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3 フランソワ婚約をする

読んでいただきありがとうございます

 アランはまさか自分が婚約者候補に選ばれるとは思っていなかった。相手は伯爵を継いだばかりの若い令嬢だ。

しかも妖精姫と呼ばれるくらいの美人で財産はたっぷり持っている。

釣り書が山のように積み上がっているらしい。

その中で何故自分なのか理解できていなかった。望めば高位貴族の次男や三男が選り取り見取りだろう。容姿はそれなりだと思うが貴族には美貌に恵まれている者は多い。自分がそれ程だとは思わなかった。

頭の良さかと思ったがミルボ伯爵も頭の切れる人物らしい。



不安だったがとにかく会ってみることになった。場所は伯爵邸だった。

アランは子爵である父を伴い薔薇の花束と王都で人気の焼き菓子を手土産に顔合わせに臨むことにした。



伯爵邸は煉瓦を基調にした大きな屋敷だった。子爵家の三倍はあろうかという大きさだった。屋敷自体もどっしりしており存在感を放っていた。

出迎えは家令だった。洗練された渋さで流石伯爵家の高級使用人という品格だった。顔はにこやかさが目が笑っていなかった。品定めされているのだろうと思った。

家令に花束と焼き菓子を手渡した。


「ようこそおいでくださいました。お待ちしておりました。ご主人様がお待ちです。どうぞこちらへ」

と上品な応接間に通された。


家令が重厚な扉をノックすると

「どうぞ」

という鈴を転がす様な声が聞こえた。


部屋の中には噂に違わぬ妖精のような女性が立っていた。

アランより三つ下の十七歳で伯爵を継いだ才女だ。

良からぬことを考える親戚を蹴散らしてその場所に立つのは相当な苦労があっただろうに、そんなことは感じさせない余裕さえ感じた。



「おいでいただき感謝しますわ。まずはお座りになってお茶をどうぞ」

メイドがお茶を淹れ菓子を何点か置いて去っていった。

「この度は我が息子を候補に入れていただきありがとうございます。子爵家には利点しかありませんが、そちら様には利があるのでしょうか」


「ありますが今はまだ言えませんの。強いて言うならご子息が身綺麗で子爵家が中立派という事でしょうか。無礼だと思いますがこれくらいで許していただけますか」


「とんでもないことでございます。それだけで充分でございます」

子爵は落ちて来た冷汗をハンカチで拭った。


「スターリング子爵令息様、庭を散歩でもどうかしら」


「喜んでお供します」


アランは庭までエスコートをした。庭園は色とりどりの薔薇が咲き乱れ多くの百合が芳香な香りで辺りを気高く飾っていた。雑多に見えるが計算され尽くした庭園だった。


「見事な花ですね。妖精のような貴女とこの場所にいることが夢のようです。

先ほどもお聞きしましたが何故私なのでしょうか。もっと後ろ盾になりそうな高位貴族の令息が沢山おられますでしょうに」


「後ろ盾は祖父で充分なのですわ。釣り書は沢山来ているのですが、調べると難のある方が多いのです。恋人や愛人がいたり、中には子供までいる者もいました。浪費で借金だらけの家まであります。隨分舐められたものです。領地を健全に運営していかなければいけない私にはそんなことに構っている時間が惜しいのです。貴方は王宮に勤め勤務態度も真面目だと聞きました。女性の影もなかった。だから候補になっていただいたのです」


「このまま王宮勤めで人生を終えるだろうと思っていました。領地経営は大変そうですがやりがいがありそうです。特産は畜産でしたね。選んでいただければ勉強をし直すつもりです」



「そうなれば契約結婚にしていただきたいのですがどうでしょうか?」

「それは何故かお聞きしてもいいでしょうか」


「貴方を疑う訳では無いのですが釣り書の相手の多くの方があまりにも不実だったのです。

念の為だと思ってもらったら有難いですわ。もし貴方に想う相手が出来たら利益があるよう別れる時に手配すると約束します」


「貴女を娶れるなら決してその様なことにはしないと誓います。それに拙いですがこれから精一杯口説かせていただきます」


アランは虚勢を張って立っているこの少女を傍で守りたいと思った。






男は美しかった。自分では意識していない様だがもし貴族から平民になっても

それなりに成功するだろう。自分の美しさに気が付き利用するようになると怖いと思わせるものがあった。どこか危うさを感じていたフランソワは契約結婚を提案したのだ。


王宮で文官をしている時は下級貴族の三男としてしか見られていなかったから、女性も遊びでしか声をかけなかったのだろう。それを上手く躱していたからミルボ伯爵から声がかかったのだ。

これから伯爵家の財力で磨かれ、高位貴族のマナーを身につけるようになればもっと注目されるだろう。


婿としての心構えをしっかりメイナードに叩き込んで貰わなくてはならない。

その為に格下から婿を選んだのだから。自分より格上では躾けることは難しいのだ。



決して侮られるものかとフランソワは気を引き締めた。



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