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秘密の誓約

 一人の男が崖をよじ登る。荒野の崖をよじ登る。もうすでに三日も登っている。しかし今日で最後だ。ゴールはもう十メートルほどに迫っている。男は思わずニヤリとする。ついに崖の縁に手が乗った。そこからは早い。男は次の瞬間には立っていた。

 男の眼前に一つの建物が現れた。奇妙な建物だ。木を組み合わせたその建物はとても古く、竪穴住居にも似ていた。しかしさらに奇妙なのは外にびっしりと隙間なく貼られているお札であった。それのせいで入口すら見えない。男はそれらしき所に手を突っ込む。ビリリとお札が破れる音。取っ手の感触。男はゆっくりと戸をひいた。中は半径3メートルほどの円形の部屋1つ。かなり狭く感じたが床には地下へと続くと思われる階段があった。男は迷わずに下っていく。

 地下道は一本道。曲がり角すらない。30分ほどあるいただろうか。暗がりの中から男の目の前に扉が現れた。 ここにもお札がびっしりだ。地上と同じく少し強引に扉を開ける。中は暗くて見えない。男は右手をみぞおち当たりまであげる。男が少し力を込めると右手にソフトボールほどの大きさの青白い光の玉が現れる。それを振りかぶらずに軽く投げ込む。明かり一つないその部屋は地上の部屋よりも陰気に感じられる。部屋は形、大きさ、何もかもが地上の部屋とおなじだ。唯一違うのは階段がないことだ。その代わり、部屋の真ん中に棺が置かれている。いや、棺にしては小さい。人間が入るには少なくともこの棺の2倍の大きさが必要だろう。男は注意深く部屋を見回す。しかし棺らしきもの以外に何も見つからない。男は諦めて部屋に足を踏み入れる。近づくと箱の全容が見えてくる。やはりお札がびっしりと貼られている。しかしこれまでとは打って変わって男は慎重に1枚1枚お札を剝がしていく。暫く経って箱の地肌が露出した。丁寧にそれを開ける。箱の中には今度は手の平サイズの箱が入っていた。もはやお決まりとなった、お札びっしり箱だ。先ほどよりも慎重に丁寧にお札を剥がしていく。その様子はまさに映画によく見る爆発物処理だ。

 何分かして箱が開く。どんな貴重なものが入っているかと思えば、中身はただの石だった。しかし男は満足げだ。ニヤリと笑って足早に部屋を出ていく。

 外に出た男は石を砂の上に置いた。そして建物の屋根から枝を取る。男はその枝で石を中心に複雑な魔方陣を描きだした。描き終えると枝を放り投げた。男は両手を前に突き出す。そしてこれまた複雑な呪文を唱えだした。かなり長い呪文の後に、魔方陣の上に黒い雲が発生した。男がもう一言、二言発すると黒い雨が降り出した。雨が豪雨となり、地面にはねた雨粒が黒い霧となって辺りを包む。男は思はず咽た。

「闇のオーラはそんなにも不快かね?」

魔方陣の上に一人の男が立っていた。身長は2メートル程。腕の太さは常人の太ももほどある。胸板は成人男性二人は入りそうなほど厚く、肩幅も広い。

「いえ、滅相もございません。帝王アゼルバンジャイン様。」

男は膝をつき首を垂れる。アゼルバンジャインはニヤリとする。アゼルバンジャインは男に背を向け、空を見上げる。

「余にはまだ宇宙を動かす力があるだろうか。」

質問をしている感じではなかった。アゼルバンジャインは自分の手の平を見つめながら続ける。

「魔力が全身にみなぎっている。封印前より強いかもしれんなあ。」

アゼルバンジャインは両手を高く突き上げる。その指先から太く黒い稲妻が空へ向かって走った。

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