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8 フランソワ有能に政務をこなす

読んでいただきありがとうございます

 タウンハウスに戻り日常が帰って来た。

蜜月は過ぎたがまだまだ新婚の二人は甘い雰囲気を周りにまき散らしていた。

アランは愛の言葉を欠かさなくなって、使用人のいるところでもおかまいなくキスをするようになり、恥ずかしがるフランソワが真っ赤になるのも見慣れた風景になった。


それでも執務は待ってくれないので、力を合わせて行い休んでいた時に滞っていた書類も片付いてきた。

アランは文官を続けつつ伯爵の仕事もこなしていた。仕事に出かける時はなかなか離れようとしないので頬にキスをして送り出すことにしていた。

後ろに私用人が並んでいるので恥ずかしくてしようがないが、妻の務めだと思い頑張っているフランソワだった。

仕事の帰りには流行りのスイーツや花束を買って帰ってきてくれる、甘々な旦那様だった。



 アランを見送ると執務が待っている。領地は結婚式の際に見回りをしてきたのでおおよその訴えは分かっていた。橋が古くなっている所や、砂が浸食して川の形が変わり始めている所、土地が痩せてきている所など対策を考えることは沢山あった。


「メイナード、クリストフ、二人に頼みたいことがあるの。ドーバー橋が古くなっていたの。新しく作り直すにはいくら掛かるか算出をして欲しいのよ。それとカクリ地方の土地が痩せてきているわ。多分同じ物を作り続けているためだと思うのだけど代わりに植えるものを早急に調べて欲しいの。畜産をやっているマサダ地方にはこの前は行けなかったので今度視察に行こうと思うの。クリストフに一緒に行ってもらいたいわ。勿論旦那様も一緒よ」


「分かりました。早急に対策を立てます。仕事モードの主は格好良いですね」

「王都でも結婚のお披露目パーティーも開かないといけないし、忙しすぎるわ」

「パーティーはいつ頃を目安に?」

「三ヶ月後かしら」

「ドレスの手配もいたしましょう。食事とかお茶とか花の手配とかエミリーに手伝うように言っておきます」

「お願いね。頼りになる執事がいると助かるわ」

「ありがたき幸せです」

「上手くいったら報酬は弾むわ」

「やる気が出ますね」

にやりと笑ったクリストフと穏やかなメイナードに全幅の信頼を置いているフランソワだった。





 和やかな夕食が終わり場所をサロンに移し、お茶を飲みながらアランにも領地の状況を話した。

「領地に一緒に行くのはこちらからお願いしたいくらいだ。現場を見るのは大切だからね。僕が文官を辞めて屋敷で執務に専念すればフランソワは社交に力を入れられるんじゃないかな」

「貴方が築いてきた仕事を辞めて貰うのはどうかなと迷っていたの。だけどそう言って貰えるならお願いしてもいいかしら」

「まだまだ下っ端で築いたというほどの仕事が出来ているわけではないから辞めても差し支えがないよ。貴女の手助けの方が大切だ。じゃあ決まりだね、よろしく奥様」

「よろしくね、旦那様」

二人は微笑みあった。



 ドーバー橋は石で作り直す事になった。小さな四角い石を組み合わせてアーチ型にしていくのだ。小さな石なのでそれ程金額はかからない上頑丈なものが出来るのだという。領地にいる本宅の家令が監督してくれ良いものが出来たということだ。


実際に見に行く日が楽しみになった。カクリ地方の痩せた土地は小麦を毎年作っていたらしい。それが土地が悪くなり生育が悪くなったという。

クリストフは痩せた土地でも育つ葡萄の木を植えてはどうかと提言した。

上手く育てば生は勿論ワインになるかもしれない。植物は直ぐに結果が出ないので気長に待つ必要があった。早速大きめの苗木を買って植えてみることにした。


領民が飢えないように村長の所に小麦や芋を届けた。暫くはそれで様子を見ることにした。



 月日はあっという間に流れタウンハウスで結婚披露パーティーの日になった。

出席者への招待状から食事のメニュー、お酒やソフトドリンクやその摘みになる物の選択、一流のお菓子の選び方、花の飾り方まで夫人の力量が試されるのだ。


そこへ呼ぶのはお祖父様の鳴り物入りで国でも一流の楽団だった。


へとへとになったがこれくらいで音を上げるわけにはいかない。新しい伯爵として存在意義を示し認めて貰う必要があるのだから。


朝から磨き上げられたフランソワは既婚者の落ち着きを意識して深紅のボートネックのマーメイドドレスにダイヤを散りばめ、動くたびにキラキラと輝くようにしてもらった。

ダイヤモンドのネックレスとイヤリングに白いロンググローブを着け大人を意識した装いをした。

アランは白の正装に金のモールで伯爵家の家紋を刺繍した衣装で身を包み前髪を後ろに流した。


お祖父様には一段高い所に席を用意して座っていただくことになった。流石の王族オーラで威圧感が半端なかった。

その隣に新郎新婦が並んだ。式の始まりをお祖父様に宣誓していただいた。

孫の特権を使ったのだ。使わないと後が怖い。お祖父様って案外僻んだりするのだ。実際頼りになるので有難いのだけど。


貴族の皆様に伯爵家の立ち位置を理解していたかなくてはいけないので、侮られないように。小娘が伯爵だなんて生意気だと思っておられる方も中にはおられますしね。



パーティーは盛況のうちに終わった。お城から騎士の方も貸していただいた。

不埒な輩が出ると主催者の恥になるので。

やはり挨拶回りは大変で疲れた。王族の端くれでも顔を繋いでおきたい方は多いのだ。

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