プロローグ
『これは、私の人生における膨大な記憶の中の、特に重要な部分を記録したメモリーレコーディングデバイス(Memory recording device)である。これを読んでいる者がいたとして、勇気を出してこれを横にある記憶接続媒体と接続し、私の記憶を取り込んだ上で役立ててもらえれば幸いである』
私の父さんの職場で見つけた装置のディスプレイには、そう書いてあった。
私はそれを見て迷わず横にあった記憶接続媒体とやらを手に取り、見たこともないコネクタ形状をしたレセプタクルを見つけ、メモリーレコーディングデバイスから伸びている同じ形状のプラグを差し込んだ。ほかにコネクタがないことを確認したのち、ヘルメットのような形をしたそれを被った。
『生体反応を確認しました。これより記憶の挿入を開始します。許可する場合はエンターを押してください』
それが急に喋り始めた。驚いたが、声に従いディスプレイに表示された『Enter』をタップする。
『許可されました。記憶接続媒体を外さないでください』
という声と同時に、私の意識がグンと薄くなった。眠りに落ちるように、私は目を閉じる。
ひと時の静寂。