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朝と夕には食卓を囲んで  作者: 駒野沙月


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16/16

寒い夜は鍋を食べよう

最近寒いですね。お鍋の美味しい季節です。

少し早い冬の訪れでも、この二人は通常運転のようですね。


大変お待たせいたしました!!『朝夕』新作です。

ここまで投稿感覚が空いたのは単純にリアルの都合です。本当に申し訳ございませんでした。

今後もこのようにのんびりした投稿頻度になるかとは思いますが、これからもこの二人を書いていきたいと思っていますので今後とも応援よろしくお願いします。

 夕方、食材の買い出しに外へ出る。

 ちょうど同じタイミングで吹き付けた風の冷たさに、思わず震えあがった。


 ほんの一か月前、9月頃まではあんなに暑かったというのに。急に季節が暦に追いついてきたようだ、などと思いながらも一枚羽織りに慌てて部屋へ戻る。

 少し前に出しておいたものの、しばらく使う機会の無かったアウターの出番がようやく来たのは嬉しいが、まさかこんなに慌ただしいとは。

 気を取り直してもう一度外へ出ると、今度は寒さに震えることもなく外出できた。


 外を歩く人々の装いは、もうすっかり秋らしい。

 ただ、スーパーへ向かう途中で、半袖の人を何人か見たのは驚いた。凄い人もいるもんだな……と思ったが、今日の日中は陽が出ていて結構暖かかったから、人によってはそれくらいでもちょうど良かったのかもしれないと思い直す。


 スーパーの品揃えも様変わりしていた。冬野菜が少しお安くなり、コンロやIHに直接置いて作れる鍋やうどんなどが肉のコーナーの隣に大量に鎮座している。

 外の気候に合わせてのことだろうが、冬が近づいているのだなと感じさせられるラインナップだった。


 今夜は鍋にしようか。

 時期的にはまだ早いかと思っていたが、体感気温的にはちょうどいいだろう。


 具材は……にんじんは家にあるからいいとして、白菜に大根、ねぎ、あとは水菜にえのき辺りだろうか。肉は、今日は鶏ミンチが安いから鶏団子でも作ろうか。

 などと考えつつ、必要な食材を揃えていく。いつもより帰りの荷物が多くなりそうだが、まあそれはどうとでもなるだろう。


 鍋の食材以外にも色々と買い揃えてから、スーパーを出る。

 来た時よりも若干暗くなっていた外は、もう冬であるかのように寒かった。


 ◇◇◇


 帰宅して少々休んでから、朝陽の帰ってくる時間目掛けて調理を始めることにする。

 まず、昆布を少し切って土鍋に入れておく。この昆布は最近実家から送られてきたものだ。


 次に、鶏団子。鶏ミンチに卵と片栗粉、刻んだねぎの青い方と醤油やごま油などを混ぜてこねていく。もう少し寒い時期ならここに生姜を入れたくなるが、今回はやめておこう。生姜はもっと寒くなってからだ。

 それをスプーンを使って適当な大きさに丸める。丸めたものは先に用意しておいた小鍋で茹でていく。火が通れば、鶏団子は完成だ。

 これが他の肉ならあとで土鍋で煮ることを考えて完全に火が通る前に出してしまうが、鶏肉は色々と怖い。多少固くなるのは仕方ないとして、この時点でしっかり火を通しておくことにする。


 あとは野菜を適当に。ねぎは白い方を大きめにななめ切り、にんじんと大根はいちょう切りがいいか。白菜や水菜、えのきは適当な長さにざくざくと切っておく。

 長さや厚さはまちまちだが、野菜はちゃんと火が通る大きさにさえなっていればいいのである。どうせ他人に食べさせるわけではないのだから。


 それがちょうど終わったところで、玄関で鍵の開く音がした。


「ただいま!」

「おかえり」


 朝陽だ。なんともタイミングのいいことである。

 今の時間は19時半の少し前といったところか。我が家の夕飯時には少し遅いが、帰る時間は事前に聞いていたから別に問題ない。


「ねえ急に寒くなりすぎじゃない!?まだ10月だよ!?」

「俺に言われてもな……」


 まだ玄関にいるのであろうにも関わらず耳に届く、謎にテンションの高いその声に呆れる。


 確か、今日の朝陽の服装は薄手のニットにシンプルな黒のパンツだったはずだ。

 当然アウターは羽織って行ったが、今日の朝陽は日が昇りきって暖かい昼前に家を出たのもあって、今の気温からしてみれば薄着だろう。だからそう言いたくなる気持ちは分からないでもない。


