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7 フランソワ結婚する

読んでいただきありがとうございます!

 王都を抜け出すと小高い丘があった。途中で馬から降り手を繋いでずんずんと上の方まで登って来た。行き止まりになった先に山百合の群生地があった。

野生なので香りは強くないが広がりが半端なかった。一面のオレンジ色の絨毯だった。


フランソワは息をするのも忘れたように見入ってしまった。

「とても綺麗、こんな素敵な場所に連れて来てくれてありがとう。昔から知っていたの?最高のプレゼントだわ」

「遠乗りの練習に来た時偶然見つけたんだ。まだ十五歳くらいだったかな。勉強に疲れた頭や友人とのあれこれが吹き飛ぶような気がして、随分スッキリしたんだよ。貴女に見てもらえて嬉しい」

「ここで皆でランチにしてもいいかしら」

「勿論、いい景色の中で食べるのはとても美味しいと思うよ」

「貴方のそういうところが好きよ」

「えっ?もう一度言って」

「言わないわ」

真っ赤になったフランソワをアランは蕩けるような目で見つめた。

「僕も貴女が大好きだ」

そう言うと額に初めてのキスを落とした。










※※※




 結婚式の日がやって来た。朝早くからフランソワはメイド達に磨かれまくっていた。

一年前から準備した繊細な総レースの豪華なウエディングドレスに伯爵家に受け継がれるダイヤモンドのティアラ、ネックレス、イヤリング、指輪が美しい花嫁を飾っていた。朝から腕を振るったメイド達は誇らしげに主人を見つめていた。


「とてもお美しいです。女神様のようです」

「両親に見てもらいたかったわ」

「神様のお庭で見ていらっしゃいますよ」


フランソワはお母様もこれを身に着けたのだと思うとそれだけで涙が溢れそうになった。


アランが扉をノックして入って来た。

白い正装に金のモールで刺繍が施してあり、髪を後ろに撫でつけて額が顕になり

彫刻のような美貌を余すことなく晒していた。


「まるで女神の様だ。美しすぎる。結婚できる栄誉を与えてくれてありがとう」

そう言うとフランソワの手を取り指先に口付けた。

「アランも素敵だわ」

「今に貴女を着飾らせる物は私の力で買えるようになってみせるよ」

「楽しみだわ、期待してるわ」


二人で微笑みあった。





 領地の教会で行われた結婚式は前国王陛下が出席されるとあって近隣の貴族がこぞって参加したがったが、警備の関係上親族のみとなった。領民も遠巻きにでも見ようと多勢詰めかけていた。


貴族達は披露宴のパーティーで前陛下のお言葉が聞けることになり、領民はお姿を見ただけで満足することになった。

ミルボ伯爵家の立場を分からせるいい機会だと満足そうなお祖父様だった。


賑やかな宴は夜遅くまで続いた。フランソワは早めに退出して、再び湯船で磨かれることになった。疲れた全身をマッサージされると流石に眠気が襲って来た。

気がつくと薄い寝間着を着させられ、軽食と軽めのワインが用意されていた。

「エミリー水も欲しいわ」

「直ぐにお持ちします」



領地ではこれから3日間お祝いの祭りが開かれる。フランソワ様は領民思いの領主なので慕われていた。領民には領地の数カ所でご馳走が振る舞われお祝い気分が盛り上がる。

美男美女の領主様夫妻の似顔絵は飛ぶように売れていた。




夫婦の寝室でフランソワが軽食を摘みワインを飲みながら待っていると、

扉がノックされた。急いでシャワーを浴びたのだろう髪が乾ききっていないアランがシルクの寝間着を着て入って来た。


初めて見る寝間着姿は色気がだだ漏れになってフランソワはドキッとしてしまった。

「なんて扇情的な夜着なんだ。理性が吹っ飛ぶよ」

「少し軽食を摘まない?お腹すいたでしょう」

「いや貴女の方が美味しそうだ。そっちは後で頂くことにしよう」

そう言うとフランソワを抱きしめて額にキスをした。瞼から頬に唇にとキスがおとされ髪を撫でられ、うっとりしていると口の中に舌が入ってきて懐柔されるように動き回られた。

急な展開に付いていけないフランソワは何とか逃れようとしたが、しっかり抱きしめられて身動きが取れなかった。胸板も思いのほか厚く早々に降参することにした。

「愛してるよ、フランソワ。もう離さないから覚悟してね」

「愛してるわアラン。覚悟はよくて?」

「貴方のためなら地獄にでも落ちるさ」


深い口付けは気持ちが良く意識を飛ばしそうになった。それでいて全身に落とされる口付けは羽のように軽い。体に触れる手も宝物を扱うようにふんわりと大切にされた。胸の飾りを口に含まれると痺れるような快感が全身を貫いた。


初めてのことばかりでフランソワはアランに身を任せるので必死だった。

「気持ちがいい、何処で覚えたの?」

チクっとした胸の痛みで聞いてしまった。

「本で勉強したんだよ、貴女としかこういうことはしたくないからね。上手に出来ているのかな?」

「うん、とっても」

「それは良かった。さあまだこれからだよ。痛くないようにするからね、愛しい人」


今まで理性で我慢していたのがやっと結婚出来、皆が認める初夜なのだ。

アランは我を忘れてフランソワに夢中になった。ベッドの中のフランソワは自分では気がついていないかもしれないが妖艶だった。

気がつけば外は明るくなっていた。気を失ったフランソワを抱き締めてベッドに横になったアランは幸せを噛みしめ目を閉じた。




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