暇でしょー?」
「暇じゃない」
「メンバーは大学の同期だよーう。サークルのメンバーとか、久しぶりに会おうよー!!」
電話口からも聞こえてしまうほど大きな声で騒ぐ友人。思わず耳から電話を離してしまったあたしは悪くはないと思う。桜井さんが口パクでだいじょうぶ? と確認をしてくれた。あたしは頷いてすみません、と返す。
穏やかな笑みを浮かべた桜井さんに、ありがとうございます、と伝えて再び電話を耳にあてた。
「ってことなんだけど、聞いてた!?」
「あ、うん。聞いてた聞いてた」
「本当!? ならさ飲みしましょうよー!」
聞いてなかったとは言えずにぺちゃくちゃと話す友人に相変わらずだな、と感じながらもうん、と頷く。久しぶりに会うのもいいかもしれない。
「じゃあ詳細はメールするねー! 絶対くるんだよ!? ナミこないと話になんないし!」
なにそれ、と軽く笑って、友人との通話を切る。
「ごめんなさい、お待たせしてしまって」
「いや、かまわないよ」
やっぱり穏やかに笑う桜井さんはスマートにお会計まで済ませてしまっていて、少し戸惑った。
「ねぇ。気が付いているかもしれないけどさ」
桜井さんからの告白はうれしかった。のだけれども、彼を忘れていない自分がいたのも気が付いていた。
無意識のうちに彼と比べていた。
いつか、その感情がなくなる、とは言い切れなかった。
いつか、この感情で傷つけてしまう、と思った。
「ごめんなさい」
断りを入れて、歩き出した。風がやたらと冷たくて、肌に突き刺さるような感覚だった。
「すみません。先にあがらせてもらいます」
今日は定時にあがる。メールでの詳細はあの日からちょうど一週間後の週末になっていった。
桜井さんとは事務的なやり取りにとどめていて、何か言いたそうな表情をしているのに気が付いていながらもそれを無視していた。
「いらっしゃいませ」
しゃれた感じの店の店員さんが満面の笑みをむける。あれこそ、スマイル0円だなぁ……。
少し感心する。
「お一人様ですか?」
相変わらず笑顔を振りまく店員さんにあたしは首を振り言った。
「待ち合わせです。白井で予約してると思うんですけど」
友人はあたしの名前で予約したとメールで言ってきたのだ。だからあたしが来ないと話にならないって発言になったのかな、と少しだけ笑えてしまった。
店員さんはしばし沈黙して、納得したような表情をするとやっぱり0円スマイルをふりまく。
「こちらになります。ごゆっくりどうぞ」
案内されたのは個室であたしは恐る恐る足を踏み入れた。
誰もいないことに違和感を僅かながらにも感じながらも5分が経過した。
誰かの気配がした。
「悪い。おくれた」
そう言ってはいってきたのは紛れもない彼で、あたしの思考はストップした。
この章からテンポが速くなったと意見をいただいたので修正です。