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被害
真っ先に思い浮かんだのは2人の子供の事だった。彼らを案じて茫然と突っ立っていた俺は、ステーション内の放送で我に返った。
『先ほど発生した地震による施設内設備の破損の報告が多数来ています。研究員の皆さんは破損個所の修理をお願いいたします』
――そうだ、上の様子が知りたいけれど、今はここをどうにかしなきゃな
俺は放送で流れてきた破損個所を頭に入れるとすぐに駆け出した。
「ふう、とりあえずここはオーケーだな」
「そうっすね」
1人の部下と共に水道パイプの修理を終えた。ほかの破損個所にはもうすでに多数の研究員が派遣されているのでとりあえず俺の今の仕事は終わりだ、と思いスマホで上司に連絡を取った後仮眠室に戻った。
そしてすぐさまネットで地震の情報を調べてみた。気象庁のサイトにアクセスする。サイトのトップにすぐ先ほどの地震について書かれている部分を見つけた。
「海溝型地震で、震源地はマリアナ海溝付近……被害は……」
俺はしばらく、自分がどんな文章を読んでいるのか理解できなかった。
なぜなら、地震による被害報告は1件もないとあったからだ。