「ま、もう10月も後半だからなあ。涼しくなるのはむしろ自然だろ」

「あそっか、もうそんなに経つか。時の流れは早いねえ」


 記憶通りの服装の朝陽は、リビングに入ってくるなりしみじみ呟いた。

 そういえば朝陽は去年も全く同じようなことを言っていたような気もするが、まあそこについてはツッコまないことにしよう。自分も全くの同意見だし。


「今日の晩ご飯なに?」

「鍋」

「うわ最高。体冷えてるから助かる」

「ならさっさと着替えてきて手伝え」


 朝陽も帰ってきたので、鍋づくりの続きだ。


 まずは昆布を入れておいた土鍋に大根とにんじんを入れる。この時に、さっき鶏団子を煮たお湯も鶏の出汁目当てで一緒に入れておく。

 大根とにんじんにある程度火が通ってきたら、葉物野菜やきのこ、鶏団子も入れていく。


 しばらく経ってぐつぐつしてきたところで、鶏団子を一つ取り出して割ってみる。……うん、火はちゃんと通っているから大丈夫そうだ。

 割った団子の片方は自分の口に入れ、もう片方はいつの間にか後ろから覗き込んでいた朝陽の口へ。「あっつ!!」なんて声が聞こえた気がするが、一旦気にしないこととする。

 充分具材も煮えたようだから、あとは醤油なんかで適当に味を整えれば鶏団子鍋の完成だ。


 火を止めて、鍋は既に用意されていた鍋敷きの上へ。テーブルには、これも朝陽が用意してくれていたのであろう箸とおたま、汁物用に使っている椀、あとは主食の米が揃っている。


 席につき、朝陽と順番に鍋の中身を椀によそってから二人で手を合わせた。


「いただきます」

「いただきます」


 まずは鍋のスープから。鶏と昆布の旨味がよくしみ出ているスープは、味はもちろんのこと温かさが身体に染み渡っていくのが嬉しい。

 思わずはあーっとついてしまった息が、二人で揃ってしまったくらいだ。


「あったまる~。ほんと、鍋はいいよね」

「作るの楽だから、こっちとしても正直助かるんだよな」

「毎晩鍋でもいいくらい」

「それはそれでバリエーションに困るからやめてくれ」


 大根、にんじん、ねぎに白菜に水菜にえのき。そして、手製の鶏団子。具材たちもよく煮込まれていて、食材それぞれの旨味が出ていて美味かった。

 そういえば、鶏団子には蓮根を入れたら食感も楽しく個人的にはその方が好みなのだが、今回はスーパーに見当たらなかったのでやめたのだった。また今度作ることにしよう。


「鶏団子も美味しいけどさ、鍋の野菜って美味しいよね。くたくたのねぎとか最高じゃない?」

「それは分かる」

「ところで祐樹さん、もう食べ終わりそうだけど今回〆は?」

「今日はありません」


 我が家の鍋の〆は麺でやることが多いが(もちろん鍋の種類と気分次第では米にすることもある)、今日は買い忘れた。これはスーパーに無かったのではなく、素直に買い忘れたのである。始めから米を出していたのもそのせいだ。

 それを聞いた朝陽は少し残念そうにしながらも、「そっか、ならしょーがない」と頷いていた。


 だから、これもまた今度だ。

 冬はまだまだこれからなのだから。


「また今度な」

「はいはい、また今度ね」


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