母の日
「あ、そういえば今日は母の日か」
午後の3時ぐらいになって、居間でテレビを見ながら勉強をしていた高校2年生の井野嶽幌は気付いた。
「そういやそうだったね」
幌の向かい側に座っている双子の姉の桜も、今頃気づいたように言う。
「母さんにカーネーションでも贈るか」
「そういや、なんで母の日にはカーネーションなの?」
「もともとはアメリカの習慣からなんだ。日本では、母の日というのは、1931年の時に、婦人会が制定したのが最初とされることが多いね。この時には3月6日、当時の皇后誕生日に設定されていたんだ。それから終戦を迎えて、アメリカと同じように5月第2日曜日を母の日とするようになったんだ。カーネーションを贈る風習は、戦後、アメリカから伝わってきたそうだよ」
「じゃあ、アメリカでどうしてカーネーションを贈るになったの」
桜が聞く。
「昔々、『ジュリア・ウォード・ハウ』という女性運動家がいたんだ。彼女は、1870年に『母の日宣言』というのをしたんだ。でも、この時には、母の日というのは定着することはなかったんだ。でも、彼女の娘アンナが、彼女が死んでから2年後に、彼女の記念会で白いカーネーションをささげたんだ。このことに感動した、会の参加者たちが、翌年1908年5月10日に初めての母の日を祝ったんだ。それから1914年には、国家の記念日として制定され、この時に5月第2日曜日と定められたんだ」
「歴史があるんだ。ということは、今年は98年目っていうことだね」
「そういうことだね。今日ぐらいは、いつもいない母さんにありがとうとでも伝えようか」
幌が答えていると、テレビでも、カーネーションを贈っている人たちの映像が映っていた。