曖昧な関係
布団に入ったはいいが眠れない。
泣いてしまえば眠れるかも知れないがそれは嫌だった。
あたしはふと思い出を思い返す。
彼との出会いは6年前。
晴れとも曇りとも言い難い空の下行われた高校の入学式で出会った。
彼はあたしにはもったいない存在だったと思う。
彼は綺麗なのだ。
見た目も、それから中身も。
あたしとは釣り合わないってわかっていた。
はじめあたしは別世界の住人だと思い込んで、彼との間に厚い壁をつくった。
彼はそんな壁なんて気にすることなく接してきた。
そして気付く。
彼もあたしと同じように壁を作っていたことに。
すごくすごく薄い壁だけどどの人に対しても。
きっとあたしと彼はどこか似ていたから一緒にいて、やっぱりどこかが異なったから踏み込めなかったんだ。
彼とあたしの関係は曖昧だ。
偶然、高校3年間同じクラスで唯一話す男子生徒だった。
そしてまた偶然、学科こそ違うが大学が同じで一緒にいる時間がふえた。
綺麗な彼はどこか人をよせるオーラをもっていて目立ち、すぐさまあたしと彼は噂になった。
彼はあたしと噂になって否定なんてせずに悪戯にあたしに言った。
「どうせなら本当にする?」
大分彼のあたしに対する壁はなくなった。
あたしの壁もだ。
それが始まりだった。
別に好きとか言ったこともなければ好きといわれたこともない。
だから、本当に付き合っていたのかどうかさえあたしには疑わしい。
よく考えてみればあたしは彼のことを何も知らない。
彼が自分の事を話さない秘密主義者だからなのか……。
でも、あたしは彼の生まれた日さえも知らないのだ。
多分、彼もあたしのは知らないだろう。
そんな曖昧な関係なのにあたしは何故漠然と彼が最後の恋人だと思ったかなんて聞かないでほしい。
彼にとってあたしはただの同級生でクラスメートで流れて付き合うようになった女としかうつってなくても、あたしは彼に心底惚れていた…。
認めたくないが、彼という1人の人間が愛おしくてしょうがなかった。
彼に嫌われたくないからわがままなんて言えなかった。
なんてあたしは馬鹿なのだろうか。
もう考えるのはやめにしようと思う。
彼のことは、彼との曖昧な関係は思い出にしようとおもう。
ただ、彼の“お願い”を叶えるその時までは、あたしの中にのこるだろう。